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人間は「早起きの習慣化」では朝型に変われない

プレジデントオンライン / 2019年10月10日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat

Q. 早寝早起きがやっぱりベストなのか?

■朝型と夜型とでは、体内時計に6時間差

早寝早起きは昔から健康にいいといわれてきました。最近は朝型勤務を推奨する動きが広がり、早寝早起きは仕事の生産性を高めたり、ワークライフバランスを改善する効果もあるといわれ始めています。

しかし、睡眠の専門家から見ると、昨今の風潮には危惧を抱かざるをえません。早寝早起きは、ある種の人たちにとって苦行に等しく、健康を損なうおそれさえあるからです。

人には、それぞれに合った適正な睡眠パターンがあります。パターンを決めるのは体内時計。深部体温(脳の温度)が下がるタイミングや、睡眠系のホルモンが出てくるタイミング、朝に覚醒作用の強いコルチゾールというホルモンが出てくるタイミングは人によって異なり、それによって眠気がくる時間帯が決まります。これらのタイミングが早くやってくる人が俗にいう朝型で、遅い人が夜型。私たちが行った調査では、わずか50人程度の体内時計の時刻を測定しただけでも朝型と夜型とでは大体6時間の違いがありました。

個人差があるのは、睡眠時間帯(タイミング)だけではありません。適正な睡眠時間(長さ)も人によって異なり、同年代の間でも3時間弱の差があります。夜型かつ必要睡眠時間の長い人は、朝型で必要睡眠時間の短い人と比べて、自然に目覚める時刻がずっと遅くなります。

■中高年には苦でない早朝出勤も、若い社員にとっては大変

個人差に加えて年齢差も考慮したほうがいいでしょう。一生の間で体内時計がもっとも遅れるのは、男性21歳、女性19.5歳です。その年齢をピークにして体内時計は年々早まっていき、必要な睡眠時間も短くなっていきます。50~60代の中高年には苦でない早朝出勤も、若い社員にとっては大変なのです。

早起きできないのは早く寝ない本人のせいだ、という指摘も間違いです。睡眠のメカニズム上、人は夜更かしはできても、早寝することはできません。人間は大脳皮質が発達しているため、眠気がやってきても自分の意志で覚醒し続ける、つまり夜更かしすることは可能です。しかし、眠気は体温やホルモンの作用の結果であり、自分の意志で前倒しして早くやってこさせることはできません。

早起きを習慣化すれば朝型に変わるというのも幻想です。たしかに早起きして午前中に日光を浴びる行為を続ければ、体内時計が少しずつ前倒しされて、早起きが多少は楽になっていきます。しかし、朝型か夜型かは遺伝的な(体質的な)影響が大きく、週末に寝だめして遅く起きると、結局は体内時計が本来のパターンに戻ってしまいます。

健康やパフォーマンスに大切なのは、早寝早起きではなく、自分に合った睡眠パターンで眠ることです。職場ではフレックス制や在宅勤務などを導入して、一人ひとりの睡眠パターンに合わせた柔軟な働き方ができる体制を整えるべきでしょう。

▼夜型人間は早寝早起きしようとしても朝型になれない

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三島 和夫(みしま・かずお)
秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授
国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長などを経て、2018年より現職。『朝型勤務がダメな理由 あなたの睡眠を改善する最新知識』など著書多数。

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(秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授 三島 和夫 構成=村上 敬)

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