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元LINE社長「僕がヤバかった時に読んだ3冊」

プレジデントオンライン / 2019年11月17日 11時15分

C Channel 社長 森川 亮氏

どんな人生にも、山があれば谷もある。LINEを大企業に成長させた森川氏。人生の岐路でどのような本と出会い、窮地を乗り切ってきたのか――。半生とともに振り返る。
▼『HARD THINGS』を読むと気持ちが楽になる

■少し先の未来を見られるようになった

やりたい仕事があって就職したのに、希望の部署に配属されず、悶々としている若手社員は多いかもしれません。じつは僕も日本テレビに就職した当初は同じ思いでした。音楽の仕事をしたくてテレビ局に入ったのに、コンピュータ関連の部署に配属されたのです。

そのころは本当に迷走していました。キャリアに悩んで大学院でMBAを取得したり、中小企業診断士の資格を取ったり。イラストレーターに転身しようとギャラリーを始めたり、自作のアクセサリーを販売したこともありました。当時は読む本も、成功者の自伝など人の生き方に関するものが多かった。自分の迷いが読書にも反映されていたのでしょう。その後、ソニー、30代半ばでまだ小さかったハンゲーム(現LINE)に移りました。

ハンゲームはPCゲームの会社でした。おかげさまで僕が事業責任者になってから急成長。とても充実した毎日でした。しかし、あるときから急に成長が止まります。PCからガラケーにシフトする時期でしたが出遅れ、グリーやDeNAに市場を押さえられてしまったのです。そのころ社長になって再成長を目指しましたが、しばらくは厳しい時期が続きました。新事業も芽が出なかったし、グループ入りしたライブドアも苦戦。3年くらいは何をやっても結果が出ない状態だったのです。

当時、読んで影響を受けたのは『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー)。まだ事業責任者だったころ、前社長が社内研修で薦めていて手に取ったのですが、特に重要性と緊急性の話はハッとしました。そのころ僕は緊急性の高い仕事にしか目がいってませんでした。社長になってからも同じで、とにかく目の前の業績のことで頭はいっぱい。日々の緊急事態に対応しつつも、先を見据えた重要性の高い仕事をやる時間をつくらないと、いつまで経っても厳しい時期を抜け出せない。

そう気がついて、種まきの仕事に時間を割くようになりました。ITの世界はあまり先を見すぎてもよくありません。しかし、目の前のものだけ追っていたらすぐに通用しなくなり、事業的にも精神的にも消耗してしまう。見ていたのは、2~3年先です。また、日々の時間の配分も意識するようになりました。ウイークリーで「仕事」「社会貢献」「家族」「健康」など各カテゴリーに充てる時間を決め、偏らないようにスケジュールを組みます。この習慣はいまでも続けています。

■何をやるかより、誰とやるかが大事

この時期に出会ってよかったと思える本がもう一冊あります。『ビジョナリー・カンパニー2』(ジェームズ・C・コリンズ)です。当時の悩みの1つは、せっかく採用した人がすぐに辞めてしまうことでした。急成長しているときは表面化しませんでしたが、事業が足踏み状態になると、会社を支えていたメンバーまで辞めたいと言いだす。そうした悩みを抱えていたとき、この本に「何をやるかより、誰とやるかが大事」と書いてあって、妙に納得してしまいました。退職したくなくなる職場づくりは大切ですが、そもそも「誰を自分のバスに乗せるか」という採用が重要だと気づいたのです。

36歳で社員数30名ほどだったハンゲーム(現LINE)に転職。社長時にリリースした「LINE」は1年半でユーザー数1億人を突破。日本だけではなく、タイ、台湾、インドネシアでも高いシェアを誇る。(Getty Images=写真)

ベンチャーに必要な人材は、会社のステージによって異なります。最初のころは、きちんと仕事をやり切る人。軌道に乗ってきたら、専門性やマネジメントのスキルを持っている人。ただ、スキルで採用した人は、会社の成長が止まると、もっと条件のいいところに簡単に流れていきます。『ビジョナリー・カンパニー2』を読んでから採用するようになったのは、会社を愛してくれる人。社畜的な意味ではなく、会社のビジョンや価値観に心から共感してくれる人を採用することにしました。

当時、掲げていたのは、「コミュニケーションの価値を高められる世界ナンバーワンの会社」でした。あと、企業文化として「平和なアジアをつくろう」ともよく言っていました。親会社が韓国の会社なのでスタッフにも韓国人が多かったのですが、サッカーで日韓戦があると、そのたびに会社の雰囲気が悪くなる(笑)。なので、アジアで喧嘩している場合じゃなくて、みんなでシリコンバレーを超えようぜと。そうやって苦しい時期を乗り越えていくさなかにLINEが誕生して、会社もふたたび上昇気流に乗りました。

事業がうまくいき始めると、読書傾向も変わります。この時期はグローバル企業の経営本や、歴史や宇宙、生物論など、人間のオリジン(起源)に迫る本を中心に読んでいました。グローバル展開するにあたって、会社や人間の本質とは何かという問題意識が芽生えてきたからだと思います。

■LINEの社長を退任して、C Channelを立ち上げ

48歳のときにLINEの社長を退任して、C Channelを立ち上げました。日本発で世界ナンバーワンのメディアをつくるためですが、最初の半年は苦労の連続でした。自分でトイレ掃除をしたり、プレスリリースを書いたり。そうした作業も苦になりませんが、設立直後の発表会で「いつでも黒字化できる」と答えてしまい、そのプレッシャーは感じていました。主な対象ユーザーである若い女性の感性がわからないことも悩みでした。

起業した年の暮れにハウツー動画で1億再生を記録してようやく成功モデルをつかむことができましたが、そこまでくじけずに走り続けられたのは、『HARD THINGS』(ベン・ホロウィッツ)を読んでいたからかもしれません。シリコンバレーの投資家が起業家時代を振り返った本ですが、会社が訴えられたとか、資金がショートしてつぶれそうになったとか、全編、暗い話しか書いてない。これに比べれば自分の悩みはマシだなと慰められました(笑)。

ハウツー動画でブレークした後も、ビューティ動画やママ向け動画メディア、動画オーディションアプリなど、さまざまな切り口でサービスを増やしています。もちろんその裏には途中で頓挫したり、方向転換したサービスもあります。大切なのは、やってみること。絶対に成功するサービスは誰にもわからないので、まず動き始めて、ハードシングスを乗り越えるために試行錯誤するしかないと実感しています。

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森川 亮(もりかわ・あきら)
C Channel 社長
1967年、神奈川県生まれ。89年、筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。在職中に青山学院大学にてMBA取得。2000年にソニー入社。03年ハンゲーム・ジャパン(現LINE)に入社、07年社長に就任。15年よりC Channelを創業。

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(C Channel 社長 森川 亮 構成=村上 敬 撮影=大沢尚芳 写真=Getty Images)

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