義父母の「年74万円おねだり」を断れない若夫婦

プレジデントオンライン / 2019年9月21日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

2世帯住宅で義父母と暮らす40代主婦は、家計の赤字に悩んでいた。原因のひとつは義父母の「おねだり」。電話代の負担や買い物代行、誕生日祝いなどがかさみ、贈与額は年74万円分になっていた。今後の援助を断るには、どうすればいいのか——。

■度を過ぎた親孝行が生んだ働き盛り世代の赤字転落への顚末

「同居している夫の両親のせいで、家計が赤字なんです」と、困惑顔で相談にきた関東地方在住の宗田由香さん(仮名・40歳)。年金暮らしの両親(70代)の食費の一部や電話代などを負担していて、その金額の多さが家計を苦しくしているというのです。

宗田家は、夫で会社員の英樹さん(仮名・41歳)と、専業主婦の由香さん、小学生の娘2人の4人家族。1年半ほど前に英樹さんの実家の敷地に、新築の2世帯住宅に建て替え、それ以来、宗田さん家族と英樹さんの両親の2世帯、6人で暮らしています。

建物の建築費は諸経費込みで、約3200万円。頭金には英樹さんの両親から「暦年贈与」でもらった800万円と、自分たちで貯めた200万円を充て、残りの2200万円を銀行から借り入れて、月々約8万3000円の住宅ローンを組みました。

一戸建てのマイホームが夢だった由香さんにとって、2世帯住宅とはいえ、土地の提供から頭金の援助までしてくれた英樹さんの両親には、「感謝」しかありませんでした。同居に際し、住宅ローンは名義人である英樹さん夫婦が払い、水道光熱費をはじめとする生活費は、それぞれで独立して払うというルールを両家で決めました。

ただ、そのとき「頭金を渡してくれた分、両親の貯金はほとんどないらしいんだ。いままで世話になったから、これからは僕たちで両親を援助していこう」という英樹さんからの提案がのちに予期せぬ展開を呼ぶことになるのです。

■2世帯住宅の義父母の「おねだり」がエスカレートしてきた

両親への具体的な援助としては、固定電話、スマホ、インターネットの料金はひとつにまとめ、英樹さん夫婦で負担。また、英樹さんの母親は料理が苦手だったため、週に2〜3日は晩ごはんのおかずを差し入れし、土曜日は両親も呼んで、一緒に晩ごはんを食べることにしました。さらに、由香さんは買い物に行くたびに、「ついでに何か買って来ましょうか」と声をかけ、買い物の代行もしていたそうです。

最初は由香さんも気持ちよくやっていたそうですが、そのうち、母親が遠方に住む娘と毎日のように長電話をしていることがわかったり、買い物のときに渡されるお金が足りなくなることがしばしば起きたりするうちに、「これでいいのかな」と疑問を持つようになりました。

差し入れや週末の料理についても「豚肉より牛肉を」「中国産より国産を」「フルーツも食べたい」などと要求が徐々にエスカレートし、食費もぐんぐん上がっていきました。

写真=iStock.com/Highwaystarz-Photography
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Highwaystarz-Photography

■義父母の誕生日やお年玉などに金品の贈り物を

さらに、関係を良好なものに維持しようという配慮から、両親の誕生日や母の日・父の日、お正月のお年玉と「贈り物」もかなりの額に上っていました。加えて、年末に両親とともに家族旅行をした際も費用は折半でしたが、旅行先の食事代は英樹さんが「うちで出すよ」と由香さんに相談せずに気前よく言い出すことがほとんどでした。

「これはかなりの出費になるのではないか……」

心配になった由香さんですが、家計簿をつけていなかったので実態はよくわかりませんでした。英樹さんの手取り月収は約37万5000円で、ボーナスは年間約170万円と恵まれていたこともあり、たとえ毎月赤字になっても、ボーナスで補塡(ほてん)できるため、「なんとかなっているだろう」と高をくくっていた部分もありました。

こうして1年がたったある日、由香さんは何げなく見た貯金通帳の残高が、数十万円もガクンと減っていたことに気づいたのです。

■「両親のせいで赤字」といっても、説得力なし

由香さんは給料日に、引き落とし分以外の現金をすべて下ろし、費目ごとの封筒にお金を入れてやりくりする、いわゆる「袋分け」で家計を管理していました。買い物のたびに袋から現金を出して使っていくので、残金がわかりやすいというメリットがありますが、食費の袋の現金がなくなれば、他の袋から借りることもしばしばで、結局「何に、いくら使っているのか」がよくわかりません。

また、現金がなくなると、クレジットカードで買い物をしていたので、翌月の引き落とし分が多くなり、「使える現金が毎月、毎月少なくなっていく」という悪循環に陥っていました。

