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「地銀の雄」が横浜から千葉に移り変わった事情

プレジデントオンライン / 2019年9月18日 15時15分

記者会見する横浜銀行の大矢恭好頭取(左)と千葉銀行の佐久間英利頭取=2019年7月10日、東京都中央区 - 写真=時事通信フォト

全国104行のうち約半数が赤字になるなど、地方銀行の経営が行き詰まりつつある。活路を開くため、地銀1位の横浜銀行は地銀3位千葉銀行との業務提携を決めた。これから地銀はどうなるのか。JPモルガンのアナリスト・西原里江氏は「総資産だけで判断すべきではない。今後は千葉銀を軸とした『メガ地銀』が誕生する可能性が高い」という——。

■地銀再編のキープレーヤーはどこか

地方銀行の雄、千葉銀行と横浜銀行が今年7月、業務提携することで合意した。法人・個人の幅広い領域において営業面で協力し、事業承継など中小企業向けの金融支援サービス、個人向けの相続関連サービスなどを提供するとしている。両行は事業エリアの重なりが少ないため、大きなシナジー効果が得られる可能性がある。

総資産で地銀1位の横浜銀行と3位の千葉銀行の業務提携とあって、横浜銀行の名前が先に語られることが多いが、私は今後のカギを握るのは千葉銀行だと見ている。政府も後押しする「地銀再編」の動きの中心にいるのが千葉銀行だからだ。

この提携の背景にあるのは、全国の地銀が置かれている苦しい経営環境だ。地銀各社は長期化する日銀の超低金利政策を、前提として受け入れざるを得なくなってきている。

当初、2年間で2%のインフレを目指すとして導入された異次元緩和だったが、6年たってもその目標は達成されていない。この状態がさらに続くと、地銀セクターを中心に金融のシステムが危うくなるという危機感があり、政府は独占禁止法の特例法を定めた。地域での貸し出しシェアが高まる場合でも経営統合を認める方針で、地銀の再編を後押しする姿勢を強めている。

■全国104行の地銀のうち約半数が赤字

こうしたマクロの情勢に加えて、異業種の参入も地銀の経営環境を難しくしている。楽天銀行や住信SBIネット銀行などは、業界でのシェアこそまだ3%程度にとどまっているが、預金、貸付金残高などは、年間20~30%の急激な勢いで伸びている。

さらにLINEやペイペイ、メルカリなどの異業種が、キャッシュレス決済を皮切りに金融分野に進出しはじめた。楽天も楽天ペイを持っており、クレジットカードではすでに取扱高1位の楽天カードもある。金融商品に関しては銀行並みのフルラインナップを取りそろえてきているのだ。

こうした決済サービスは基本的に個人がターゲットだが、個人の先には中小企業があり、地銀の顧客と完全に重なっている。異業種の参入はメガバンクにとっても小さな話ではないが、地銀にとってはまさに存在意義を問われるような、大きな影響のある話といえよう。

こうした超低金利と異業種参入の影響もあって、地銀の経営は悪化し続けており、いまや全国104行の地銀のうち、約半数が実質赤字という状況に追い詰められている。その中で生まれた大きな動きが、今回の千葉銀行と横浜銀行の業務提携だ。

■頭一つ抜ける千葉銀行、その強さの理由

千葉銀行と横浜銀行は、長らく地銀でトップを争ってきたライバル関係にあった。総資産でみれば、横浜銀行が地銀トップで千葉銀行は3位。だが、千葉銀行は自己資本が厚く、経費率も低い堅実経営でやってきている。

そして2015年に第四銀行、中国銀行などとスタートさせた「TSUBASAアライアンス」を主導しており、今や9行からなる全国的な共同体に拡大させてきた。提携の内容も事業承継やアセットマネジメントにまで範囲を広げるなど関係を深めており、将来的な統合も視野に入っているとみられる。

加えて、武蔵野銀行とも「千葉・武蔵野アライアンス」を組んでおり、今秋には共同店舗を都内に出店し、都心部での融資獲得を目指すとしている。今や千葉銀行は地銀再編のど真ん中にいる地銀なのだ。

一方の横浜銀行も、2016年に東日本銀行と経営統合し、「コンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)」を設立している。しかし、東日本銀行は、昨年7月には融資に不適切な行為があったとして金融庁から業務改善命令を受けている。同FGは設立以降2期連続で減益となっており、今の地銀再編の流れの中でメインプレーヤーになれるような状況ではない。

そう考えれば、千葉銀行と横浜銀行の業務提携の主体となるのはどちらか、おのずと分かるというものだろう。

■背後に迫るりそな銀行、地銀再編を急げ

一方で、地銀再編にあたっては他にも重要なプレーヤーがいる。りそな銀行だ。

メガバンクに次ぐ規模を誇るりそな銀行は、昨年、スルガ銀行との資本提携の話が持ち上がった。結果的にこれは実現はしなかったものの、同行は2017年に関西の地銀3行(近畿大阪銀行、関西アーバン銀行、みなと銀行)を経営統合し、「関西みらいフィナンシャルグループ」を発足させるなど、地銀再編には意欲的だ。

もし、静岡エリアをカバーするスルガ銀行とりそな銀行の合併が成立していたら、横浜銀行としては首都圏と静岡の間に挟まれ、苦しい立場に置かれていた可能性がある。千葉銀行との業務提携に踏み切ったのは、そのあたりの危機感も影響しているのではないか。

いずれにせよ、トップの横浜銀行ですらうかうかしていられないほど、地銀を取り巻く状況は厳しい。SBIグループも地域創生のプラットフォームを地銀に提供するなど、連携の素地を整えている。こちらも将来的には地銀を統合させたグループを作り、総資産でトップ10を目指すとしている。

各地銀は、自社だけで生き残るのは厳しい時代に突入している。いずれはどこかのグループに参入せずにはいられないだろう。その中でどの地銀も羨望のまなざしを向けているのが、TSUBASAアライアンスだ。

仮にTSUBASAアライアンスとコンコルディアFGが統合することになれば、総資産85兆円を超える、メガバンクに次ぐスーパーリージョナルバンクが誕生することになる。

(JPモルガン シニアアナリスト 西原 里江 構成=衣谷 康)

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