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「学習まんが」を与えるなら9歳以上がいい理由

プレジデントオンライン / 2019年12月2日 11時15分

『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史』 - 撮影=後藤 利江

子どもに「学習まんが」を読ませるには、何歳からがいいのか。プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さんは「学習まんがはビジュアルでイメージをつかみやすいので勉強の助けになる。ただし『9歳の壁』を越えている必要がある」という——。

■知識の詰め込みだけでは勝負できない

中学受験組の6年生にとって、冬休みは追い込みの時期。本番ギリギリまで、暗記科目を覚えている小学生の姿を目にする季節でもある。しかし、2020年の大学入試改革を先取りする形で、上位校では思考力を問う記述問題が増加傾向にある。もちろん社会も例外ではない。特に歴史は、人物や出来事の関連性を理解して流れをつかむことが重要で、知識の詰め込みだけでは勝負できなくなっている。

では、6年生になってからジタバタしないために、後に続く5年生以下の受験待機組はどのような学習をすればいいのか。歴史学習まんが「日本の歴史」は、はたして中学受験の勉強に役立つのか。早稲田アカデミー中学受験部社会科担当と、プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さんに話を伺った。

■「歴史の流れ」をつかむことができる

——最近の中学受験における、社会の入試問題の傾向について教えていただけますか。

【早稲田アカデミー中学受験部社会科担当者(以下、早稲田アカデミー)】単純に知識を問う問題だけでなく、歴史資料などの文章や表、グラフ、地図や写真を読み取り、自分で考え、自分の言葉で答えさせる、いわゆる記述問題も出題されるようになっています。

——そのような出題傾向に対応するための学習ツールとして、学習まんがはどのような点で有効だと思われますか。

【早稲田アカデミー】歴史の流れをつかむことで、中学入試で出題される、歴史的な出来事の整序問題や、並び替え問題への対応力がつきます。また、まんがという形態は、それまでに学習した地理分野で社会に苦手意識を持ってしまった子などにとっては、とっつきやすいと思います。今の子どもたちは、活字よりも視覚からの記憶が強いように感じます。

■5年生の9月までには目を通すとよい

——小3の2月から通塾して中学受験の勉強を始める場合、学習まんがは、いつ買い与えてあげたほうがいいでしょうか。

【早稲田アカデミー】多くの進学塾(早稲田アカデミーも含める)は、歴史分野の授業を5年生の後期、9月以降にスタートします。少なくともそれまでには、自分の興味ある時代の学習まんがに目を通しておくとよいと思います。

——子どもが学習まんがに興味を持つきっかけづくりや、歴史に興味を持たせるコツや工夫など、親にできることがあれば教えて下さい。

【早稲田アカデミー】子どもが興味を持つまでは無理に押し付けないことが大事です。東京でしたら、江戸東京博物館や深川江戸資料館のような、歴史のテーマパーク的な側面のある所へ連れて行って、その時の子どもの反応を見て、興味を持ちそうだと思ったら買い与えるといいのではないでしょうか。押し付けると逆効果になることもあります。

■暗記だけでは記述問題の点数が上がらない

続いて、プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さんに話を伺った。

——歴史の記述問題につまずかないようにするためには、どのような学習をしたらいいのでしょうか?

撮影=後藤 利江
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さん - 撮影=後藤 利江

【西村則康(以下、西村)】歴史の勉強は5年生の2学期から始まりますが、受験勉強の追い込みに入る6年生は、社会を後回しにしている子が多いんですね。そういう子はギリギリになって、一問一答式の暗記教材を必死で覚えますが、いくら暗記しても記述問題の点数は上がりません。なぜなら、覚えたことの関連付けができないからです。

地理は4年生から始まって、地形、気候、作物がお互いに深く関わっていることをじっくりと学習する期間が設けられています。その期間に地理を学習する素地が作られます。しかし、歴史は小5の9月にいきなり細かな知識の暗記学習が始まってしまいます。そのために事件や出来事の関係性を聞かれてもパッと答えられない。そもそも歴史に出てくるのは、生活も文化も今とはまったく違う時代のことなので、自分たちとかけ離れすぎていてイメージをつかみにくいのです。

ひるがえって入試問題はどうなっているかというと、特に上位校は、資料や説明文を読ませたうえで、これとこれの出来事の関係性を説明してください、という問いに変わってきている。御三家クラスになると、資料を読み込んで自分の考えを書かせる出題も出てきています。

■学習まんがはビジュアルでイメージをつかめる

——そういった記述問題を克服するためには、歴史の流れを頭に入れておく必要がありますね。早稲田アカデミーさんによると、中学入試で出題される歴史的な出来事の整序問題や、並び替え問題への対応力も、歴史の流れをつかむことで身につくそうです。

【西村】そうですね。知識は文脈の中で覚えなければ意味がありません。歴史上の人物も重要事項も、人間関係や前後の流れを理解して納得したうえで覚えていかないと、すぐ抜け落ちていきます。逆に言うと、流れをしっかりとつかんで、物事の関連性を説明できれば、知識は自然と頭に入ってきて簡単には忘れなくなります。その土台づくりとしておすすめなのが、歴史学習まんがなんですね。

学習まんがのメリットは、ビジュアルでイメージをつかみやすい点です。小学生は子どもによって成長のスピードが異なりますから、文章を読んで意味を理解して、頭で想像したイメージをとらえることができない子がたくさんいます。活字だけ読んでも、納得するところまで落とし込むことができないんですね。

ですから、たとえば理科でも、生物や実験などのわかりやすい絵を描いて説明できる先生が教え方上手だと言われるのです。社会もそれは同じですが、歴史の出来事を動きのある絵に描くのは容易なことではありません。その点、まんがは、プロの絵とセリフで物語として読めますから、遠い異次元のような昔の話でもすんなり入り込むことができるのです。

■人物相関図やイラストが理解の手助けになる

——学習まんがもいろいろありますが『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史』は、単行本と同じ四六判サイズのソフトカバーで、軽くて持ちやすいと好評のようです。西村先生も読まれたことがあるそうですが、いかがでしたか?

