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失効直前に破棄を取り消す韓国の駄々っ子ぶり

プレジデントオンライン / 2019年11月26日 15時15分

G20外相会議のため会場に入る韓国の康京和外相=2019年11月23日、名古屋市 - 写真=時事通信フォト

■破棄の取り消しは失効期限の6時間前だった

駄々っ子とは聞き分けのない子供のことだ。日本とアメリカがいくら説得を続けても言うことを聞かなかったのに、韓国は土壇場になって折れた。軍事情報を共有するための協定が継続されたことにはほっとしたが、韓国も文在寅(ムン・ジェイン)大統領もわがままな駄々っ子そのものではないか。

韓国大統領府は11月22日、文大統領も出席して国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、8月に日本に破棄を通行した「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA(ジーソミア))」について、失効を回避することを決定し、日本政府に連絡してきた。

回避決定は、失効期限(23日午前0時)の6時間前だった。韓国は半導体材料などの輸出管理をめぐる日韓協議の再開と引き換えに方針を転換し、GSOMIAの破棄を取り消した格好だ。

■「いつでも失効できる」とは思い上がった言い方だ

韓国政府は失効を回避することを決定した後、金有根(キム・ユグン)国家安保室第1次長が記者会見した。

「いつでもGSOMIAを失効できるという前提で、破棄を取り消した。日本の政府も理解を示した」
「輸出管理政策の対話が正常に進んでいる間は、日本を提訴したWTO(世界貿易機関)の手続きを停止する」

金氏の「いつでも失効できる」という発言は、思い上がっている。韓国ギャラップの世論調査によると、破棄支持が51%で、破棄不支持の29%を大きく上回っていた。韓国国内に向けたプロパガンダもあるだろうが、それにしても「失効を回避させてあげたのだから日本は輸出の管理の厳格化を緩めなさい」と受け取れる発言である。

WTOの手続きの停止も当然なことであり、「対話が正常に進んでいる間」という韓国の言い方は恩着せがましく、自己中心的な駄々っ子の主張である。これからも間違いなく、日本は韓国の対応に苦労する。

■GSOMIAを破棄して困るのは韓国ではないか

11月22日、韓国の白髪の女性閣僚、康京和(カン・ギョンファ)外相が、名古屋市で開幕した主要20カ国・地域(G20)外相会合に出席するため、日本に到着した。

韓国の報道によると、康外相は来日にさきだって記者団にこう語ったという。

「私たちGSOMIAをいつでも終了して失効させられるという権利を留保している」

「失効できる権利がある」。日本政府が対韓輸出管理の厳格化の措置を撤回しなければ、GSOMIAを破棄すると考えを強く示したものだが、金国家安保室第1次長の発言と同様、日本政府を見下している。

ここで言いたい。GSOMIAを破棄した場合、一番困るのは韓国ではないか。北朝鮮は核・ミサイルの開発を止めず、ミサイルの発射はエスカレートする一方だ。文大統領の融和政策は効果を上げていない。アメリカの説得に応じなければ、米韓関係も悪化する。

この点について沙鴎一歩は、11月20日付で「『GSOMIA失効』で困るのは、日本でなく韓国だ」という記事を書いた。

■国益をベースに交渉をまとめ上げるのが外交だ

これまで日韓両政府は外務当局の次官級による水面下での協議を続けてきた。しかし、韓国は日本の対韓輸出管理の厳格化をGSOMIAへの対応と同次元で捉え、一方日本は「輸出管理厳格化とGSOMIAとは別問題だ」と主張した。交渉は行き詰まり、日本政府内では11月20日の時点で、「破棄は避けられない」との見方が強まっていた。

ところが、である。翌21日、事態が大きく進展した。韓国が輸出管理厳格化をめぐって、WTOの紛争処理手続きを中断する意向を日本側に伝えてきた。韓国が折れてきたのである。

日本政府は厳格化を維持しながらも、協議の再開を決定し、韓国の顔を立てた。これが、韓国がGSOMIA破棄を考え直す大きなきっかけとなったのである。

水面下で交渉相手のすきや弱点を巧みに突きながらも、花を持たせ、最後は自国の国益を最優先に交渉をまとめ上げる。これこそ外交手腕である。日本政府の外交力の高さは評価すべきだろう。

■日本に甘えることに慣れている韓国

しかし相手は駄々っ子で、しかも慰安婦問題などの歴史認識で日本に甘えることに慣れている韓国だ。今後の交渉も慎重に進める必要がある。

まず日本政府は韓国大法院(最高裁)が昨年10月に日本企業に賠償を命じ、日韓関係の悪化の発端となった元徴用工訴訟問題の解決に全力を傾けるべきである。日本政府は「1965年の日韓請求権・経済協力協定で賠償問題は解決済み」との立場を取り、日本と韓国の対立が続いている。この問題を外交手腕で解決し、日韓関係全体の改善へとつなげていくことが求められる。

