お金持ちは消費税増税直前に何を考えているか

プレジデントオンライン / 2019年9月26日 6時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/kokouu)

いよいよ消費税増税が目前に。職場でもプライベートでも話題にあがることが多いのではないでしょうか。ところが富裕層たちは、まったく興味が無い様子なのだそう。なぜ消費税増税を話題にもしないのでしょうか。彼らが増税直前に考えていることとは――?

■増税の話題が出ることが皆無

2019年10月から消費税が8%から10%に増税されます。

そのため、増税前に高額な耐久消費財などを買っておこうと考えている人もいるかもしれません。

これについて富裕層はどう考えているのでしょうか。

私は8月~9月と起業家・経営者が集まる会食やホームパーティーに何度かお邪魔しましたが、どの会でも増税の話題が出ることはありませんでした。まったく興味が無いふうで、増税前に何か対策を講じている人も皆無といった感じでした。

それはこれまでも同じく、2014年4月の消費税増税時でも、対策の話はまったく聞こえてきませんでした。

■消費税増税よりもっと重要なことがある

それはなぜなのかを考えてみると、ビジネスをしていれば支払う消費税が増える一方、受け取る消費税も増えるなど消費税がかかるのは当たり前で、増税だからといって対策することにはほとんど意味がない、という無意識の割り切りがあるように推測します。

彼らは最終消費者という立場だけでなく、事業者の立場も持っているため、そのあたりの事情は理解しているのだと思います。

それよりも、より税負担が大きい所得税(事業税や住民税も含む)対策の方が重要であり、そちらのほうに意識が向いている人がほとんどです(中小企業の実効税率はおよそ30%)。

もちろん無関心というわけではなく、税制改正には非常に敏感です。

たとえばかつて、再生可能エネルギーの推進のため、いわゆる「グリーン投資減税」が創設されたとき、目端の利く中小企業や自営業者がこぞって太陽光発電システムに投資しました。これによって消費税還付を受けたり、即時償却によって所得税や住民税の節税をしていたのです。

その後も、生産性向上設備投資促進税制、中小企業投資促進税制へと引き継がれ、彼らは同様にこれら制度を活用して節税をしていますが、多くの人はこういう制度すら知らないと思います。

対策をしてもたかが知れている消費税増税よりも、日々の節税の方が重要であり、そのための情報収集には常にアンテナが立っているということでしょう。

■増税の影響はほとんど出ないと考えている

もうひとつの理由は、売り手の心理を知っているため、影響はほとんどないとわかっている点も挙げられると思います。

たとえば典型的だったのが、前述した前回の増税時。

税率が5%から8%にアップする3カ月前あたりから、多くの人が家電など高額商品の駆け込み消費に走りました。そして当然ながら増税後は買い控えます。

これを、商品を作って売る企業の側から想像してみましょう。

駆け込み消費で需要が増えると、売れ行きが堅調ですから、売り手はあえて値段を安くする必要はありません。定価でも売れるなら、そのほうがいい。だから商品の価格は高止まりします。

しかし増税後の反動で、消費者の財布のひもが硬くなると、売れ行きが悪くなります。

では企業は「増税後の反動で売上が下がりました」などという言い訳が、会社の会議の場でできるでしょうか。

当然、売上を上げていかなければならない。なんとか売上を確保する対策を講じる必要がある。

そこで多くの企業が考えつくのは、「値引き」という販促策です。

■増税後のほうがおトク価格に

現実にそういう流れになりました。

商品の価格データを収集している価格ドットコムによれば、増税直前の3月末と増税後の4月20日における家電10品目92機種の平均価格は、4月20日の方が安かったそうです。

こう見ると、「消費税が上がる前に買わなきゃ!」と焦って購入した人は、むしろガッカリしたのではないでしょうか。

もちろん駆け込み購入がおトクな商品もあったのは確かで、たとえば通学定期など値引きのない商品、前払いの英会話やエステ、雑誌の定期購読など年間契約ができるもの、チケットの回数券、化粧品など、既に支出が決まっていて、原則として値引きが少ない商品、モデルチェンジが頻繁でない商品にはメリットがあります。

しかしほとんどの商品の価格は、需要と供給で決まります。

だから売り手の立場も想像できる富裕層は(彼らもビジネスでは売り手ですから)、そうなる流れを無意識的に予見し、駆け込み消費に走らなかったのだと推測しています。

■10月以降の販促戦略に注目

そして今回の増税で駆け込み消費があまり盛り上がらないのは、そうした前回の増税時の現象を、消費者が賢く学んだということでしょう。

また、2%と前回よりも上げ幅が小さいうえ、軽減税率の適用やプレミアム商品券の配布、自動車税及び自動車取得税の改正など消費落ち込み対策がセットで打ち出されている点、増税前に買った方が良い商品群についての情報が行き渡っていることも理由として挙げられると思います。

あるいは、「○○ペイ」といったキャッシュレス決済サービスを使えば増税後にポイント還元されるとか、タイミング的にも前回のような新生活のために何かを買い揃える動機が薄い時期だという側面もあるかもしれません。

いずれにしても、あと数週間や数日の2%でトクする金額は知れています。増税の対応にあくせくするよりも、増税後の政府・企業の販促戦略をうまく活用しつつ、手持ちのお金を何に使えばより人生がおもしろくなるかを考えたいものです。

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午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。大学卒業後、東京都内の会計事務所にて企業の税務・会計支援業務に従事。大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年、株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍。『捨てるべき40の「悪い」習慣』『「いい人」をやめれば、人生はうまくいく』(ともに日本実業出版社)など著書多数。

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(米国公認会計士 午堂 登紀雄 写真=iStock.com)

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