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「ほんの1分」でもスマホを触る人は脳が危ない

プレジデントオンライン / 2019年11月26日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tommaso79

最近、「もの忘れ外来」にスマホのヘビーユーザーがたくさん訪れているという。医学博士の奥村歩氏は「スマホが手放せない人ほど脳が疲れて、もの忘れやうっかりミスが増えてしまうのだろう」という——。(第4回/全5回)

※本稿は、奥村歩『「朝ドラ」を観なくなった人は、なぜ認知症になりやすいのか?』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■「スマホ脳」とは何か

私が経営しているクリニックに設置した「もの忘れ外来」には、脳疲労や脳過労(脳が疲弊してしまった状態)の方も数多くいらっしゃいます。じつは、そうした患者さんの中にはスマホ、タブレット、パソコンなどのヘビーユーザーがとても多いのです。

こうした方々のほとんどは、スマホなどの機器に接している時間が非常に長く、ネットを通してひっきりなしに多くの情報をインプットしています。すなわち、インプットする情報量の膨大さに脳の処理能力がついていけず、連日連夜のオーバーワークで脳を疲弊させてしまっているのです。

私は、こうした「スマホなどの過剰使用で疲れきってしまった脳」を「スマホ脳」と呼んでいます。

スマホ脳になる人には、ごく一般の主婦やサラリーマンも少なくありません。なかには以前から「スマホ依存」「ネット依存」の傾向があった人もいますが、むしろ、以前はちゃんとメリハリのある普通の生活をしていたのに、いつの間にか「スマホの情報漬けの世界」にずぶずぶとハマり込んでしまっていたというケースが目立ちます。

■1分でも空くとスマホを取り出す人はスマホ脳かも

たとえば、みなさんは次の項目に心当たりはないでしょうか。

□ほんの1分でも時間が空くと、すかさずスマホを取り出すのが習慣になっている。
□食事中やお風呂、トイレに行くときもスマホを手放さない。
□スマホは「いつでもすぐ手にとれる場所」に常にスタンバイしてある。
□深夜にネットショッピングをしたり、ネット情報をサーチしたりすることが多い。
□SNSへの投稿をしていて、自分がアップした内容が他人からどう評価されたかが常に気になっている。
□「自分が情報に乗り遅れること」や「みんなが知っている情報を自分だけ知らないこと」に対して不安や恐怖を覚える。
□スマホの着信音やバイブレーションの「空耳」が聞こえるときがある。
□夜、寝床に入ってからもスマホをいじっている。

上のリストを見て、「これ、自分にも当てはまるかも」という項目が多い人ほどスマホ脳のリスクが高いことになります。

■情報のインプットばかりだと脳も“メタボ化”する

私は、スマホ脳とは、脳が「情報メタボ」に陥ってしまった状態だと考えています。

そもそも脳という器官は、インプットした情報を考えたり吟味したりしたうえで、判断や行動としてアウトプットすることで機能しています。分かりやすくたとえるなら、インプットが「食事」であり、それをもとにして行なうアウトプットが「活動」や「運動」だと思ってください。

ところが、スマホ脳の状態になると、日々過剰な量の情報インプットがあるのに対して、それらの情報をもとにして行なうアウトプットが極端に少なくなる傾向があります。

すなわち、食事が多いのに活動や運動が少なければメタボになるのと同じように、情報インプットばかりが多くてアウトプットが少ないため、脳が「情報メタボ」のような状態に陥ってしまうわけです。

そして、こうしたインプットばかりが多いアンバランスな状態が続くと、脳の疲弊が進みやすくなるのです。具体的に挙げると、前頭葉の機能が低下して、思考力や判断力、集中力、意欲、コミュニケーション力などが鈍ってきます。

また、もの忘れやうっかりミスが増えたり、会話の反応スピードが落ちたり、つまらないことに固執したりするようにもなります。さらに、感情のコントロールがうまくいかなくなり、急に怒り出したり突然塞ぎ込んで泣き出したりすることもあります。

それに、ネットやSNSの他人の言動に影響されて、突飛なことを言い出したり場違いな行動をとったりするようになる場合も少なくありません。

SNSに匿名の投稿や書き込みをしている人の中には、自分の意見と相容れない特定の個人を執拗に攻撃したり、他人の書き込みにいちいち感情的になって振り回されたりしている人も目立ちます。

このように、スマホ脳に陥って頭の中が「情報メタボ」になってしまうと、実にさまざまな脳疲労・脳過労の症状が現われるようになるのです。

■まずは「寝る前のスマホ使用」をやめることから

では、いったいどうすればいいのか。

奥村歩『「朝ドラ」を観なくなった人は、なぜ認知症になりやすいのか?』(幻冬舎)

スマホ脳は、スマホやパソコン、タブレットなどの過剰使用によって起こるわけですから、まずはこうした機器を意識的に遠ざけなくてはなりません。

先に述べたような「デジタル・デトックス」や「スマホ断ち」ができればいいのですが、依存傾向が強い人はなかなか距離を置くのが難しい場合もあります。

そういう場合は、「せめてベッドやふとんの中ではスマホをいじらないようにする」ことをおすすめします。

就寝時のスマホ使用は、不眠や睡眠不足を招く大きな原因となります。実際、スマホ脳の人はほぼ100%睡眠に不調を抱えていると言っていいでしょう。それに、先に挙げた脳疲労や脳過労の一連の症状も、質のよい睡眠を十分にとれていないことが非常に大きな要因となっているケースが多いのです。

■段階を踏んで少しずつスマホ離れをする

ですから、ふとん内にスマホを持ち込まないようにするだけでも、脳の疲労症状はだいぶ違ってくるはず。それをクリアできたなら、「食事中とトイレのときはスマホを見ない」「就寝前2時間はスマホをいじらないようにする」「自分にプラスにならないSNSはやめる」といったように、段階を踏んで少しずつスマホと距離を置き、使用頻度を減らしていけばいいのではないでしょうか。

とにかく、近年はスマホによって脳疲労・脳過労をこじらせる人が目立って増えてきています。

いまは誰もがスマホによって無限の情報とつながれる時代であり、誰もが「情報メタボ」の落とし穴にハマる可能性があるのです。決して他人事ではありません。みなさんも「いつ自分が落とし穴にハマってもおかしくないんだ」ということをしっかりと肝に銘じておいたほうがいいでしょう。

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奥村 歩(おくむら・あゆみ)
医学博士
1961年生まれ。おくむらメモリークリニック院長。岐阜大学医学部卒業、同大学大学院博士課程修了。2008年に「おくむらクリニック」を開院し、設置した「もの忘れ外来」ではこれまでに10万人以上の脳を診断した。著書に『脳の老化を99%遅らせる方法』(幻冬舎)、『あなたの脳は一生あきらめない!』(永岡書店)など。

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(医学博士 奥村 歩)

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