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東京の一般家庭が中学受験でソワソワするワケ

プレジデントオンライン / 2020年1月27日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

都内では子どもの「中学受験」は、ごく普通の家庭でも関心事になる。教育専門家の小川大介氏は「かつての中学受験は、一部の家庭がするものだった。だが、文京区や世田谷区などには、8割以上が中学受験をする学区がある。状況が変わっているのだ」と解説する――。

※本稿は、小川大介『親も子も幸せになれる はじめての中学受験』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。

■毎日が忙しすぎて、心に余裕が持てない

朝は誰よりも早く出勤し、昼はコンビニのおにぎりを頰張りながらパソコンに向かう。それでもやり残している仕事はあるけれど、タイムリミット。家に一人で留守番をしている子どもがいると思うと、「早く帰ってあげなきゃ!」と気が気じゃない。周りがまだ仕事をしている中、一人先に帰る気まずさ……。

そんな葛藤と毎日戦っているのに、家に帰れば「取り込んでおいてね」と言っておいた洗濯物がベランダに干しっぱなし。リビングの机には、宿題の漢字ドリルが途中で止まっている。そして、わが子はソファーに寝転んでゲーム三昧。その姿を見て、怒りが爆発!

そんな日々にグッタリ……、という働くお母さんの声を耳にします。

共働きが増えている今、自分自身も仕事は続けたいと思っているけれど、なにせ毎日が忙しすぎて心に余裕が持てない。特に子どもが小学生になってから、その大変さを強く感じている親御さんは多いのではないでしょうか。

■わが子のためを思って行動しているのに……

保育園時代は比較的よく似た境遇のお母さんたちばかりだったから、それほど強く意識せずに済んだけれど、小学校になると保育園上がりのお子さん、幼稚園上がりのお子さんが混じり合います。園によって文化も違いますし、専業主婦の方の中には、特に子育てに熱心な様子を見せる人もいます。

その様子に戸惑って「私が仕事をしているから、この子をしっかり見てあげることができない。こんな状態で、この子の力を伸ばしてあげられるのかしら……」と、モヤモヤした気持ちになるお母さんもいらっしゃるようです。

一方、専業主婦のお母さんには別の悩みがあるようです。子育てが生活の中心となっているため、「私がこの子をしっかり育てなければ!」と過度に力が入ってしまう面があるのです。

「小さいときからピアノをやっておくと脳にいいらしい」「これからは英語とプログラミングは必須だから、早いうちからやらせておいたほうがいい」と聞けば、あれもこれもやらせたくなり、気がつくと、毎日家事と子どもの習い事の送り迎えだけで1日が終わってしまう。

でも、相手は子どもなので、準備に時間がかかったり、「行きたくな~い」とグズられたりと、スムーズにいかないことだらけ。そして「早くしなさい!」と大声を上げる日々。

どちらもわが子を愛し、わが子のためを思って行動しているのに、うまくいっていない……。そして、思うのです。「子育てって大変だな」と。

■放課後の過ごし方が、昔とは変わってしまった

では、なぜ今、お母さんたちはこんなに忙しいのでしょうか?

ここでみなさんの子ども時代をちょっと振り返ってみてください。みなさんが小学生の低学年だったとき、みなさんのお母さんはここまで忙しかったでしょうか?

当時はまだ働く女性が少なく、専業主婦のお母さんが多かったのではないかと思います。そういうご家庭では、学校から帰ってくると、お母さんがおやつを用意して待っていてくれたかもしれません。

でも、そのあとは子ども同士で遊ぶ約束をしていたから公園へ(約束をしなくても公園に行けば誰かがいる)。そして、夕食の時間になるギリギリまで遊んでいませんでしたか? 習い事をしていても、せいぜい一つ二つで、それだって子ども同士で行っていましたよね?

そもそも、当時は中学受験が今ほどメジャーではありませんでした。塾通いをしている子もごく一部でしたし、入試に必要な学習量も今と比べればはるかに少しで済みました。受験家庭だとしても、親が子どもにつきっきりなんてシーンは珍しかったのです。

あのころ、世間からも親はそこまで子どもにベッタリを求められていなかったのです。

■SNSから大量の子育て情報が流れ込んでくる

でも今は、度重なる児童の事件で、子どもだけで行動することを心配する親御さんが増えました。何かあればすぐ親のせいにするような、おかしな自己責任論が広がって、親のほうも神経がピリピリしています。

