箕輪厚介が「会社員」を辞めないこれだけの理由
プレジデントオンライン / 2019年10月28日 15時15分
■誕生日のサプライズに激怒した理由
【栗原】箕輪君はツイッターのフォロワーも多いよね。何人くらい?
【箕輪】いま15万人はいます。オンラインサロン(箕輪編集室)が800人くらい。そこに入っている人たちは、僕が何かやるときに一緒に面白がってくれる移動可能な資産です。僕はいま幻冬舎で本をつくっていますが、その対価は給料じゃない。本を出すことで、ブランドという資産を貯金して、そのブランドを外で使って、稼いだり活動している感覚ですね。
そう言えば、この前、誕生日にサプライズされて怒ったんです。
【栗原】どういうこと? ドン引きするくらい怒ってたのはツイッターで見たけど(笑)。
【箕輪】カラオケ屋で小学校や高校時代の友達から、起業家の友達、アーティストの友達、総勢20人くらいが待っていた。その後も30分おきにサプライズゲストが来てくれましたが、僕は「こういうの要らないから」と言って。まわりの空気は完全に凍っていました。
その場ではうまく言語化できなかったんですが、そのあとnoteに僕が怒った理由をめっちゃ細かく書きました。だから実際は怒っているというより、自分の違和感をしっかり詳細に覚えておきたいという感じ。多くの人はスルーするけれど僕はこう思うって感覚が企画の種になったりするので。
■お金にならないものこそ全力でやる
【栗原】僕は人を驚かせることが好きで、贈り物や差し入れにも凝るほうだけど、相手が怒るようなサプライズはやらないなあ。先日、この業界で一緒に長くやってきた相棒が50歳になったから、サプライズパーティーをやりました。60歳の還暦祝いだと、お疲れさま感があるでしょ。僕らはまだ現役だから、50歳がいいなと。そこで相当に手の込んだことをやったけど、彼は涙流して喜んでくれた。
【箕輪】どんなお祝いをしたんですか?
【栗原】関係者からお祝いコメントをもらってきただけですよ。ただ、とことんやりました。彼は再婚なんだけど、元嫁や息子のところまで行って撮ってきたからね。息子さんはたまたま幻冬舎で。そのことだけは聞いていたから、代表電話にかけて取り次いでもらい、「お父さんと会ってないよね。ちょっとサプライズしたいんだけど」と交渉。会議室を押さえてもらって撮影してきました。他にも出身地の秋田県まで行って、「あいつ今何してる?」のノリで同級生や初恋の女性からコメントを取ってきたり、秋田県から引っ越していたお母さんを追って埼玉県の実家まで行ったり、AD時代お世話になった恩人を探して会ってきたり……。
【箕輪】それはすごい。元嫁が出てきたら怒る人もいると思うけど、そこまで時間とコストをかけてやってくれていたら納得ですよね。
【栗原】テレビ番組として成立するくらいのクオリティでしたね。本人は喜んでくれたし、会の出席者がいろんなところで話してくれて、「なんか、また面白いことやったらしいね!」と業界内で噂(うわさ)になった。狙ってやったわけじゃないけど、なんでも全力投球でやると、たまにいいことがある(笑)。
【箕輪】お金にならないものこそ全力でやると、レバレッジがかかるというか、噂になってあとで自分に倍になって返ってきますよね。まさにそれが“信用を貯金する”ことなんだと思います。
■サラリーマンを辞めたら犯罪者かアル中に
【栗原】箕輪君くらい信用があれば独立してもやっていけるけど、会社を辞めるつもりはないの?
【箕輪】会社は2週間に1回くらいしか行っていません。パソコンを使わなさすぎたらログインできなくなっていて、行ってもやることがないんです。たまに脅迫の電話がかかってきたり、変な人が来たりもするので(笑)。
【栗原】経費とか、どうしてるの?
【箕輪】ぜんぜん精算してないですね。読者イベントとかやると、30万円くらいかかるんです。あと本の宣伝物やツイッター広告も自腹でやっているので、月給だとよく赤字になってます。
でも、いいんです。僕にとって幻冬舎で本をつくるのは仕入れのようなもの。いまオンラインサロンを開いたりテレビのコメンテーターをやってますが、そこで話すネタがあるのは、編集者として面白い著者と出会っているからです。そこはむしろ自分がお金を払ってでもやりたいことなので、経費精算はあまり気にしませんね。
【栗原】でも、面白い人と会うことはフリーでもできるよ?
【箕輪】きちんとした人はできるでしょうね。ただ、僕は会社員という制約がないと頑張れない。本をつくるのって面倒なんですよ。だからフリーになったら年に1冊くらいお茶を濁してつくって、あとはイベントやったり講演会でごまかしながらやっていくようになるんじゃないかと。2、3年はそれでやっていけても、やっぱりコアのところがないとダメ。そのうち弾切れになって、犯罪者になるかアル中になるのが目に見えてます(笑)。
■ギリギリのこと、過剰なことをやればいい
【箕輪】そういう栗原さんは、どうして日テレを辞めないんですか?