12月下旬には中国の四川省成都で日中韓首脳会談が開かれる。安倍晋三首相と文大統領の首脳会談を実施し、日韓関係の改善の新たな基盤を作る絶好のチャンスだ。日韓首脳会談を、日米韓に対抗する中国に見せつける効果もあるだろう。

■日韓関係の解決はこれからが正念場となる

「日米韓3か国の防衛協力が傷つく事態はひとまず回避されたが、日韓間の懸案解決はこれからである。対話を重ね、信頼関係を回復することができるか。楽観は禁物だ」

11月23日付の読売新聞の社説の書き出しである。読売社説が指摘するように日韓関係は一時的に深刻化を避けられただけで、これからが正念場なのである。

続けて読売社説は主張する。

「失効した場合、東アジアでの米軍の影響力低下を目指す北朝鮮と中国を利することになる。韓国の文在寅政権は、その重大性を認識すべきである」

日米韓国の関係が不安定になって喜ぶのは、北朝鮮と中国、それにロシアだ。その意味で日韓関係は大切なのである。

「日米両国は引き続き、韓国が東アジアの厳しい安全保障環境を踏まえて適切な対応をとるよう、促していかねばならない」

読売社説が主張するように、韓国には日本とアメリカの監視の目が必要だろう。

■アメリカの軍事力の貢献を、文大統領は理解していない

文在寅大統領は南北の融和を重視しすぎる。その結果、北朝鮮や中国、それにロシアの勢力拡大を助けている。

北朝鮮は国際社会の忠告を無視して核・ミサイル開発を推し進め、中国は南シナ海に軍事拠点となる人工島を設けるなど海洋に進出している。ロシアも虎視眈々(こしたんたん)と近隣諸国への影響力強化を狙っている。

東アジアの中でアメリカの強い軍事力があるからこそ、具体的にはアメリカを中心とするGSOMIAという軍事協定が存在するからそこ、独裁国家を誕生させる共産・社会主義勢力の膨張を食い止められている。そこを文大統領はまるで理解していない。

■「ひとまず安堵できても、問題の根本は手つかずだ」

朝日新聞(11月23日付)の社説も信頼回復を冒頭から求めている。

「日韓の安全に資する協定が、かろうじて救われた。ひとまず安堵できても、問題の根本は手つかずだ。理不尽な事態を繰り返さないための健全な関係回復に本腰を入れるべきだ」

さらに朝日社説は訴える。

「日米韓は、この協定を主要な回路の一つにして、安全保障の情報をやりとりしている。破棄となれば、共同歩調に悪影響が出ることが懸念されていた」
「北朝鮮の不穏な動きが続くなかで、日韓関係がここまでこじれたのは不毛というほかない。今回の失効回避を機に、両政府は国民の実利を損ねる負の連鎖を止めなければならない」

「国民の実利を損ねる負の連鎖」とは朝日社説好みのわかりづらい表現だが、要は国民の利益につながらないということを言いたいのだろう。歴史認識において日本と韓国は大きなズレがある。そこを一歩一歩、山を登るようにして日韓が努力を重ねていかない限り、負の連鎖はなくならない。

■日本の輸出管理厳格化を「事実上の報復」と書く朝日

安倍政権が嫌いな朝日社説は、矛先を日本政府に向ける。

「一方、日本政府にも関係改善への重い責任がある。7月に唐突に打ち出した韓国向け輸出の規制強化は、昨年来の徴用工問題をめぐる事実上の報復にほかならない」
「文政権が誤った対抗措置のエスカレートを踏みとどまった以上、日本政府も理性的な思考に立ち返るべきである。輸出規制をめぐる協議を真摯に進めて、強化措置を撤回すべきだ」
「文氏も安倍首相も、相手との妥協を政治的な損失ととらえる考え方から脱すべきだ。たとえ不人気であっても、国民の未来を見すえた外交の価値を説くのが政治家の務めである」

朝日社説の論調は喧嘩(けんか)両成敗である。だが、今回、問題だったのは韓国の対応のまずさだった。朝日社説が日本の対韓輸出管理厳格化措置を「徴用工問題をめぐる事実上の報復にほかならない」と断定するのも、間違っている。日本は韓国側に輸出上の不備があるから厳格化の措置を取ったのだ。

■安全にかかわる問題を取引材料にしてはいけない

そもそも輸出問題を安全保障の問題と同じ土俵で論じようとする韓国の論法自体が理にかなっていない。

朝日社説も次のように書いているではないか。

「韓国側が8月に協定の破棄通告をしたのは、日本による輸出規制強化への対抗策だった。きのうの発表でも、今後いつでも破棄できると強調し、日本側に相応の対応を求めた」
「だが、いくら韓国内の対日世論が硬化したからといって、安全にかかわる問題を取引材料にすること自体に無理がある」

いまの韓国は無理ばかり主張してくる駄々っ子なのである。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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