【西村】最初に、登場人物の相関関係図があるのがいいですね。次に、カラーページのイラストで、時代の特徴や流れをまとめているので、読み始める前に全体像をつかむことができます。こうした点も含めて、歴史の大きな流れをつかむための工夫が随所に盛り込まれている点が人気なのではないでしょうか。

私も、角川のまんが学習シリーズを夜寝る前に読み始めたら、面白くて眠れなくなってしまいました(笑)。

——今は、動画を観ることに慣れている子どもも増えていますが、映像で歴史ものを見せるのも学習効果が期待できると思われますか?

【西村】確かに、大人も子どもも目にするものが活字から動画に移ってきていますね。ただ、小学生に学習目的の動画を見せると成績が上がるかというと、上がらないのです。目の前で動いている映像を見るだけでは、頭で理解して記憶として定着するところまでいかないのでしょう。

その点、活字の場合は、頭のなかで文字情報から意味情報に変換して、想像をふくらませるという複雑な動きをしていますので、長期記憶につながりやすいのでしょう。まんがは、ちょうどその真ん中だと思います。動画ほどわかりやすくないけれど、活字ほど難しくもないので、イラスト見てセリフの活字も読んで、ちゃんと意味を理解しながら読み進められる。活字と絵で見せるというのは、まだ発達段階にある子どもたちにとても適しています。

■動画が「効く」のは中学生以上

——動画の授業を配信する塾もありますが……。

【西村】動画授業の配信がうまくいっているのは中学生以上で、小学生相手だとなかなかうまくいかないのが塾業界の現状です。中学生以上になると、12年間の知識のストックがありますから、動画で見た新しい情報も頭の中にある過去の知識とつながって、「ああ、なるほど」と理解できることが増える。一方、小学生はまだまだ知識が少ないですから、目で見た情報が知識のストックとなかなかつながらないんですね。

——そういう意味でも、学習まんがは小学生にピッタリなのですね。子どもに買い与えるとしたらいつがベストなのでしょうか。親としては、少しでも早く読んでほしいと思いますが。

【西村】早熟な子の場合は、3年生あたりから読ませてもある程度は理解することができると思います。しかし、精神的な転換期を迎える時期が「9歳の壁」と言われるように、多くの子は小学4年生くらいにならないと、自分と他人との違いを認識することができません。

歴史を理解するためには、自分とは違う歴史上の人物の気持ちや行動を少しでも理解しなければいけない。そして、一人一人の人間の行動が積み重なり、それが複雑に絡まった結果として歴史がつくられている、という感覚を持てるかどうか。これはやはり、「9歳の壁」を越えなければむずかしいですね。

■「ストーリーを追うだけ」では頭に入らない

【西村】仮に、3年生以下の子が学習まんがを読んだとしても、それはストーリーを追っているだけの可能性が高いです。よく「読書好きの子どもなのに、国語の成績が上がらない」という相談を受けますが、それも同じことで、その子は次の展開が気になってストーリーを追っているだけ。登場人物の心情や出来事の意味をすっ飛ばして読んでいるから、国語の設問に対する答えもわからないわけです。ですから、学習まんがも、絵や文章を読み飛ばさずにじっくり読むことが大事ですね。

そういうことが自分でできるようになるために、1、2年生で音読の宿題が出るわけです。あれはものすごく大切な宿題で、音読することでその文章の意味が頭に入ってくるんですね。

——では、文章の意味が理解できる4年生くらいになった時に、学習まんがに興味を持ってもらえるといいわけですね。

【西村】そうですね。中学受験をするお子さんの場合、進学塾で本格的な歴史の学習が始まるまでに、日本の歴史全体を俯瞰しておくことは、大きなアドバンテージになります。

■家の本棚を見れば、子どもがわかる

——タイミングとしては5年生になる前の4年生の冬休み、クリスマスプレゼントやお正月のお年玉で、お子さんに買い与えてあげるのがいいかもしれませんね。ただ、無理に押し付けないのがポイントだと、早稲田アカデミーの先生がおっしゃっています。

【西村】その通りです。私は家庭教師をしていますから、当然、受験生のお宅も拝見するわけですけど、真っ先に見るのが本棚なんです。そこに並んでいる子どもの本や親の本の種類や量をみると、だいたいどういうお子さんかわかる。

『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史』
2020年度からの新学習指導要領に合わせて内容が更新された『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 3大特典つき全15巻+別巻4冊セット』(数量限定)。「学習まんが 日本の歴史」ジャンルで3年連続売上ナンバーワンとなっている 。

勉強ができるお子さんの家の本棚は、並んでいる本のタイトルを見るだけで、何か新しいことを知りたいという親御さんの好奇心が感じられます。でもそれを子どもに押し付けているのではなく、自分自身が楽しんでいらっしゃる。親自身も学びの習慣があるんです。そうすると自然と好奇心や向学心が高まって、本棚にある親の本に手を伸ばすようになります。

——そういう意味では、歴史を学び直したいと思っている親御さんにとっても歴史学習まんがは格好の教材になりますね。お互い感想を言い合ったりして親子の会話が増えると、子どもも歴史を好きになって楽しく学んでくれそうです。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。

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(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康、早稲田アカデミー中学受験部社会科担当 取材・文=樺山 美夏)

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