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経営トップ35人に直撃「2020年日本はこうなる」

プレジデントオンライン / 2020年1月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

アベノミクスによって過去最長の景気拡大を続ける日本経済。しかし、2019年10月の消費増税の影響をはじめ不安材料もある。日本経済のみならず米国経済も20年は堅調なのか主要企業の経営トップ35人に聞いてみた。

■2019年最も印象に残ったニュースTOP10

2019年は5月1日の皇太子さまの新天皇としての即位、それにともなう「平成」から「令和」への改元という歴史的な出来事があった。経営トップに19年最も印象に残ったニュースをあげてもらったところ、トップ10にその改元と皇位の継承が入っている(図1参照)。

一方、相次いだ大規模自然災害が印象として残っている経営トップも多くいて、第2位に躍り出た。このことはもしかして、20年の日本経済の波乱含みを予兆しているのかもしれない。

それを端的に示しているのが図2にある日本の実質GDP(国内総生産)成長率の予想だ。18年実績の0.8%を下回る0.5%の成長を予想する経営トップが16人と断トツに多く、総じて経済成長のスローダウンを予想しているのだ。

「今回のアンケート調査を行った期間中にすでに発表になっていた、19年9月時点での日銀短観(全国企業短期経済観測調査)の大企業・製造業のDI(業況判断指数)は、かろうじてプラスの5となっている。中小企業のそれはすでにマイナス圏内で、足元の景気の悪さを肌で感じ始めており、20年の見通しについては控えめな予想をしたのではないか」と、経済予測で定評のある小宮コンサルタンツ会長兼CEOの小宮一慶氏はいう。

翻って、米国はどうかというと、実質GDPの成長率を2.1%と予想する経営トップが9人いて一番多い。次に1.8%と1.9%が各8人、そして2.0%が7人いる(図3参照)。つまり2%前後の成長という“底堅い米国の景気”を見込んでいるわけで、日本経済の先行きとは一線を画す。

■足を引っ張る消費増税の影響

では、何が日本経済と米国経済との明暗を分けているのだろう。小宮氏は「日本ではGDPの約55%を占める個人消費が、19年10月の8%から10%への消費増税で足を引っ張られる可能性がある」と指摘する。

実際に図4にあるように、国内景気に対するマイナス要因として、15人の経営トップが消費増税の影響・対策終了をあげ、2番目の懸念材料として浮上している。確かに消費増税の影響を緩和するため、キャッシュレスでの支払いに、5%のポイント還元が行われている。しかし、それも20年6月までの時限的な措置でしかない。

それだけに「ポイント還元の後押しがあるものの、その還元が終了するまでにどのような手が打てるかが勝負」(ローソン・竹増貞信社長)という声があがってくる。指摘した経営トップの数こそ3人と少ないが、個人消費の下振れがマイナス要因に顔を出しているのも気になる。

逆にそうしたマイナス要因を打ち消すものとして期待されているのが、東京五輪と、それにともなうインバウンド(訪日外国人旅行)の増加だ。図5を見てもわかるように、20人の経営トップが推している。それを代表するのが、「国内景気も2~4月の底入れ後、東京五輪の盛り上がりと経済対策の効果から回復を期待」というセコムの中山泰男会長の見方である。

図1の印象に残ったニュースには、日本チームの大活躍が記憶に新しいラグビーワールドカップが第3位につけている。その経済波及効果は4300億円とも推計され、開催規模がそれよりも格段に大きい東京五輪に期待がかかるのも当然だろう。

「ただし、前回大会のときの日本のGDP規模は30兆円ほど。それがいまでは約18倍の550兆円規模になっている。実際にラグビーワールドカップ以上の経済波及効果はあるだろう。しかし、全体に対する影響を冷静に考えると、そう大きな期待をかけられるほどではない。消費増税によるマイナスの影響を下支えする要因として考えるくらいに、とどめておいたほうがいいのでは」と小宮氏は指摘する。

■米中貿易摩擦は一段の悪化を回避

一方、消費者物価の上昇率や失業率などで“合格点”の状況にある米国経済にとって、大きな懸念材料として考えられるのが、図4で日本の国内経済に対するマイナス要因でトップにもなっている米中貿易摩擦だ。トランプ政権は米国内の企業や雇用を守るため、18年夏以降、合計約3600億ドル分もの中国製品に最大25%の制裁関税をかけてきた。しかし、中国側も対抗措置として米国製品に報復関税を課すようになり、米国経済も無傷ではいられなくなっている。

