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なぜ世の中の夫は「言わなきゃ動かない」のか

プレジデントオンライン / 2019年12月14日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/takasuu)

『妻のトリセツ』が大ヒットし、このたび『夫のトリセツ』を上梓した脳科学・AI研究者の黒川伊保子さん。使えない夫を「気の利く夫」に変える、とっておきの方法を教えてくれます。

※本稿は黒川伊保子『夫のトリセツ』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。

■夫が気が利かない、本当の理由

さて、「夫が家事を手伝ってくれない」問題について、解説しよう。

夫は、気が利かない。

我が家の夫は、若いうちは、「お鍋、できるよ?」と声をかけると、リビングにやってきて椅子に座るだけ。「鍋敷きくらい出してよ」と言ったら、新聞やボールペンの乗ったままのテーブルに、ちょこんと鍋敷きを乗せる始末。「いやいや、それを片付けないと鍋が乗らないでしょ。やる気あるの?」と言ったら、「あー、言ってくれればやるよ」(言わなきゃやらないのが、本当にイラつく)といった具合だった。

女同士で暮らしていて、片方がキッチンで立ち働いていたら、もう片方は出来上がりの気配を察して、呼ばれる前にリビングにやってきて、テーブルを整える。余計なものを片付けて、鍋敷きに、取り皿に、おたまに菜箸。大学時代の同居人がそうしてくれたし、今まさに、およめちゃんがそれをしてくれている。

夫は、いまだに呼ばないと来られないが(料理の仕上がりの気配を察することは不可能らしい)、何をすればいいかはルール化してわかっているので、間違いがない。

それでも、新しい事態には、本当に気が利かない。

見りゃわかるでしょ、の事態に、動いてくれないのである。

けど、それ、やる気がないからではなく、妻の所作をうまく認知できていないせいなのだって、知ってました?

■女性はワンアクション、男性はツーアクション

胸骨と肩甲骨をジョイントして、腕を支える鎖骨は、横にスライドするのと、縦に回転するのと、2つの動きを持っている。この2つを組み合わせて、腕のさまざまな動きを可能にしているのだ。

実は、男女では、鎖骨の使い方が少し違っているのだという。女性は、鎖骨をスライドして使うほうを優先する人が多く、男性は鎖骨の回転を優先する人が多い。なので、所作が違う。スポーツトレーナーにそう教えてもらって、世の男女を眺めてみると、たしかにその傾向があるのである。

女性は、鎖骨を横にスライドして腕を出し、一筆書きを描くように、ものを取る。肩の下で、静かに腕が動くのである。かなりガサツな女性でも、ものをがしっとつかみ取る感じにはならない。

一方男性は、鎖骨を回転させて、ものを取る。腕を前につき出し、それを戻す運動になる。的確に狙って、つかみ取る感じがする。

レストランで観察していると、ウェイターさんは、テーブルに正対して、前に腕を伸ばし、最短距離で狙ったようにものを置くかたちが主流だが、ウェイトレスさんは、テーブルに横向きに身体を接近させて、横に腕を伸ばし、流れるようにものを置くかたちが主流である。訓練によってどちらも使えるので、百パーセントじゃないが、おおまかな傾向は出る。

所作の違いは、脳の認知の違いでもある。

女性の所作は、流れるようなワンアクションなので、鋭角に「行って、帰る」ツーアクションの男性からしたら、認知しにくいのだ。

■「夫は気が利かない」は濡れ衣である

つまり、夫の脳では、妻の所作が網膜に入るが、風景のように見流しているのである。目の前にいて、妻がおむつを替えている風景を眺めていても、「子どもがごろんとなったから、お尻拭きに手が届かないで、妻が困っている」というようには認知できない。

まるで、カフェに座って、外を走る車を眺めているようなもの。目の端には入っていても、車が今、車線変更をしたなんて、認知していないでしょう? あれと同じなのだ。

興味がないからではなく、所作が違うから。ちなみに、ワンアクションの女性からしたら、ツーアクションの男性の所作はわかりやすい。妻は夫の所作を察して、手を添えられるのに、夫にそれができないという関係だから、いっそう、愛情の欠如や、気の利かなさに思えてしまうのだろう。

というわけで、「夫は気が利かない」は、濡れ衣である。

見えていないのなら、言うしかない。

お尻拭きに手が届かなかったら、「お尻拭き、取って」と言えばいい。ゴミを早く捨ててきてほしかったら、「今日、ゴミの日だよね。雨が降るかも」なんて謎かけをしていないで、「雨降りそうだから、早く捨ててきて」と、きっぱり言えばいい。「あんなことがあって、こんなことがあって」とグズグズ言わずに「落ち込んでるんだ。優しいことば、一発ちょうだい」と言えばいい。

