人生に効率主義で挑む「意識高い系」の残念人生

プレジデントオンライン / 2019年10月7日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

新卒でメガバンクに入り、企業買収ファンド、MBA取得を経て、ココナラの社長となった南章行氏。順風満帆にみえるが、南氏は、「人生を逆算して長期プランを立てるのは一見堅実そうだが、不確実な時代にはマイナスが大きい」という――。

※本稿は、南章行『好きなことしか本気になれない。人生100年時代のサバイバル仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■「逆算思考」で効率主義だった自分

僕はもともと逆算思考だ。

たとえば高校時代は自分なりに調べた結果「将来は三井物産に就職しよう」と決めて、そこから逆算して「慶應の経済学部に行く」と決め、そのために必要なことを極限まで絞って最小限の勉強をした。予備校にも通わなかった。

同級生たちの多くは自分の偏差値から行けそうな大学を選んでおり、進学校だったから「慶應を受けるなら早稲田も」という友人も少なくはなかったが、僕は一択だった。

一択にした裏には、父が経営していた会社の状況を考えるとお金をかけたくなかったという理由もあるけれど、何よりも「無駄がない」という最大のメリットがあった。

また、勉強のために何かをあきらめるという価値観を僕は持っていなかった。3年生になっても引退せずにラグビー部を続け、彼女とデートもするには、いろいろな勉強をやみくもにやっている時間はない。一方で、学力でいえば同級生には全然勝てるレベルではない。そんな自分が、的を絞らずに勉強して合格するわけがないと思っていた。

■受験では無駄を排除して効率的に勉強した

そこで僕は、「受験=情報処理ゲーム」と捉えることにした。何が必要で何が無駄かを見極めて、勉強するのだ。この観点に立つと、早稲田と慶應はまったく問題の傾向が違う。同時に受けるなんて、弁護士と会計士を同時に目指すようなものだ。

また、当時の慶應の経済は受験科目に国語がなく、数学で受けられる唯一の文系だった。そもそも私立文系は数学が苦手な人が多いので、勇気を持って慶應経済に絞る、つまり国語を勉強せずに数学を勉強すればそれだけで大きなアドバンテージだ。また、数学というのは経済を学ぶうえでマストだから将来的にも合理的だ。

ついでにいえば、慶應の歴史の試験は近代以降からしか出題されなかった。経済学に関係するのは産業革命以降の出来事だから、これも無駄がなくていいし、範囲を絞れるからこれも他大学を併願する人に対するアドバンテージになる。

■「逆算思考」は長期スパンでやると無理がある

この逆算思考は、形式が決まっていて、短いスパンの目標に向かうときに効く戦略だ。逆にいうと、これを長期スパンでやるのは無理がある。

たとえば高校3年生の僕は5年後の「三井物産に就職」というキャリアプランから逆算して慶應に合格できたが、実際に入社したのは住友銀行だ。

また、大学のカラーはそうそう変わらないが、ビジネスの世界は違う。たった数年で潰れるはずのない大企業が潰れ、市場は一日で変わりうる。

さらに今は僕が高校生だった25年前とは違い、時代の変化がすさまじく速い。そんななかでキャリアの長期プランをつくったところで意味がない。したがって逆算も難しい。

僕の個人的な感覚では、5年プランはありえないし、3年でも長すぎると思っている。まして人生が100年もあるなら、そんな長い時間軸で未来を見通せるわけがない。

現実として僕は「5年後の自分」を予想できていたためしがない。銀行にいたときは銀行ですごくうまくいっていて、最後の1年であっても翌年にファンドに行くなど想像すらしなかった。

それでも企業買収ファンドに移ったわけだが、MBAよりも現場のほうが学びが多いと思っていたので、やがて留学してMBAを取るなんて全然考えていなかった。また、ファイナンス業界のアドレナリンでびしょびしょ状態のなか、NPOをやるなんてありえなかったし、起業するというイメージもなかった。

■「一貫性」に縛られすぎるとチャンスを逃す

時代は変わるし、自分の興味や関心も変わる。長期プランというのは堅実そうだが、不確実な時代に無理やり長期プランを立てると、方向転換のタイミングを逃したり、間違ったキャリアプランにいつまでもしがみついたりする羽目になるだろう。

「私には長期プランがあって、今は目標に向かって頑張っている途中だから」と言えば、なんだか格好いい一途なセリフに聞こえるが、実はチャレンジしない言い訳だったりする。長期プランを立てると「今は準備段階だから、成果を出さなくてもよい」などと、自分のなかに甘えが生まれてしまうからだ。