そこで再選が最優先課題であるトランプ大統領にしてみれば、あまりにも中国を締め付けすぎて、米国経済を失速させるような事態に陥ることは避けたいところだ。それゆえ、旭化成の小堀秀毅社長は国内景気のプラス要因に「米中合意」をあげ、伊藤忠商事の鈴木善久社長の「米中貿易摩擦はひとまず合意に至り、世界経済は徐々に持ち直し」という見方も浮上する。

実際、19年12月13日に米中両国政府は貿易交渉で「第1段階の合意」に達し、米国は第4弾の対中制裁関税の発動を見送った。その結果、図3で見たように20年は米国経済の底堅い展開が予想されるのだろう。

そして、ドル円相場についてだが、図6と図7を見てわかるように、20年は年央の6月と年末の12月時点ともに、1ドル=108円を予想している経営トップが最も多い。片や足元のドル円相場はどうかというと、19年の秋口以降、同108円を挟んでの膠着状態だ(図8参照)。ということは、多くの経営トップが現在の水準と変わらないことを前提に、今後の自社の経営を考えていることが推察される。

「結局のところ、トランプ大統領が再選を果たしても、米中関係については貿易摩擦を含めて、これ以上悪い状態に追い詰めるようなことは考えにくい。一方、民主党の候補が新大統領になったとしても、トランプ政権下で複雑に絡み合った米中間の糸がすぐにほぐれることは、やはり考えにくい。そうしたこともドル円相場の予想に影響し、現状とほぼ同水準で判断していこうという心理に結びついているのではないか」と小宮氏はいう。

■企業業績向上で株高を期待

次に日経平均株価だが、図9にあるように高値については、2万4000円台を13人、2万5000円台を12人の経営トップが予想している。また、図10を見てわかるように安値については、2万2000円台が14人で最も多く、2万1000円台の10人がそれに続いている。

つまり、20年については多くの経営トップが、日経平均株価の一段高を予想していることになる。これはどういうことを意味しているのだろうか。小宮氏は次のように分析する。

「国内景気の先行きについては厳しめに見ているものの、底堅い米国景気が期待できるうえに、これまで自分たちが取り組んできたコスト削減などの合理化効果が見込め、企業業績が上向くことで株式相場全体の底上げを予想しているのだろう。そこには経営トップとして『そうなってほしい』という願望も込められているのだと思う」

そうしたなか、成長や株高が最も期待されているのがIT・情報通信だ(図11参照)。20年は移動通信規格が「4G」から100倍近い通信速度の「5G」へ移行する。それにともなって通信設備の切り替え需要の拡大が確実視される。

また、3人の経営トップが推す建築・土木だが、冒頭で触れた大規模自然災害への備えと絡んで要注目といえよう。なぜなら「財政が厳しい状況ではあるが、安心して暮らしていけるインフラの整備に向けて、国費の最適配分を真剣に考えるべきだ」(SOMPOホールディングス・櫻田謙悟グループCEO)という後押しの声があり、堅実な成長が見込めそうだからだ。

■経営トップが注目経済指標の中身

最後に気になるのが、日本国内の景気が腰折れしないかどうか。その点においてはローソンの竹増社長が先に指摘していたように、消費増税対策であるポイント還元に続く次の一手が重要になる。小宮氏がそのための政策と捉えているのが、19年12月5日に政府が閣議決定した、国や地方からの財政支出が13.2兆円となる経済対策だ。

そして、その効果が今後の経済指標にどう表れてくるのか気になるところで、図12にあるように多くの経営トップは、為替レート、株価、GDPなどオーソドックスな指標に目を向けている。しかし、なかには三井住友フィナンシャルグループの太田純グループCEOのように「速報性も高く、景気の肌感覚に近いとされる景気ウオッチャー調査を重視している」という活用法もあり、ぜひ見習いたい。

また、小宮氏は経済指標を見ていくうえでのポイントとして、「自分が決めた指標を、定点観測することが何よりも重要だ」という。19年12月13日に発表された最新の日銀短観の大企業・製造業のDIはゼロ。19年に入って下がり続けてきたわけだが、20年4月初めの次回発表で、このDIがどのような数字になるのかで、より深刻な状況になるのか、それとも明るい兆しが見いだせるのか、重要な判断指標となりそうだ。

■▼経営トップ35人に聞く2020年の経済見通し①

■▼経営トップ35人に聞く2020年の経済見通し②

■▼経営トップ35人に聞く2020年の経済見通し③

■▼2019年最も印象に残ったニュースTOP10

■▼6月時点でのドル円相場

(プレジデント編集部 伊藤 博之)

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