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「外食費が月360万円」オーナー社長の金銭感覚

プレジデントオンライン / 2020年1月23日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kanawa_Studio

経営者の中には、食事やクルマ、住まいなどの「豪華さ」を自慢する人たちがいる。なぜ彼らは多額のお金を使えるのか。公認会計士の鳥山慶氏は、「オーナー社長のお金の使い方はサラリーマンとは根本的に異なる。彼らが使えるのは役員報酬だけではないからだ」という――。

■サラリーマンと経営者の最大の違いは「使えるお金」

サラリーマンと経営者ではなにが違うか。公認会計士である私は、最大の違いは「使えるお金」の差にあると考えています。

給与が同じ700万円のサラリーマンと経営者を比較してみましょう。700万円のサラリーマンは、そこから社会保険料や所得税などを差し引かれ、手取りは530万円ほど。それが「サラリーマンが使えるお金」です。役員報酬としてもらう経営者の給料も、手取りが530万円になる点はサラリーマンと同じです。

しかし、経営者の場合、例えば売上高が3億円だとすれば、その3億円が「経営者が使えるお金」となります。

株式会社は、所有(株主)と経営(取締役)は分離しており、行き過ぎた役員権限は両者の利害対立、すなわちエージェンシー問題を引き起こします。日産の元会長のゴーン氏に対する高額過ぎる役員報酬や経費の使い込み、不正な隠蔽工作などは、本来、経営のプロとして委任を受けはずの役員が、私利私欲を追求して依頼主の株主価値を毀損した例です。

しかし、所有と経営が一致するオーナー企業は、両者の利害対立は存在せず、株主と経営者の両方の立場から利益最大化を図れるため、経営の選択肢の幅は広いのです。

サラリーマンと経営者では使えるお金が違う結果、両者のお金の使い方や考え方も全く異なります。

どういうことか。具体的に説明していきましょう。

■経営者が月300万円も「外食費」を使う理由

生活の中で最も支出が多い項目は食費です。総務省統計局が発表している家計調査によると、2017年の1世帯当たり食費は約62,038円/月で、全体の支出項目の内25%程を占めます。従って、一般的な家庭では特に節約の工夫を凝らす支出項目でもあります。

どうすれば節約ができるか。ひとつは自炊でしょう。弁当や作り置きに励み、総菜などはできるだけ買わない。または「飲み会」などの交際費を減らすという選択肢もあるでしょう。

一方、経営者には食費を節約するという考え方はあまりありません。これは、経営者にとって食費とは、単なる生きていくための支出ではなく、投資だからです。

例えば、筆者の知人の経営者は外食に月360万円を費やしています。彼は飲食業含む複数の事業を運営しており、日に2回も夕食をとることもあるそうです。ある日は19時頃に得意先との会食に出掛けた後、22時にオフィスに戻って打ち合わせをし、今度は残業していた従業員数名を連れて食事に出掛けていました。

なぜそれほどの支出が可能なのか。それは前者の支出は交際費として、後者の支出は会議費または福利厚生費として、会社の経費にしているからです。いわば売り上げを生み出すための投資といえるので、これほど高い金額を食事にあてても決して損ではないのです。

経営者をしている筆者の知人へ聞き取り調査をして作成。複数の会社での支出であり、1社だけではない点に留意

■競合店調査も「研究開発費」として経費になる

この知人の月の飲食費は、従業員や他の役員陣とのランチミーティングやディナー、得意先への接待、競合調査や、料理人の引き抜きのためのリクルーティング、イベントなどその内容は多岐にわたります。

単なる食事も、会議や商談の時間にしてしまえば立派な「投資」です。多忙な経営者であれば、ランチの時間も幹部社員から報告を受ける貴重な時間。ビジネスが拡大する限り、得意先数も増え、他社との会食回数も必然的に増えます。他経営者からの紹介で仕事の依頼を受けることも多く、他社とのコミュニケーション時間は、会社経営上重要な時間です。

