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「正義マン」や「マナー警察」の老後が心配なワケ

プレジデントオンライン / 2019年11月27日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

正義を盾に有名人のマナーを批判する「マナー警察」。医学博士の奥村歩氏は、「そういった人々は、加齢で前頭葉の働きが低下してくると攻撃性が増し、孤立することになる」という——。(第5回/全5回)

※本稿は、奥村歩『「朝ドラ」を観なくなった人は、なぜ認知症になりやすいのか?』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■芸能人のSNSをチェックして「不謹慎狩り」する人々

みなさん「不謹慎狩り」ってご存じですか?

大きな自然災害や事故が起こって社会全体に悲しみが広がっているようなとき、SNSの些細(ささい)な発言や悪気のない行動を「不謹慎だ」と決めつけて、容赦なく批判や誹謗中傷の言葉を浴びせるのを「不謹慎狩り」と呼ぶのだそうです。

言わば、「つらい思いをしている人たちがたくさんいるのに、コイツはなんて配慮のない発言をするんだ、けしからん」と執拗(しつよう)に叩(たた)くわけですね。

それに近頃は、芸能人や有名人のツイッターやフェイスブックが「炎上した」という話もよく耳にします。なかには、自分で“放火”して炎上させている人もいるようですが、大多数の場合は何の他意もなくつぶやいたひと言を見ず知らずの他人から「揚げ足」をとるようにクローズアップされ、ああだこうだと批判されたり叩かれたりしていることが多いようです。

きっと、普段から芸能人や有名人のSNSをくまなくチェックして、「不道徳な行ないをしてはいないか」「不適切なことを言ってはいないか」と目を光らせている人がいるのでしょう。

■「不謹慎狩り」をする人は正義心が強い

何事においても「○○すべき」「○○しなくてはならない」と考えて、自分をがんじがらめに縛ってしまう思考法を「シュド思考」といいます。私は、こうした「不謹慎狩り」や「有名人の発言狩り」をする方々も、「シュド思考」に縛られていると見ています。

おそらく、こういうことをする方は、もともと正義心や道徳心が強く、「○○でなければならない」「○○すべき」という思いを常に抱いているのです。

しかし、現実の生活では、仕事でも何でもほとんどの物事は自分が思っているような「あるべき方向」には進んでくれません。このため、自分の心の中で不満感や不遇感を大きくふくらませてしまい、その鬱憤(うっぷん)を晴らそうとして、正義や道徳の名のもとに他人を攻撃しているのではないでしょうか。

ちなみに、このようにネットで社会正義のために闘う人たちを海外では「ソーシャル・ジャスティス・ウォーリアー」と呼ぶのだそうです。ただ、この呼び方は揶揄的に使われる場合がほとんどで、「安っぽい正義感を振りかざして独善的な考えで他人を攻撃する人たち」のような意味合いが込められています。

■前頭葉の働きが低下すると攻撃性が増す

また最近は、有名人のマナーを批判する「マナー警察」、礼儀作法を批判する「礼儀作法監視官」のようなウォーリアーもいるのだそうです。実際には、こういうウォーリアー的発言をするのは、ごく少数の人たちなのでしょうが、ネットだと尖った発言や批判がどんどん拡散されていく傾向があるため、あたかも多くの人が言っている意見であるかのように広まっていってしまうのでしょうね。

ともあれ、私は、このようにネット上で他人の落ち度を探し、隙あらば攻撃しようと狙っているような人は、たとえいまは年齢が若くても、歳を重ねるうちにより脳を衰えさせやすくなっていくだろうと見ています。

とくに気をつけたいのは、前頭葉の機能低下とともに、不満感や不遇感をどんどんふくらませてしまいかねない点です。加齢とともに前頭葉の働きが低下してくると、理性や感情をコントロールする機能が落ちてきます。

すると、「○○でなければならない(のにそうならない)」「○○すべき(なのにできない)」といった日頃の鬱屈した不平不満がより爆発しがちになって、他人への攻撃性がいっそう先鋭化していくと考えられるのです。

■「不謹慎狩り」をする人は寂しい老後が待っている

「キレる老人」「困った老人」もこうしたパターンで不満感や不遇感をつのらせたあげく、周囲に迷惑がられる存在になっていくことが多いのですが、「不謹慎狩り」「有名人の発言狩り」をするような人もいずれ同じ道を辿っていく可能性が高いというわけですね。

つまり、常日頃からネット上の他人の言動や社会の在り方に目を光らせて不満感や不遇感をつのらせているような人は、そのまま歳を重ねていってしまうと、いずれ人間関係に支障をきたしたり社会的に孤立したりして、寂しい老後を送らざるを得なくなるかもしれないのです。

ですから、思い当たる人はいまのうちから気をつけてください。「シュド思考」は、別名「ねばねば思考」とも呼ばれます。「○○せねばならない」「○○であらねばならない」と「ねばねば」のロープで自分を縛ってしまっているわけですね。

■「ねばねば」から「するする」へ思考を変える

奥村歩『「朝ドラ」を観なくなった人は、なぜ認知症になりやすいのか?』(幻冬舎)

でも、いつまでも「ねばねば思考」をしていると、自分の中の許容範囲をどんどん狭めてしまい、不平不満がうずまく窮屈な迷路から出られなくなって、じりじりと自分を袋小路へ追い込んでいってしまうことになります。

世の中、理屈やルールが通らないこともあります。神経を逆なでされるようなものが目に入ることもあるでしょう。しかし、ときには「ま、いいか」「しょうがないか」「ケ・セラセラ」と笑ってスルーすることも必要なのです。

すなわち、大切なのは「ねばねば」ではなく、「するする」とスルーする力。

肩肘張ってルールに目を光らせているよりも、「するーっとゆるく通過させてしまう」ほうが脳もリラックスできるものなのです。この先の人生、脳をいつまでも衰えさせないためには、そういうゆるさも必要なのではないでしょうか。

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奥村 歩(おくむら・あゆみ)
医学博士
1961年生まれ。おくむらメモリークリニック院長。岐阜大学医学部卒業、同大学大学院博士課程修了。2008年に「おくむらクリニック」を開院し、設置した「もの忘れ外来」ではこれまでに10万人以上の脳を診断した。著書に『脳の老化を99%遅らせる方法』(幻冬舎)、『あなたの脳は一生あきらめない!』(永岡書店)など。

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(医学博士 奥村 歩)

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