「3割負担」より安く済む自由診療ができるワケ

プレジデントオンライン / 2019年11月20日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokouu

病気の早期発見で受ける「検診」は、多くが保険が効かない。このため、「自覚症状があるとウソをついたほうがいい」と言われる。本当だろうか。予防医療に力を入れるMYメディカルクリニックの笹倉渉院長は、「保険診療だから安く済むとは限らない。自由診療でも3割負担より安く済む場合もある」という――。

■検診で自覚症状をでっちあげるとおトクなのか?

通常、がん検診など、特定の病気を早期に発見するための「検診」は自費負担となりますが、例外もあります。例えば女性が「胸にしこりがある」といった自覚症状があって乳がん検診を受けることになった場合には、保険適用で3割負担となります。検診の結果がどうであれ、保険が適用されるのに変わりはありません。

自覚症状の有無は申告があるかないか、それが全てです。患者がなんらかの不調を訴えているかどうかで10割負担か3割負担かが決まるのですから、自覚症状をでっちあげればおトクになるのではないか、と考える方も多いでしょう。

しかし、実は必ずしもそうとはいえません。たしかに自覚症状を訴えることによって検診を保険適用の3割負担で受けることは不可能ではありませんが、実は自分が加入している健康保険や居住する自治体が無料検診を提供しており、そもそもその3割の自己負担すら支払わなくて良い可能性があるからです。

まれに医師の診断を得るために「自覚症状」とされる症状を詳しく調べ詐病を行ういわば「プロ患者」の方がいますが、それよりも公的医療保険の仕組みや、保険診療と自由診療の違いを知った方がおトクだといえるでしょう。

■自分がどんな健康保険に入っているか把握しているか?

そもそも、保険診療というものがどんなものであるのか分かっていない方が多いのではないでしょうか。

保険診療では、各疾患に応じて検査や治療内容等が決められており、その制限内での治療が行われます。医療費は通常、診療費用の3割を支払うことになります。

自営業や無職の方など、職場の健康保険に入っていない人が加入する「国民健康保険」は、都道府県が主体となり運営しています。検診は地域の医師会が行うことになり、自治体が定めるもののほか、受けられる補助もあまりありません。

一方、会社員の方が加入する職場の健康保険は、「労使折半」といって、会社と従業員が保険料を折半するシステムになっています。

この職場の健康保険の種類は、実は会社によって異なります。通称「協会けんぽ」と呼ばれる全国健康保険協会や企業が組織するそれぞれの健康保険組合の健康保険が一般的ですが、企業によっては、「単一健保」といって自社だけの互助会のような健康保険を作っているところもあります。

給料から保険料が天引きされるシステムなので自分の加入している健康保険がどんなものなのか意識する機会はなかなかないかもしれません。しかし、自分がどのような健康保険に加入しているかは、知っておいて損のない情報であるといえるでしょう。

■自由診療が保険診療よりも安くなる場合もある

例えば健康診断は、労働安全衛生法によって、会社が年に一度従業員に受けさせなくてはならないと定められています。しかし、実は従業員にどのような検診を受けさせるのかは、健康保険組合や企業によって異なっています。財政的に余裕のある健康保険組合や企業では、従業員が提携医療機関を利用することで人間ドックを無料で受けられるようにしている例もあります。

がん検診などの検診についても同様で、一定年齢以上の社員には、健康診断の際、希望者に無料でがん検診や胃カメラを受けさせる企業もあります。

健康診断や検診、予防接種など、自由診療で行われるものに関しては、それぞれの健康保険組合が被保険者向けに補助を設けることができるのです。福利厚生の一環ともいえるでしょうか。例えば、最も加入者の多い「協会けんぽ」では、40歳以上の偶数年齢の女性は無料で乳がん検診が受けられます。

症状を訴えて保険適用で検診を受けることを狙うより、まずは自分の加入している健康保険について調べる方が賢いといえるでしょう。

また、保険診療と自由診療の違いについても知っておいた方がおトクです。場合によっては、保険診療より自由診療を選択した方が安く、希望に応じた診療や検査を受けることができます。

保険診療の場合には、それぞれ行っている医療行為に関して、診察費・検査費などの費用がかかります。自由診療の場合には、同じ診察などの医療行為をを行いますが、当院の場合のように検査費だけしか受け取っていない医療機関などもあります。結果として、保険適用の3割負担よりも低額になる検査もあります。

自由診療は各病院が価格を決定しているので、価格競争のため、実際には診察を行っていても診察費を取らないケースも少なくないのです。

■保険診療は融通がきかず結果的に高くつくケースも

保険診療では各疾患に応じて検査や治療の内容が事細かに決められており、同日に複数の検査を行えないなどの制限があります。治療行為が保険診療となるかどうかは、医師の書いた「レセプト」というものを元に、支払基金という機関が最終的に可否を決める仕組みとなっています。

そのため、保険診療では胃カメラと大腸カメラを同日に行えなかったり、他の性病が発見されなければHIV検査を受けることができなかったりといった制限があります。

仕事を何日にもわたって休み病院に通うよりも、自由診療で1日に複数の検査を受けた方が時間もお金も節約できるというケースもあるでしょう。

また、保険診療では、安価な検査から段階的に行うことになっているため、初めから精度の高い最新式の検査を受けたい、徹底的に病気のリスクがないか確かめたいということであれば、自由診療を選択した方が良いかもしれません。

例えば乳がん検査で最も精度が高いのは、造影の磁気共鳴画像装置(MRI)検査です。

しかし、「胸にしこりがある」という自覚症状を訴えて保険診療で受診した患者の場合、まず視触診を行い、その後にマンモグラフィーや超音波などの安価な検査を順に行うことになります。その上で、必要と認められればMRI検査を受けることができるというのが通常の診療となります。

保険診療の3割負担で順を追っていくつもの検査を受ける場合と、自由診療の10割で初めから高額な検査を1つ受ける場合とでは、結果として後者の方が安価に済む可能性もあります。

■若い医師が多いところは良い医療を行っている確率が高い

これからは個別化医療の時代です。現在の日本の制度では保険診療と自由診療を組み合わせることはできないため、初診の前に、医療保険制度についての知識をしっかり持った上で、保険診療と自由診療のどちらが自分に適しているのか、判断する必要が出てくるでしょう。

また、医療機関によって有する設備や機材、技術が異なるため、どの医療機関を利用すればよりクオリティの高い医療行為を受けることができるのか、見極めることをおすすめします。例えば同じCTスキャンでも、機材によって精度が全く異なることもあります。

新しい機材を導入していて受診者数の多い病院の方が、情報が新しく、保険診療のなかでも新しい医療を受けられる可能性があるでしょう。

また、向上心の高い若い医師ほど、良い環境で勉強して実力をつけたいという意識があります。10年目くらいの医師は、身に付けた知識を活用する術を知っている世代になります。したがって、10年目前後のある程度若い医師が多く在籍している病院というのも病院選びの一つの基準となるでしょう。

保険制度や医療について適切な知識を持つことで、より上質な医療行為をおトクに受けることができるといえるのではないでしょうか。

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笹倉 渉(ささくら・わたる)
MYメディカルクリニック院長
2006年藤田保健衛生大学医学部卒業。公立昭和病院での初期臨床研修修了後、東京慈恵会医科大学附属病院で麻酔・救急医療に従事。「健康を支える手立ては第一次医療である健康管理にあるのではないか」と考え、2016年にMYメディカルクリニックの院長に就任。企業健診を軸とした予防医療に取り組む。

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(MYメディカルクリニック院長 笹倉 渉 構成=梁 観児)

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