超お買い得「6年間350万」で医学部にいく方法

プレジデントオンライン / 2019年9月23日 9時15分

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地方での医師不足の切り札として医学部入試の「地域枠」の導入が進んでいる。麻酔科医の筒井冨美氏は「医師免許取得後9~11年間、指定された地域で働くという縛りがあるため倍率が低い。返済不要の奨学金が支給される場合もある。ただし合格にはコツがいる」という――。

医師免許は、取れば一生食っていくのに困らない「プラチナ国家資格」。その取得プロセスの第一歩となる医学部受験の人気は、一時のピークは越えたものの、依然、過熱状態が続いている。

とりわけ国公立大の医学部は大激戦だ。これは私立大医学部が6年間で2000万~4000万円の学費を覚悟しなければいけないのに対し、国公立なら350万円程度と極めてリーズナブルだからだ。とりわけ首都圏の国公立医大は超難関となっている。

■地方医師不足対策の切り札は「地域枠入試」

昭和時代にはドラマ「白い巨塔」のように、若手医師は母校の附属病院に就職して、就職当初から「外科」「精神科」などの医局に属して研修することが当たり前だった。それが、2004年度から始まった「新研修医制度」によって、医師免許取得後2年間は「内科4カ月→小児科2カ月→精神科1カ月……」などと多数の専門科をローテーションしながら総合的な研修を行い、その後に専攻科を決めることになった。

2018年度からは、卒後3年目以降の専門科研修についても、厚労省の外郭団体である「日本専門医機構」が厳しく監督するようになった。この新制度導入で、症例数や指導医が多く生活が便利な東京都内の病院が大人気になり、一期生の22%が東京都に集まった。

逆に、この新制度導入により地方の医師不足はますます顕著になり、「群馬・山梨・高知県で外科医1人(東京177人)」や「徳島・佐賀県で小児科医0人(東京130人)」とさらに悪化してしまった。※参照:一般社団法人 日本専門医機構「専攻医の採用状況について」別紙1参照 

こうした深刻な地方医師不足対策の切り札が「地域枠入試」である。

■親からの仕送りゼロで医者になれる超お買い得なコース

これは「医師免許取得後9~11年間、指定された地域で働くことを条件に、一般入試とは別枠で合否判定し、義務年限を終了すれば返済不要の奨学金を支給する」という入試制度である。

2008年頃よりこの地域枠入試の募集人数が拡大し、2019年の入試では、枠の多い大学で、札幌医科大学(北海道札幌市・公立)が90人(定員110人)、東北医科薬科大(宮城県仙台市・私立)が55人(定員100人)を地域枠に充てている。現在、全国の医学部総定員9419人中の15~18%が地域枠と推測されている。

■地方大医学部「地域枠」の偏差値が低下し始めたワケ

しかしながら、近年は「地域枠の足抜け」の問題もクローズアップされている。

医学部の入試には面接もあるが、その際、受験生が「地域医療に貢献します」とアピールしたにもかかわらず、卒業後は、指定された地域で働く約束を反故にし、もらった奨学金も一括返金して東京の病院に就職するケースが増えているのだ。

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その対策として厚生労働省は「地域枠医師を採用した都会の病院は補助金カット」という荒業に出た。実際、2019年には東京医大が「茨城県地域枠医師を大学病院本院(東京都新宿区)で採用した」ことが発覚して、補助金を大幅に減額された。これにより、地域枠出身医師は東京都内のメジャー病院に就職することが厳しくなった。

卒後9~11年の進路や居住地を厳格に制限される時代になったことにより、国公立大医学部でも「地域枠」入試の偏差値は、中堅私立医大を下回るケースが続出している。これは「医者になれるなら地方勤務OK」の学生にとってはラッキーなことだ。偏差値が下がり、奨学金がもらえれば親からの仕送りゼロで医者になれる超お買い得なコースとなるからだ。

今回は、「一般家庭から医師を目指す奥の手」の2019年編として、地方医大を受験するコツ、とりわけ地域枠の攻略法を伝授したい。

■医大入試は就職試験するのと同じ

2018年、東京医大ほか多くの医学部で女性受験者を減点していた事実が発覚し、世間は大騒ぎとなった。しかし、医療現場では「そんなの公然の秘密」という声が多数派だった。なぜなら、全ての医大には附属病院があり、医大入試が事実上の採用試験としても機能しているからだ。

大学病院ともなれば、長時間手術や夜間救急外来のようなハードな仕事が多い。ごく一部の名門病院なら医師確保に苦労しないだろうが、東京医大ほか中堅医大では、一般企業と同様に体力とやる気のある「若い男」を確保したい。

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医師不足に悩む地方医大としても、将来は母校の附属病院に就職してくれる高校生がほしい。よって、合否判定する際は「地域枠」も「一般枠」も、面接試験での受け答えを聞いた上で「卒業したら速攻で東京に逃げそうな人材」を排除せざるをえない。