察してくれないと恨んだり、気が利かないと嘆いたりする時間がもったいない。若妻のそれは、かわいいときがあるんだけどね。

■大事なのはキャンペーン

同じ理由で、夫は、家事の総体も見えていない。

妻の3分の1しか認知していなければ、「半分やってる」と豪語している夫の家事タスクが、実質妻の6分の1なんてことが起こる。当然、夫側に悪気はないのである。

ゴミ捨て一つにしても、私たちはいくつもの工程を経て、捨てるゴミ袋一つを作っている。私は『妻のトリセツ』で、「ゴミ捨て」には、ゴミ箱の用意から、袋の準備、分別、袋を閉じて、その袋が破れていないかを確かめるなど、10の工程があると書いた。

黒川伊保子『夫のトリセツ』(講談社+α新書)

そうしたらある熟年男性から、こんな話を聞かされた。「黒川先生は、ゴミ捨てにたくさんの工程があるって、書いてましたよね。あれには、はっとしました。そして、昨日の日曜日、僕が2階でくつろいでいたら、階下で掃除機をかける音が聞こえてきたんです。そのときふと、妻が、あれだけの工程をこなしながら、こんなに丁寧に掃除機もかけているのかと思ったら、愛しくて愛しくて。自分でもびっくりするような気持ちになりました」

知ることは、大事である。

私は、ときどき、キャンペーンをしている。自分のすることを、夫に宣伝するのだ。

「今日は、洗濯しながら、ご飯を炊いて、その隙にエッセイを1本書いて、親子丼を作って、シャワーを浴びて、買い物に行くね。あ、その前に、新聞をくくる」みたいに。

そうして、行動に移すたびに「今から、○○するね」と連絡し、「○○、完了しました」と報告する。明るく、軽やかに、押し付けがましくなく。

夫は、「はいよ」と返事をしながら、ときに、ちょこっと手を貸してくれる。「洗濯物、干して」とか「新聞紙、出してきて」と声をかけても、「はいよ」と軽やかだ。

これが、なにも言わないで、静かにやっていると、「ちょっと、これ、捨ててきて」に「えーっ」とか「後で」とか言うのだから、キャンペーン効果は絶大である。

■家事任命で、夫に惚れ直そう

家事の総体が見えてない相手に、「なんとなく、察して半分」は、もめる源。家事は、分担を決めたほうがいい。

風呂のカビ取り、蕎麦ゆで、パスタゆで、ハーブ栽培、窓ふき、ゴミ捨て、皿洗い。これらは、我が家の夫の担当である。

「これだけしてもらえると、日々が本当に楽になる」を厳選するといいと思う。たとえば、「夜寝る前に、お米を研いで炊飯器に仕込む」。これって、子どもを風呂に入れたり、明日のスイミングの準備をしたりと忙しい主婦には忘れがちで、布団に入ってから、「あっ」と思って立ち上がるのは、けっこうなストレス。これだけでも担当してくれたら、本当に嬉しいのじゃないかしら。ただし、彼がうっかり忘れたときの冷凍ご飯は常備しておいては。「部下のうっかり」は上司の想定内にしておくべき。

「本当に助かるタスク」を夫にやってもらうと、夫の存在価値が上がる。ぜひ、厳選して、お願いしてみてください。

そのお願いの前に、何度か、先に述べたキャンペーンをしておくといいよ。妻が、日がな一日、あれやこれやしているんだと知った後の「ご飯だけ仕込んでくれれば、天国なの。お願い」は、素直に聞けるのじゃないだろうか。

私の知人は、「夫を在庫管理に任命しました」と教えてくれた。各種調味料、コーヒー、紅茶、お茶、牛乳、各種洗剤、トイレットペーパー、ティッシュペーパー……、数え上げれば数十ある家庭の在庫管理は、多くの場合、妻の勘に任されている。

それをほぼ問題なく勘で回す女性脳も素晴らしいと思うが、ときには、ケチャップがない、ソース在庫が2本ダブっちゃった、なんてことも起こる。その知人の夫は、在庫管理アプリを導入、台所のラックを整理して、それぞれの引き出しにラベルをつけて、完璧に管理してくれているそうだ。妻が買い物のときに、在庫管理アプリを開くと、買うべきものが一目でわかり、買ったときにはチェックしておくと、夫と被ることがないのだそうだ。夫を見直したと、彼女は微笑んだ。

それぞれの妻に、それぞれの家事ストレスがあるはず。その「これ、これ」を夫に任せて、夫に惚れ直そう。

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黒川 伊保子(くろかわ・いほこ)
脳科学・AI研究者
1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。近著に『定年夫婦のトリセツ』(SBクリエイティブ)、『女の機嫌の直し方』(集英社インターナショナル)、『妻のトリセツ』(講談社)など多数。

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(脳科学・AI研究者 黒川 伊保子 写真=iStock.com)

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