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若者たちに「#忘年会スルー」される会社の特徴

プレジデントオンライン / 2019年12月26日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

「#忘年会スルー」が話題だ。若手社員たちは続々と、「会社の忘年会は参加しない(スルーする)」ことをSNS上で宣言している。なぜ忘年会はスルーされるようになったのか。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「会社にとって忘年会は重要だ。会社側はスルーされない工夫をすべきだ」という――。

■ほぼ全員が参加する「海外社員旅行」の中身

「私の会社では毎年社員とお客さまみんなでクリスマスパーティーを開きます。今では珍しいかもしれませんが、そこでは寸劇も披露されます。また毎年社員旅行にでかけていて、5年に1度はハワイに行きます。会社にも社員にとってもメリットが大きい。だからうちの社内行事にはほとんどの社員が参加しますよ」

経営コンサルタントの小宮一慶氏はこう話す。だが、こうした小宮氏の会社は、世間一般では“暑苦しい”と受け取られがちだ。本当にすべての社員がよろこんでいるのだろうか。

小宮氏はこう話す。

「いま『#忘年会スルー』が話題ですよね。この原因は社員と会社側のそれぞれの考え方が行き違っているからです。若手社員はプライベートに時間を割きたい人も多いでしょうし、忘年会の参加費を自己負担するのがいやなのでしょう。仮に参加費が会社負担だとしても、上司に飲まされる。参加したくない気持ちも理解はできます。

撮影=岡村隆広

彼らは友人と忘年会は開くようですから、忘年会という行事自体が好きではないのではなく、会社が好きではないのです。また、終身雇用制度が崩壊し、会社で我慢するメリットを享受できなくなったのも大きいでしょう」

■企業にも忘年会を強制できない理由がある

一方、企業側が若手社員の忘年会スルーを受け入れてしまう理由は、人手不足だという。

「かつては新入社員が3年以内に3割辞めるのがスタンダードでした。ところが、人材会社ベースメントアップスの今年11月の発表によると、44%が辞めるというデータが出ています。ここまで辞める人が増えると、会社側は若手社員が嫌がることはできなくなります。忘年会を開くことが“パワハラ”になるのならば、企業側は忘年会を開かない決断を下すのも自然な流れです」

だが、その先に生まれるのは企業と社員双方にとって不幸でしかないと小宮氏は語る。

「会社というのは円滑なコミュニケーションが取れてうまく回るもの。何より、仲間意識が大切。1年のけじめでもあるし、どんな形であれ仕事を円滑に進めるために濃密なコミュニケーションが取れる忘年会を開くメリットは大きいのです」

■高級ホテルのビュッフェをご馳走せよ

そのためには、若手社員が忘年会に参加したくなる施策が企業側に求められるという。

「参加費は当然会社負担にすべきです。さらに、お店は高級ホテルのビュッフェなど記憶に残るちょっといいお店を押さえるべき。そういうお店でも、一人あたり1万5千円程度。これがボーナスに1万5千円上乗せされていたとしても、あまり喜んでもらえませんが、高級ホテルのディナービュッフェを忘年会でごちそうすれば、社員の満足度は高まります。

私のクライアントの中には、高級すし店の『銀座 久兵衛』で社員にごちそうしている企業もあります。なぜ久兵衛なのか。それは久兵衛なら社員の記憶に残りますし、みんな知っているから地元の友達に話しても自慢になるからです。結局、心理的に社員を満足させることを考えれば、たとえ費用がかかっても忘年会は企業側にとってメリットしかないのです」

こうした高級店を押さえられない場合だとしても、忘年会に参加させる施策は他にもある。

「たとえば、勤務時間内に社内会議室で1時間くらいで切り上げるタイプの忘年会も有効でしょう。アメリカの会社は、よくオフィス内にバーを設けています。なぜか。彼らは、社員みんなでコミュニケーションを取るメリットがわかっているからです」

■companyの本当の意味とは

小宮氏が一貫して主張するのは、忘年会のようなオフの場でなされるコミュニケーションこそが、社員間の仲間意識を醸成するということだ。

「同じ釜のメシを食ったり、酒を飲むことによって、仕事内容より重要な“仕事への意識”が共有されるのです。“会社”を意味する英語companyには“仲間”という意味もあります。comは一緒という意味で、panはパンを食べるという意味。つまり、ごはんを一緒に食べるという意味です。仲間とは、一緒にごはんを食べる関係のことを言うのです」

それでは若手社員に忘年会や社員旅行をスルーされないためには、具体的にどうすればいいのか。

「上述したオフィス内で時間を決めて開くもの以外に、世代別で席を決めて開くケースも有効でしょう。20代社員は20代社員だけ、役員は役員だけでテーブルを固めるのです。年配の社員と話したい若手社員だけが席を移動して話せばよい。そのように自然に交流したい人だけが“年上の説教”を聞けばよい。それくらいハードルを下げなければ若手社員は参加してくれない企業もあるかもしれません」

■社員に「お得感」を感じてもらうのが経営のコツ

小宮氏によれば、若手社員の離職を防ぐために求められるのは「社員に損をさせたと思わせないこと」だ。

「おいしくない居酒屋で、自分がお金を払い、上司の説教を聞くのは、若手社員としては損した気分にしかならないでしょう? だから逆のことをすべきなのです。つまり、この会社にいて得をしたと思ってもらいましょう。

久兵衛ですしをごちそうしてもらえる、5年に1度は会社負担でタダでハワイに行ける。そんな会社ならば、得したと思ってもらえるでしょう? 私の顧客の中には社員旅行では社員1人ひとりに数万円をおこづかいとして渡すところもあります。これで家族にお土産でも買ってください、と。そんな会社にいる社員はメリットを感じてくれます」

忘年会スルーの最大の問題は、スルーされるほど魅力のない忘年会を開いてしまう企業側にあるのかもしれない。

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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』など著書多数。

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(小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO 小宮 一慶 構成=鈴木俊之)

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