そして、家計簿をつけていなかったために、両親へのさまざまな援助が家計を圧迫しているという事実を、英樹さんにわかってもらえなかったのです。数十万円が消滅した貯金通帳を見せても、「それはうちの両親のせいじゃなくて、きみのやりくりが下手なんじゃないのか」といわれ、どうしていいのかわからなくなってしまいました。

写真=iStock.com/seb_ra
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■支出の実態を調べると義父母に年74万円も“貢いで”いた

両親と同居して経済的なサポートをするのは、思いやりに満ちた素晴らしいことだと思います。しかし、だからといって、子供世代が身の丈以上の負担を背負い込んでしまうことや、親世代が自分の収入以上の生活を望むことは、両方の家計にとって決していいこととはいえません。

ここはまず、由香さんの家族として、両親分の支出も含めて「何に、いくら使っているのか」を具体的な数字で把握することが先決です。私は由香さんに、3カ月間、家計簿をつけるようにお願いしました。食費、生活日用品など費目別の支出を記録し、その中で、遠距離の長電話や買い物代行の金額など、「両親分の支出」には(1200円)など、括弧をつけて区別してもらいました。

こうした月々の支出に加え、誕生日や母の日、父の日などの贈り物、旅行の食事代については今後、ボーナスからの支出として扱うことにし、わかる範囲で金額を出してもらうことにしました。

3カ月後、家計簿を拝見すると、収支は毎月約4万5000円の赤字。この額もかなりのものですが、驚いたのは両親分の支出額でした。

1万8000円の固定電話代のうち、1万6500円。
10万4000円の食費のうち、1万2000円。
1万8000円の日用品費のうち、4000円。

両親分の支出は合計で月3万5000円。月の赤字の大部分を占めていました。

贈り物の支出は、クレジットカードの履歴から金額が確認できました。誕生日各3万円、お年玉は各5万円、母の日、父の日も各1万円ほどで、合計で18万円。年末の旅行の際に負担した食事代は計約14万円にも上っていました。年間にすると74万円という計算になります。

■「おねだり拒否」で家計は月5万5000円の支出減に成功

「やっぱり両親分の支出が、赤字の大部分を占めていたじゃない。これからはすべてうちからは出しません」と由香さんは英樹さんに詰め寄ります。

しかし杓子(しゃくし)定規に支出をきっちり区別するだけが、解決策ではありません。違う視点も必要です。私は次のような提案をしました。

まず長電話はインターネット電話に切り替えることで、通話料自体をかからなくする。スマホは家族全員で格安SIMに変更したりして、コストダウンに励む。

食費や生活日用品などの買い物の代行分は、「LINE Pay」や「PayPay」などのプリペイドサービスに予算を決めてチャージし、「両親分はここから使う」ようにすれば、由香さん家族の分と区別できます。

このほか、親の希望で娘に通わせていたバレエ教室を退会したり、食材や日用品を買いすぎたりしないようにするなど、由香さんの家族も支出を見直しました。併せてクレジットカードでの買い物はやめ、「今月の支出は来月に持ち越さない」としました。すると、全体で約5万5000円の支出が削減され、毎月1万円の貯金ができるめどが立ちました。

メタボ家計 BEFORE→AFTER

■義父母は老後資金を残そうと子世代からの援助に期待した

後日談ですが、贈り物については、英樹さんから負担の重さを両親に伝えたところ、「お金じゃなくて気持ちだよ」と言ってもらえました。これからは金額よりも内容重視で贈り物を選んでいくことになったそうです。

今回のケースは、親世代が子供夫婦のマイホーム費用の一部を負担したことから、年金を少しでも今後の老後資金に回そうと、子世代からの援助に期待してしまったという側面がありました。

老後資金と子どもへの援助費用は、シーソーの関係にあります。まずは「老後を自立して暮らす資金」を十分確保したうえで、子世代への援助を考えていただければと思います。

写真=iStock.com/ronen
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■【家計簿BEFORE→AFTER コストカット額ランキング】

1位 -1万6500円 通信費(固定電話代)
娘との遠距離通話料は「スカイプ」の利用でゼロに
2位 -1万2000円 食費
両親分は月8000円で自己負担に。食材全体も見直し4000円減
3位 -1万円 通信費(スマホ、インターネット代)
4台分を格安スマホに変更し、計1万円減に
4位 -8000円 教育費
嫌々行っていた娘2人のバレエ教室を退会
5位 -5000円 生活日用品
両親分は月3000円で自己負担に。消耗品のストック買いをやめ2000円減
6位 -4000円 被服費
普段着はメルカリで購入するようにした

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。各種メディアへの執筆・講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし、著作は110冊、累計330万部となる。個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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