また、放課後にグラウンドを開放しない小学校も増え、子どもの遊び場が限られるようになりました。そこに、中学受験熱の高まりも加わり、塾や新しいタイプの習い事で、小学生の放課後の過ごし方が大きく変わりました。

今の時代で親をやっていると、気持ちの面でも物理的にもめちゃくちゃ忙しいのです。

さらに今は、ネットニュースやSNSでありとあらゆる子育て情報が流れてきます。

「習い事は、勉強系とスポーツ系と芸術系をそれぞれやらせたほうがいいらしい」
「理系に強くなるには、小さいころからロボット教室に通わせたほうがいいらしい」
「中学受験をするなら、3年生の2月から塾通いが始まると言うけれど、大手進学塾のSAPIXの人気校舎に入れるなら、1年生から入れておかないと上位クラスに上がりにくいらしい」

など、“やらせたほうがよさそうなもの”“やらせないと自分たちだけが取り残されそうなもの”の情報がたくさん飛び込んできます。

すると「うちはこのままでいいのだろうか?」「もっと、何かやらせたほうがいいのではないだろうか?」と焦りや負い目を感じるようになります。情報がたくさんあることによって、かえって子育てがしづらくなっているのです。

■今の子育ては「選択肢」が多すぎる

さらに、お母さんたちを不安な気持ちにさせるのは、今の時代の子育ては選択肢が多いことです。

お母さんたちが小学生だったころは、小学校を卒業すると、地元の公立中学に通い、15歳の高校受験で初めて「受験」を経験する子がほとんどだったと思います。今も地方ではそれが一般的ですが、東京都の文京区や世田谷区など、首都圏の一部の地域では4人に1人が、学区によっては8割以上の子が中学受験をすると言われる時代。「自分は公立中学出身だから、この子も公立中学でいいのでは?」と安易に言えない状況になっています。

かつて中学受験といえば、とび抜けて教育熱心なご家庭や、キリスト教校に入れたいなどのこだわりを持った一部のご家庭が選択するものでした。ところが今は、公立中学への不信感や大学受験への優位性などから、多くのご家庭が中学受験に関心を寄せています。

経済的に厳しいとあきらめていたご家庭でも、十数年前に公立中高一貫校が誕生したことで、教育費の負担を抑えて、6年一貫のカリキュラムが受けられるようにもなりました。

また、これまではある一部の裕福なご家庭だけの世界というイメージだった小学校受験においても、一般家庭の受験が増えています。かつて小学校受験といえば、平日に幼児教室に通わせることが必須で、専業主婦のお母さんのいる家庭でなければ難しいと言われていましたが、今は共働き家庭も多いそうです。

■昔は15歳まで進路を考えなくてもよかった

大学受験においても、知識重視型の入試が記述力や思考力、表現力が求められる入試へと変わろうとしています。こうした力は、幼いころの体験や家庭での過ごし方によって身につくものと言われると、幼少期からたくさんの習い事や特別な体験をさせておかなければと、あれもこれもやらせたくなる。

一方、これから世界がますますグローバルにつながるこの時代、国内だけではなく海外の大学へ進学し、海外で働くという選択肢も無視できません。世界の情報を得るためにも英語の力は必須ですから、会話の力と異文化理解を考えると、十代のうちに海外留学をさせたいと考えるご家庭も増える一方です。

子育ての選択肢の幅が、ますます広がっています。

小川大介『親も子も幸せになれる はじめての中学受験』(CCCメディアハウス)

今までなら15歳の高校受験を迎えるときまで、深く考えなくてもよかった子どもの進路を、小学校受験であれば2~3歳のうちに、中学受験であれば8~9歳のうちに決めなければならなくなっているのです。

目の前にいるわが子はまだこんなに幼いのに、決めなければならないことが前倒しになり、しかもその選択肢が多い。そのため、何を選択してよいのかわからず、子育てに不安を感じている親御さんがたくさんいらっしゃいます。

実際、私のセミナーにいらっしゃる親御さんたちからも、専業主婦の方も働いていらっしゃる方も区別なく、さまざまな不安の声を聞きます。

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小川 大介(おがわ・だいすけ)
教育専門家・「かしこい塾の使い方」主任相談員
京都大学在学中より大手塾で看板講師として活躍後、中学受験プロ個別指導塾を創設。6000回を超える面談を通して子どもが伸びる秘訣を見出す。受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評があり、幼児教育から企業での人材育成まで幅広く活躍中。『1日3分!頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)など著書多数。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」

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(教育専門家・「かしこい塾の使い方」主任相談員 小川 大介)

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