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「教育熱心な親の子」が4年生で潰れる根本原因

プレジデントオンライン / 2019年10月17日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

小さい頃からたくさんの習い事をさせている家庭では、小学4年生ごろから成績が伸び悩むケースが多いという。『5歳から始める最高の中学受験』(青春出版社)の著者の小川大介氏は「習い事や勉強をさせすぎると逆効果になる。それより料理や掃除、洗濯といったお手伝いをさせたほうがいい」とアドバイスする——。

■高学年で成績が伸びなくなる子の共通点

中学受験の指導に関わるようになってかれこれ28年になります。その間、私はさまざまなご家庭の教育相談を受けてきました。勉強のやり方がわからない、大手進学塾の授業のスピードについていけない、頑張っても成績が上がらないなど内容はいろいろですが、特に多いのが「高学年になってから成績が伸びなくなった」というご相談です。

そういうご家庭に「お子さんが小さい頃、どんな過ごし方をされていましたか?」と尋ねると、「月曜日はピアノ、火曜日は公文、水曜日は体操教室、木曜日は学習塾、金曜日は水泳、土曜日は理科実験教室、日曜日はボーイスカウト」といったように、たくさんの習い事をさせていたり、低学年のうちから塾に通わせていたりすることがとても多いのです。

教育熱心な親御さんと頑張り屋さんの子ども。こういう子はみんな低学年まではいい成績をとり続けますが、4、5年生あたりから「あれ? なんかおかしいな」というご家庭が出てきます。一生懸命勉強をしているのになぜか成績が伸びにくくなってくるのです。本人は努力しているのに、伸び悩んだまま入試を迎える子も少なくありません。

一方で、学年が上がるにつれてグングン伸びる子がいます。中学受験の勉強が始まった頃は、「授業のスピードが速すぎてついていけない!」「こんなにたくさんの宿題はできない!」ともがいていたのに、一度ペースをつかむと、別人になったかのように、メキメキと頭角を現すのです。そして、あれよあれよと成績が上がり、入塾時には考えられなかった難関校にひょいっと合格してしまうこともあります。

■夢中になると「学びのセンサー」が全開に

この違いは何かを考えてみたとき、私はこれまでたくさんのご家庭を見てきた経験から、一つのことに気づきました。それは、小さい時にどれだけ夢中になれる体験をしてきたかどうかが、とても大切だということです。

4年生の段階では、勉強のペースがつかめなかったヒロキくん。お母さんに話を聞くと、小学校低学年までは勉強は学校の宿題だけで、あとは毎日外遊びをしていたと言います。家に帰ってくると、いろいろな虫を捕まえてきては「この虫の羽根、キレイな色をしているでしょう」と得意気に見せていました。それを見たお母さんは「わぁ、ほんとね。この虫なんていう名前なのかしら?」と、一緒に図鑑を広げて調べていたそうです。

子どもは楽しくて夢中になれるものに対しては、学びのセンサーが全開になります。ヒロキくんにとって虫取りは「遊び」でも、目の前にあるいろいろなことに興味を持ち、それを知りたいと行動に移し、自分の知識として蓄えてきた。このことが、のちの勉強へとつながっていったのです。

■たっぷり遊んだ子には「強い心」が備わる

例えば、塾で理科の生物を勉強したとき、先生の話を聞きながら、「あっ! あのときに見つけた虫にはこういう特徴があるから、このグループなのだな」と理解が深まる。このように、自分の体験とつながってくるからおもしろく感じるし、頭にも残りやすくなります。塾に通い出した当初は、テキスト主体の勉強に慣れずに戸惑っていたヒロキくんでしたが、勝手がわかってくるにつれて大きく伸びたのは、この「生きた理解」があったからです。

そして、もう一つよかったのは、親御さんが夢中になるわが子の姿を温かく見守っていたことです。もし、ヒロキくんのお母さんが「虫なんて捕まえていないで、勉強しなさい!」と言っていたら、ヒロキくんはここまで伸びなかったでしょう。子どもはお母さんとお父さんが大好き。親の愛情を感じながら、自分が好きなことをして遊ぶというのは、子どもにとって何よりの安心感と幸福感をもたらします。