調査や研究開発という時間とお金の使い方もあります。先ほど述べたように、この知人は高級飲食店を経営するオーナーという顔も持ちます。そのため、本店レストランの店長と共に、新規の競合店や新メニューの調査にもよく行きます。

事業拡大のためのリクルーティングにも精力的です。地方の個人有名店へ訪れ、東京での出店に興味がないか勧誘も行っています。これらのレストランで取る食費は、いわば事業拡大のための研究活動といえます。

このように、月360万円という非常に多額の飲食代は、飲食事業を行っているからこその結果といえる側面もあります。しかし、一般的な会社でも、社内外の人との食事は「会議費」または「交際費」として経費処理することができるのです。

■このケースでは年1300万円近くも節税できる

そして、従業員への福利厚生としても活用できます。2019年の年末、ネット上で「#忘年会スルー」という言葉が話題になりました。「会社の忘年会に自費で参加するべきという風潮はパワハラではないか」という考えが背景にあるようです。確かに、強制的な忘年会参加は、昨今の若者には好まれないでしょう。

しかし、経営者が費用を負担してあげれば、従業員満足度を上げるための施策になるかもしれません。楽しい忘年会を通じて、社内コミュニケーションが円滑になる、来年度も頑張ってもらえるよう鼓舞する、自社へのコミットメントを強めてもらうという狙いがあります。つまり、従業員に対する投資や慰労なのです。

さらに、節税効果も期待できます。損益計算書上、これらの経費は営業上必要な支出という側面だけではなく、支払う税金を抑制できるのです。

例えば、1000万円/月の売上に対して、約30%の法人税が課された場合、納税額は300万円/月です。一方で、経費として認められる費用360万円を売上から差し引けば、課税対象額は640万円/月となり、それに30%の税金が課されます。結果、納税額は192万円/月となります。

もちろん、架空計上や業務と無関係な支出は税務上否認されますが、上手にお金を使うことで108万円/月、年間を通じて1296万円も節税することができるのです。

■なぜ前澤氏は「4人で500万円」の食事をごちそうしたか

サラリーマンと経営者のお金の使い方の比較を通じて、それぞれの特徴が見えてきます。サラリーマンは消費にお金を使い、片や経営者はお金を稼ぐためにお金を使っています。

ZOZO前社長の前澤友作氏は派手にお金を使うことで知られています。タレントの出川哲朗が2018年12月にテレビ番組『アッコにおまかせ!』(TBS系)に出演した際、「前澤氏から4人で500万円近くする食事をごちそうされた」と発言していました。また、同氏はバスキアの絵を123億円で落札し、森アーツセンターギャラリーで展示していました。

これらは浪費家のようにも思われる行動ですが、ツイッターでは「お金は使えば使うほど増える」とも語っています。

1回の食事で500万円使ったという話の真偽のほどは不明ですが、私はあながち嘘とも思いません。なぜなら、経営者の派手に見える支出の背景には、「経費」と「資産」という2種類の考え方があるからです。経費とは、売り上げを増やすために必要な支出であり、先述の交際費、会議費、福利厚生費や旅費交通費が当たります。また「資産」とは、会社の売り上げを生み出すための財産であり、設備や車の購入費用が当たります。

経営者の支出の大部分は、この「経費」と「資産」となるよう意識されており、これら投資になるもの(将来の収益に貢献するもの)は、高額でも惜しみません。逆に「経費」や「資産」にならない、単なる浪費は1円でも嫌がるものなのです。

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鳥山 慶(とりやま・けい)
鳥山総合公認会計士事務所(KT Total A&C)代表
1985年生まれ。公認会計士、行政書士。慶應義塾大学卒業。Big4(大手会計士事務所)で、法定監査、IPO支援、ターンアラウンド、事業承継等を経験。その後、外資系戦略コンサルティング会社でM&A戦略、費用削減戦略、新規事業立案等に従事。

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(鳥山総合公認会計士事務所(KT Total A&C)代表 鳥山 慶)

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