皆さんの周りにもいるだろう、「今の部署で3年くらい経験を積んでから起業する/転職する」と言いながら、結局アクションをしないで何年も経っている人が。まだ準備ができていないから今は自分に投資するべき、などと言いながら、ずるっと遅れていく。

また、一途というのは、方向転換がきかない不自由な状態でもある。あまりに明確なゴールを設定し、そこに向けて走り始めてしまうと、前提としている社会や自分の興味関心が変わっても、「これを目指す!」と宣言した自分の言葉に嘘がつけなくなってしまう。

無意識のうちに、一貫性を維持しようと心の片隅にある違和感を押し殺し、時にはチャンスを逃すことにつながってしまうのだ。

この「違和感」こそ、時代への適応だったり自分の成長だったりすることを、忘れずにいたい。

■「心が満たされる好きなこと」でしか稼げない

仕事はしんどいことも多々あり、僕たちはそれを長く続けるのだから、モチベーションを維持する源泉が不可欠だ。かつてそれは組織のなかで評価されることだったり、昇進・昇給だったりしたが、これからは違う。

仮にあなたに「よくやった!」とほめてくれる最高の上司がいたとしても、永遠にその人が上司というわけではない。尊敬できるカリスマ社長のもとで認められるのもいいが、「誰かに認められる」という他者評価は絶対ではない。人の思惑に縛られるというのは、過去の経験に縛られるのと同じで、未来の選択肢を狭めることになる。

昇進や昇給がモチベーションになる時代も過去の話だ。80歳まで働く社会では定年まで昇進や昇給が続いていくことなんてありえない。年齢とともに思うように働けない苦しみと向き合うこともあるだろう。

そこでこれからのキャリアには、「その仕事で、自分の心が満たされるか?」ということが大切になると僕は考えている。

■「稼げるスキル」は「稼ごうとしない」ことで手に入る

心が満たされること、それこそ働くモチベーションの源泉となるし、厳しい状況の中でセルフリーダーシップを発揮する条件だ。

心が満たされる好きなことは自分の価値観に合致していることが多いし、そこで頑張れば自分のスキルにもなる。セルフリーダーシップを発揮して、心が満たされることを夢中でやり続けていたら80歳になっていた。ふと振り返ったら、その道のりが自分のキャリアだった―これは最高のハッピーエンドだ。

「お金か、やりがいか」という議論はしばしばなされているし、もちろんお金は必要だ。特にこれからの少子高齢化、そして人生100年時代を考えると、これまで以上にお金が大事だともいえる。個人の力であるスキルには、「稼げるスキル」という面が備わっていなければいけない。

そして逆説的だが、「稼げるスキル」は、「稼ごうとしない」ことで手に入る時代になっているのだ。なぜならば、長期にわたり働くことを考えると、今稼げるスキルは、将来稼げるスキルだとは限らないからだ。

■嫌なことからは全力で逃げたほうがいい

時代に合った新しい稼げるスキルは、「たとえそのときは稼げなくても、本気になって頑張れる」仕事を通じてでしか身につけられない。だからこそ、心を満たす仕事をすることが大事だ。

南章行『好きなことしか本気になれない。人生100年時代のサバイバル仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

好きなことであれば人は頑張れるし、好きで得意で頑張れる仕事のほうが、お金をたくさん稼げる確率が高くなる。長く働き続けるには、我慢ではなく、やっていてわくわくすることを見つけるべきだ。その意味で、心が否定するものからは、全力で逃げたほうがいい。

スキルはひとつでなくていいから、「そこそこ好きで、わりと稼げる仕事」と「稼げなくても心満たされる仕事」の二つを持つというスタイルもいいだろう。

やるべきことを一生懸命やりつつも、自分の価値観に従って「ああ、こっちかも」と思ったら違うやり方もとれる、ゆるやかなスタンス。この過去に縛られない自由なスタンスが、得意で好きなことを仕事にするためには大切だ。

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南 章行(みなみ・あきゆき)
ココナラ社長
1975年、愛知県名古屋市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。1999年、住友銀行(現・三井住友銀行)入行。2004年、アドバンテッジパートナーズ入社。2009年、英国オックスフォード大学経営大学院(MBA)修了。2011年6月にアドバンテッジパートナーズを退社し、自ら代表としてウェルセルフ(現在のココナラ)を設立。知識・スキル・経験のスキルマーケット「ココナラ」を運営している。

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(ココナラ社長 南 章行)

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