■都市部受験生に伝授したい地方医大「地域枠」攻略法

地域枠といっても具体的な選抜方法はさまざまである。かつては、「県内高校卒業生に限定」また、「県内の中でも特に医師不足地域の高校から推薦入学」といった手法もあったが、出身属性を限定しすぎると学力の維持ができず、結果的に留年や国家試験不合格のような残念な医学生が目立つことになる。

そこで、現在は「県外出身者でも県内就職を確約するならば受験可能」という地域枠が増えている。地域枠の人数や条件は変更されやすく、おおむね秋ごろから各大学医学部の公式ホームページで掲載されることが多いのでチェックしておきたい。

■医大受験合否の鍵を握るのが面接での「回答」

首都圏の高校生といえども、両親は地方出身のことは多い。そこで、受験生が「面接官の評価を高める」ために、「なぜ本学を受験したのか」という質問に対する回答として「親の出身地にある医大」というのは一定の説得力があるのではないか。また、「○○市によく帰省する」「祖父が附属病院で手術を受けた」「定年後に親がこちらに移住したがっている」のような回答もポイントが高いと思われる。

あるいは、親が転勤族で地方在住経験があるならば、その地域の医大の面接では、「○○神社でよく遊んだ」など具体的な地名を入れてその地域に対する愛着があることをアピールしたい。

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■趣味・クラブ活動は「非都会的」なものにすべし

首都圏の受験者が「地方の生活が苦ではない」ことをアピールするのも悪くない。例えば、内申書の「趣味・クラブ活動」は非都会的なものを記載する。ゴルフ部やラクロス部のような都会的でオシャレなスポーツよりも、陸上部や水泳部のように地方でも継続可能なスポーツが好印象のはずである。

あるいは、面接で土地柄と関連性のある趣味であることを伝えれば「加点」も期待できるかもしれない。登山が趣味なら山梨大や信州大を受験し、スキーが好きなら山形大を受験する、というように。

留学歴の受験生や帰国子女は、面接官から「卒業後に都会へ行きそう」と判定されがちだが、近年では地方でも外国人労働者が急増しているので「自分が外国で苦労した経験を、地方在住の外国人医療に活かしたい」といった発言をしてアピールするとよいだろう。

■女性受験者が事前に回答準備すべき質問

2018年の東京医大の騒動を経て、2019年の医大受験では女性学生合格率の大幅アップが報告されている。とはいえ、現状、女性医師がフルタイムで働く環境の整備ができたとはいえない。そこで、受験する医学部の所在地が「親の出身地であり、将来医者になった頃には、定年後の親に家事育児をバックアップしてもらえる」といった内容のアピールは効き目があるかもしれない。

面接時の質問では「地域枠で入学した後、一般枠出身の恋人ができて、その彼に『結婚して東京で暮らそう』と言われたらどうする?」のような意地悪な内容も含まれるので、あらかじめ自分なりの回答を準備しておきたい。

■地方医大地域枠→地方病院で馬車馬のように働いて経験値高める

先日、東京都内の有名病院へ出向する機会があった。約800床の病院に約400人もの医師が在籍していた。正直に言えば、他の病院なら1人で間に合う仕事を、「4~5人でチンタラやっている」「こんなヌルい環境で若手医師の成長は望めない」という印象を抱かざるをえなかった。

新専門医制度が続く限り、医師の一極集中は続くだろう。東京都内の病院は、概して給料は安めだがワークライフバランスは良好な職場が多い。一方、北関東~東北あたりに行けば同レベルの患者数を5分の1ぐらいの医師の数で対処するケースも少なくない。そういう意味で勤務はキツいが、メリットもある。若手医師であってもバンバン手術執刀を任されるチャンスに恵まれるので、経験値が高まり、早い成長を期待できる。

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2019年10月から、人気テレビドラマの「ドクターX」シーズン6の放映が予定されている。米倉涼子が演じる主人公の外科医・大門未知子は「キューバの野戦病院で馬車馬のように働いて驚異的な成長を遂げた」という設定になっている。

若手医師が高いスキルを獲得するキャリアパスとして、「地方医大地域枠→医師不足の地方病院で馬車馬のように働く」は、案外、悪くない選択肢だと思う。

「ウチはビンボーだし、東大理IIIや東京医科歯科大なんてムリ」と諦める前に、地方医大や地域枠を検討してはいかがだろうか。

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筒井 冨美(つつい・ふみ)
フリーランス麻酔科医、医学博士
地方の非医師家庭に生まれ、国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、12年から「ドクターX~外科医・大門未知子~」など医療ドラマの制作協力や執筆活動も行う。近著に「フリーランス女医が教える「名医」と「迷医」の見分け方」(宝島社)、「フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方」(光文社新書)

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(フリーランス麻酔科医、医学博士 筒井 冨美)

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