【栗原】僕は箕輪君より会社に行ってるけど……(笑)。ちょうど箕輪君くらいの年齢のときの上司が、「ガースー」の愛称で知られる菅さん(菅賢治)でね。菅さんは「栗原はアーティストだから、もっと自由にさせろ。経費精算しろなんて言うな」とみんなに言ってくれてね。おかげで居づらくはなかった。
【箕輪】いいですね。理想の上司です。
【栗原】菅さんから言われたのは、「刑務所の塀の上を歩くようなギリギリのことをやってもいい。ただ、向こう側にだけ落ちるなよ」ということだけ。おかげで伸び伸びやらせてもらって、いまの「笑ってはいけない○○」の原型になる番組もつくれました。きっと幻冬舎の見城さんも菅さんと似たタイプだよね。
【箕輪】そうですね。ルーティンでやって企画を置きにいったときは「それ、意味あんのか」と怒られますが、過剰なことをして怒られたことは一度もないです。
■「理解ある上司がいない」は言い訳。「準備」してないだけ!
【栗原】会社の後輩から「自分には理解してくれる上司がいない」と相談を受けると、まず「君がやりたいと思ってることをちゃんと言ってるのか」と聞くようにしています。日テレとフジは、キャリアの積ませ方が正反対です。フジは本人の思いを尊重して新人を第一志望の部署に配属させますが、日テレはあえて別の部署に配属させます。それでも「俺はドラマをやりたいんだ」と企画を10年出し続けた人には異動のチャンスを与えるんです。
実は僕は報道記者志望で、国会前で中継リポートしたくてテレビ局に入りました。結果的に僕はバラエティやドラマが合っていたからよかったけど、もし報道志望のままなら、やっぱり異動希望を言い続けていたと思う。心の中にいくら強い思いがあっても、それを伝えなきゃ届かないですから。
【箕輪】同感です。10年前なら、「まわりに理解者がいない」という言い訳も通用したと思います。でも、いまはSNSの時代。匿名でも何でも、本当に面白いことを発信していたら、誰かが見つけて引き上げてくれます。たとえば「¥マネーの虎」みたいな企画を思いついたとしたら、スマホで撮ってアップしてみればいい。それが尖ったものなら、誰かが面白がって「あいつはセンスがあるから機会を与えてみよう」となりますよ。
クリエイティブなことだけじゃなくても、チャンスなんて転がってます。大体、チャンスがないんじゃなくて「準備」してないだけ。もし会社の中に自分が好きな商品があって、売れないのを嘆いているなら、「無料でいいんで営業やらせてください」と言えばいい。それで売り上げが3倍とかになったら、勝手に噂になって引き抜きがきたりしますよ。
確かにクズみたいな会社も存在するから、辞めた方がいいケースがあることは事実です。でも、大体はそれ以前の問題。世の中に対して、自分の価値を表現し続けているのか。まずはそれを問うことが大事ですよね。
【栗原】そう、それが仕事でもプライベートでも大事なことで、人生の「準備」なんです。
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幻冬舎・編集者
1985年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2010年双葉社に入社。ネオヒルズとのタイアップ企画『ネオヒルズジャパン』を創刊し3万部を完売。その後も、『たった一人の熱狂』『逆転の仕事論』などの編集を手がける。15年幻冬舎に入社後、NewsPicksと新たな書籍レーベル「NewsPicksBook」を立ち上げ、『多動力』『メモの魔力』『日本再興戦略』など、編集書籍は次々とベストセラーに。18年8月、自身の著書『死ぬこと以外かすり傷』を発売。一方で、自身のオンラインサロン「箕輪編集室」を主宰、メンバーは800名を超える。「スッキリ」「ビートたけしのTVタックル」「5時に夢中!」などのテレビ出演多数。
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日本テレビ 演出・プロデューサー
北海道札幌市出身。93年日本テレビ入社。「さんま&SMAP美女と野獣スペシャル」「伊東家の食卓」「ぐるナイ」「行列のできる法律相談所」「松本人志中居正広VS日本テレビ」「踊る!さんま御殿」「中居正広のザ・大年表」など、数多くのバラエティー番組を手がける。企画・総合演出・プロデュースした『¥マネーの虎』は、日本で放送終了直後、海外へ輸出。現在世界184の国と地域で放送される。著書に『すごい準備 誰でもできるけど、誰もやっていない成功のコツ!』(アスコム)。
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(幻冬舎・編集者 箕輪 厚介、日本テレビ 演出・プロデューサー 栗原 甚 構成=村上 敬)
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