こうしたプラスの感情をベースに持ちながら幼少期にたっぷり遊んで学んだ子は必ず後伸びします。幼少期に「満足がいくまで遊んだ」「納得がいくまでやり遂げた」といった経験をしてきた子は、たとえ途中で壁にぶつかっても「自分ならなんとか乗り越えられる」という強い心が後押しします。そして、ここぞというときに、ものすごい集中力を発揮するのです。

■子どもには「ぼーっとする時間」が必要

近年の教育では、知識を中心とした学力だけでなく、考える力や表現する力も求められ、子どもが小さいうちから「いろいろな体験をさせることがいい」という流れになっています。すると、幼少期にたくさんの習い事を詰め込んでしまいがちです。

習い事をさせること自体はいいのですが、やらせすぎは注意が必要です。というのは、子どもには何もしない「ぼーっとする時間」が必要だからです。

子どもは何かを学んだ後に、今やったことを振り返る時間が必要です。大人から見ると、ただぼーっとしているように映るその時間に、「今日、習ったクロールの泳ぎ方、先生は指先をこうやるように言っていたなぁ~」「今日教わった英語の歌。お父さんとお母さんにも教えてあげよう。えーっと、はじめは何だっけ?」といった感じで、学んだことを振り返り、反復してイメージトレーニングをします。そうすることで、学んだことを消化し、吸収していくのです。

ところが1週間のスケジュールが習い事でいっぱいだと、詰め込むばかりで振り返る時間がありません。すると、せっかく学んだことが自分のものとして十分身に付かないのです。いろいろ学んでいるはずなのに、ただこなしているだけの毎日で、忙しさからくる疲労感だけが募っていきます。

■特別なことをしなくても「起きている時間」は学びの時間

中学受験の勉強でも同じことが言えます。たくさん勉強をすれば、成績は伸びていくはずと、あれもこれもとやらせてしまう親御さんがいますが、やらせすぎは要注意。子どもには学んだことを振り返る時間が必要なのです。

中学受験をムリなく成功させる秘訣は、親が何でも引っ張っていくのではなく、子ども自らが自然に学ぶ姿勢になっていること。どんなことでも学べる意識と環境をどう整えてあげられるか、親御さんの関わりがポイントになります。

とっかかりになるのは、幼少期の頃からのいろいろな体験です。でも、今お伝えしたように、1週間のスケジュールを習い事でいっぱいにしてしまうと、子どもは忙しいばかりで、自ら学ぶ姿勢を育むことができません。「体験をさせる」というと、何か習い事をさせたり、どこかへ連れていってあげたりしなければと思ってしまう親御さんは少なくありませんが、特別な機会を用意しなくても、子どもにとっては「起きている時間はすべて学びの時間」です。

■親の声がけで子どもの好奇心が育つ

小さい子どもはみんな好奇心の塊。目にするもの、手にするもの一つひとつに関心を抱きます。そのときに、親御さんも一緒になって、「わぁ、これはおもしろいね!」「なんでこんな形をしているんだろうね?」「なるほど、よく考えてできているね」と一緒になっておもしろがったり、感動したりすると、がぜん子どもの心の動きが変わってきます。

こうした親御さんのちょっとした声かけによって、子どもはいろいろなことに好奇心を持ったり、疑問を持つ習慣をつけたり、「何という名前なんだろう」と知識欲を持ったり、発見の喜びを味わったりといった学ぶことの楽しさを知るのです。幼い時に「知らないことを知るのは楽しい」「答えがわかると気持ちがいい」という体験をたくさんしておくと、勉強に対する抵抗感がなくなります。

