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婚活サイトの「年収1000万円」本物は4分の1だけ

プレジデントオンライン / 2019年9月12日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wavebreakmedia

※本稿は、山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

■男性の5人に1人、女性の10人に1人は「生涯独身」

結婚しない人が増えてきている、とはよく耳にしますが、実際にはどの程度増えているのでしょうか。

図表1は、総務省が行う国勢調査に基づいて作られた50歳時未婚率の推移を示しています。つい最近までは、この数字を「生涯未婚率」と呼んでいました。厳密に言えば、生涯未婚であるかどうかは、生涯を終えるまではわからないのですが、50歳以降に初めて結婚する人はかなり少ないため、50歳時点の未婚率を生涯未婚率とみなしたのです。

戦後間もない1950年の50歳時未婚率はわずか1.5%ですから、当時はほとんどすべての人が結婚していました。男性の50歳時未婚率は、長年低いままでしたが、1990年頃、時代が平成に入るあたりから急速に上がり始め、2010年には20%あまりに達しました。女性の50歳時未婚率は上下しつつも、2000年頃までは緩やかに上昇し、2010年には10%ほどに達しています。

現代では、男性の5人に1人、女性の10人に1人は50歳時点で未婚ですから、たしかに非婚化が進んでいると言っていいでしょう。ちなみに50歳時未婚率で男女に大きな差があるのは、男性のほうが再婚する人が多いためです。厚生労働省の「第15回(2015年)出生動向基本調査」によると、「再婚男性と初婚女性」の組み合わせは、「再婚女性と初婚男性」の組み合わせの1.7倍にも上ります。

男性は、自分の相手には結婚歴がなく、自分よりも若い女性を好む傾向がある一方、女性は相手の結婚歴や年齢をそれほど気にしないといった理由がこの背景として考えられます。

■男性の8割、女性の9割が「人柄」重視

未婚率の上昇と並んで話題になるのは、初めて結婚する年齢(初婚年齢)の上昇、つまりは「晩婚化」についてです。図表2は、厚生労働省が作成した「人口動態統計」より、平均初婚年齢の推移を示しています。1950年には、女性の平均初婚年齢が23.0歳で、男性は、25.9歳でした。そこから次第に上昇し、2009年には、女性28.6歳、男性30.4歳へと、男女とも4歳以上、大幅に晩婚化が進んだことがわかります。

なぜ非婚化・晩婚化が進んできたのでしょうか。この問いに答えるには、現代の日本社会において、人々は結婚に何を求めているのか、結婚にはどんなメリット・デメリットがあるのかを考えてみることが助けになります。

もちろん、ほとんどの人は、結婚することの最大の理由を愛情だと考えているでしょう。前出の「第15回出生動向基本調査」によると、結婚相手の条件として重視するものに、男性の8割、女性の9割が「人柄」を挙げています。

■6割の女性が夫に家事・育児能力を求めている

一方で、愛情だけでは結婚できない、あるいは結婚生活が長続きしないと考えている人も少なくないでしょう。結婚相手には「家事・育児の能力」を重視すると答えた男性は5割近くいる一方、相手の「経済力」を重視すると答えた女性は4割近くに上ります。

興味深いことに、結婚相手の「家事・育児の能力」を重視すると答えた女性は6割近くに上り、男性にも家事・育児の能力が求められていることがわかります。さらに、自分の仕事を理解してくれることを重視すると答えた女性は5割近くで、結婚後も働き続けることを希望する女性が多いことを示すような結果になっています。

■「マッチングサイト」で垣間見える人々の本音

ここまでは公的統計に基づいて、人々は結婚に何を求めているのか探ってきました。ここからは少し趣を変えて、普段はなかなか明らかにならない、恋愛と結婚における人々の本音を垣間見ていきましょう。もちろん、人はなかなか本音を見せません。そこで社会科学の研究者たちが考えたやり方は、インターネット上で出会いの場を提供する「マッチングサイト」に注目するというものです。

かつては「援助交際」の温床とみなされていたため、インターネットを通じた出会いには偏見がありました。そのため、マッチングサイトを通じてパートナーと出会ったことをおおっぴらに語る人は多くなかったかもしれませんが、最近はまじめな恋愛関係や、結婚に至るような付き合いを求める人のためのサイトも増えてきているようです。

私が以前住んでいたアメリカとカナダでは、日本と比べてかなり早い時期から、まじめな出会いの場としてマッチングサイトが活用されていた印象があります。少なくとも、マッチングサイトの利用に抵抗を感じているような人はほとんど見かけませんでした。

私の知人でもマッチングサイトを使っている人はたくさんいましたし、マッチングサイトを通じて結婚に至った同業の大学の先生も知っています。スタンフォード大学のポール・オイヤー教授は、自身のマッチングサイト利用経験をもとに『オンラインデートで学ぶ経済学』(2016年、NTT出版)という本を書いたほどです。

周囲の若い人たちから聞く限り、日本でもマッチングサイトの利用に対する見方が肯定的になってきているように感じます。マッチングサイトは、日本においても結婚成立に重要な役割を果たすようになってきているのかもしれません。

■自己申告のマッチングサイトはウソだらけ?