しかし、こうしたやりとりは親御さん自身の気持ちに余裕がなければ難しいもの。1日のスケジュールをギチギチに詰め込んでしまうと、予定通りにやらせることばかりに気が向いてしまい、子どもと一緒に感動したり、疑問に思ったりする余裕はないでしょう。特に最近の親御さんは共働き家庭が多く、毎日の生活を回していくだけでも大変です。そんなときはムリをせず、日常のあらゆるシーンを遊びに変えて、学びの場にしてしまうといいでしょう。

■一緒に買い物をして「暗算王」をめざす

おすすめはお手伝いです。料理、洗濯、掃除、買い物……、お手伝いには学べることがたくさんあります。例えば料理なら、切りやすい野菜や肉を切ってもらう。ハサミと違って、ナイフで固形物を切ると、その断面図を知ることができます。また、ハンバーグをこねるなどの作業は子どもにとっては遊びそのもの。「じゃあ、家族5人だから5つに分けてみよう!」と仕上げを一緒にやると、“分ける”という感覚を身に付けることができます。

買い物に付き合ってもらうのもおすすめです。買い物は合計金額や値引き額を教えてもらったり、予算を決めて何が買えるかを考えてもらったりと、計算力を高める絶好のチャンス。事の是非は別にして、消費税が10%に上がりました。子どもにとっては計算しやすくなったわけですから、増税分を少しでもわが子の成長に生かしてやりましょう。軽減税率まで考慮に入れたら暗算王間違いなしです。

また、スーパーマーケットは商品の特徴によって生鮮食品コーナー、乾物コーナーといったカテゴリーに分かれています。実は、このカテゴリーに分けて覚えるというのは、学習上とても大切です。

例えば理科の植物分野では、花のつくりや実のできかたによってグループが分かれます。グループに分けるという頭の使い方には抽象化能力が必要であり、まとめる力や共通点や相違点を見つける力が養われるのです。このようにお手伝いは学びの宝庫です。

■お手伝いの段取り力が中学受験で差をつける

お手伝いをさせるメリットは他にもあります。それは、段取り力を身に付けられることです。

家事というものは常に時間に追われます。7時に夕飯を食べるには6時にごはんの支度を始めなければいけない。そのためには5時までに買い物に行かなければいけない、といったように逆算して考える力が求められます。この段取り習慣を早いうちから付けられたら、子どもの生活はうまく回っていくし、何よりも親御さん自身がラクになります。

特に時間が限られている中学受験では、この段取り力が大きな力を発揮します。私のこれまでの指導経験から見ても、勉強ができる子はたいてい段取り上手です。段取り上手な子は、目標を達成するには何をどのように進めればいいか逆算して考えられます。もちろん、小学生なのですべてを任せるのは難しいですが、スケジュールを意識できることは、中学受験における大きなアドバンテージになります。

■「関わり方」を工夫すれば学びの土台ができる

小川大介『5歳から始める最高の中学受験』(青春出版社)

こうして見ていくとお分かりのように、中学受験でグングン伸びていく子の土台づくりは、幼少期に何か特別な習い事をしているかどうかではないのです。そんなことより大事なのは、子ども自身が持つ自ら育つ力をうまく引き出してあげること。日々のちょっとした関わりを工夫することです。

お子さんの興味を引くような声かけをしたり、日常のあらゆるシーンで遊びながら学びにつなげてあげたりするだけで、子どもは自分で伸びてくれます。親御さんがムリに頑張る必要はないし、子どももムリする必要はありません。

ただちょっとした関わり方の知識を持って、日常を親子で楽しく過ごしているだけで、学びの土台ができていきます。幼少期にこの学びの土台をしっかり作ることができれば、子どもは自らの力でグングン伸びていくのです。

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小川 大介(おがわ・だいすけ)
教育専門家・「かしこい塾の使い方」主任相談員
京都大学在学中より大手塾で看板講師として活躍後、中学受験プロ個別指導塾を創設。6000回を超える面談を通して子どもが伸びる秘訣を見出す。受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評があり、幼児教育から企業での人材育成まで幅広く活躍中。『1日3分!頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)など著書多数。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」

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(教育専門家・「かしこい塾の使い方」主任相談員 小川 大介 構成=石渡 真由美)

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