アメリカなどに見られるマッチングサイトでは、利用者は年齢、人種、学歴、結婚歴、収入、身長、体重などを登録し、自分の写真もアップロードします。

ただし、利用者のプロフィールはすべて自己申告で、真偽は定かではありません。ということは、みんな自分のことをよく見せようと身長や年齢はサバを読み、写真も「奇跡の一枚」を使うのではといった疑問がわいてきます。

研究によると、会ってすぐにバレるような極端な嘘をつくことはないようです。よくある小さな嘘は、体重を2~3キロ過少申告するとか、身長を1~2センチ高くするとか、年齢を1~2歳サバ読みするというものです。

では、見ただけではすぐにわからないこと、たとえば「年収」はどうでしょうか。マッチングサイト「OKキューピッド」の運営ブログ(2010年7月6日)によると、年収10万ドル(約1000万円)を自称する人の数は、実際の人数の4倍にも上るそうです。

外見に関する嘘は、会えばわかります。年収に関する嘘も、身につけているものや行きつけのレストランなどから大体のところは見抜けるかもしれません。そもそも、相手が多少サバを読んでいることを理解してマッチングサイトを使っているのであれば、利用者は必ずしも嘘に振りまわされているというわけではないのでしょう。

■「美人とイケメン」の経済学

好ましいことであるかは別として、恋愛のパートナー選びにおいては「容姿」も大きな要因となります。データ分析では、容姿も数値化しています。ある研究では、100人の学生に写真を一つ一つ見せ、最低1点、最高10点で採点してもらい、その平均点を利用者の容姿の点数として分析に利用します。

なかなか残酷なやり方に見えますが、写真以外の利用者情報は明かされません。容姿を採点する学生は、利用者とは別の町に住んでいるので、利用者のプライバシー保護については配慮されています。

ちょっと話は脱線しますが、容姿の良し悪しが実社会でどのようなインパクトを持つのかという研究は、経済学分野ではしばしば行われています。ここで述べたものと同様の方法で容姿を点数化し、美男美女ほど収入が高くなる傾向を明らかにした研究がその始まりです。

この話をさらに推し進めて、美容整形によって美男美女になれば、高収入を得られるか検証した分析まであります。それによると、美容整形をして高収入を得るというのはどうやらかなり難しいようです。高収入を得られるほどの美男美女というのはほんの一握りなのですが、美容整形によってその域まで達するのは難しいというのが理由だそうです。

■すべてがデータ化されるマッチングサイト

マッチングサイトでは、利用者のサイト上での行動がすべてデータ化されています。具体的には、誰が誰のプロフィールを見たのか、プロフィールを見たあとに「いいね!」やメッセージを送ったのか、メッセージを送った場合には、実際にデートに至ったと思われるかどうかなどを知ることができます。

どんなプロフィールを見た上で、誰に「いいね!」やメッセージを送ったのかがわかれば、そのデータを分析することで、この利用者はどういう人が好みで、自分の将来のパートナーに何を望んでいるのかを知ることができるというわけです。

■データが明らかにしたモテ要素

山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(光文社新書)

データ分析の結果、利用者は以下のような好みを持っていることがわかりました。

やはり、容姿は重要な要素で、見た目のいい人ほど多くの人に好まれます。背の高い男性は女性に好まれる一方、背の高い女性は男性からは不人気なようです。また、太っている男性は女性からやや好まれているのに対して、太った女性は男性から好まれていないようです。

収入は、男女とも高いほうが人気を集めますが、女性のほうが相手の収入を重視する傾向が強いようです。学歴については、男女とも自分と近い人を好むのが一般的であるものの、女性は男性により学歴を求め、男性は学歴のある女性を避けるような傾向も見られます。

■恋人に対する好みは人によってさまざま

万人受けする、いわゆるモテるタイプがわかった一方で、恋人に対する好みは人によって大きく異なる部分があることも明らかになりました。蓼食う虫も好き好きという言葉がありますが、モテるタイプでなかったとしても、広い世の中には自分を好んでくれる相手がいるのだという、なんだか希望のわく話です。

こうした結果を見て、あなたはどんな感想を持ちましたか? 意外な結果だったでしょうか? おそらく、ほとんどの人にとって「当たり前」だと感じるような結果だと思います。でも、「当たり前」をデータできちんと確認しておくことはとても重要です。「当たり前」だと思っていたことがデータで確認できない、つまり、実は「当たり前」ではなかったというのは、社会科学の研究者ならば何度も体験しています。事実関係を正しく踏まえるのが、私たちの社会の正しい理解への第一歩につながるのです。

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山口 慎太郎(やまぐち・しんたろう)
東京大学経済学部・政策評価研究教育センター准教授
1999年慶應義塾大学商学部卒業。2001年同大学大学院商学研究科修士課程修了。2006年アメリカ・ウィスコンシン大学経済学博士(Ph.D)取得。カナダ・マクマスター大学助教授、准教授を経て、2017年より現職。専門は、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」と、労働市場を分析する「労働経済学」。

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(東京大学経済学部・政策評価研究教育センター准教授 山口 慎太郎)

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