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茂木健一郎「なぜ、「アナ雪」に「白馬の王子」がいないのだろうか」

プレジデントオンライン / 2020年2月11日 11時15分

新作のチャリティー上映会では、秋篠宮家の2人のプリンセスも鑑賞をされた。(時事=写真)

■『アナ雪』に「白馬の王子」がいない理由

大ヒットした映画『アナと雪の女王』の続編、『アナと雪の女王2』が公開され、たくさんの観客を集めている。

『アナと雪の女王』の中で歌われ、単独の曲としても流行した『レット・イット・ゴー~ありのままで~』を用いた予告編を劇場で見たときの衝撃は忘れられない。アナのお姉さんであるエルサが1人で氷と雪の城をつくるシーンで、これは歴史に残る作品になると直感した。

『アナと雪の女王』が好きだという幼い子ども、特に女の子の話をよく耳にする。夢中になって、何度も見ているとも聞く。続編もまた、繰り返し見られる古典になっていくのだろう。もちろん、大人でも大好きという人はあちらこちらにいる。

『アナと雪の女王』が人々の心を惹きつけた理由は何か?

1つには、そこに描かれていたのが「未来」だったということもあるのかもしれない。とりわけ、女性の生き方の未来である。

アナもエルサも、王女(プリンセス)さま。「王女もの」は、伝統的には、素敵な王子に会って恋に落ち、めでたく結ばれて物語が終わるということが通常であった。王女の側は経験もなく、弱々しく、一方王子は経験豊富で力強いというパターンで描かれることが多かった。王女は受け身で「白馬の王子」を待つというのがおなじみの展開だった。

『アナと雪の女王』が画期的だったのは、そのような安易なストーリーを打ち破ったところだろう。

■王子さまは、実は「偽り」の存在であった

王女であるアナは、確かに王子に会って、恋に落ちた。しかし、その王子さまは、実は「偽り」の存在であった。代わりに純朴な青年と恋をして、こちらのほうが「真実の愛」であるという物語仕立てになっていた。

一方、お姉さんのエルサのほうはもっと進んでいて、そもそも王子さまのような存在を必要としない。最初から、一人立ちできるような強いパワーを持っていて、むしろそのエネルギーをコントロールすることに悩んでいる。しかし、そんなエルサ自身の問題を解決するために、「白馬の王子」は必要ないのである。

『アナと雪の女王』のアナとエルサは、このように女性の生き方の2つの可能性を示している。そして、そのどちらも女性の生き方、私たち人間の共生の仕方を考えるうえでの「未来」だからこそ、多くの子どもたちを魅了したのであろう。

2人の性格が違うのもいい。ちょっと普通の女の子っぽい、恋愛もする、しかし男性に頼ってばかりではないアナ。あり余るパワーと存在感を持ち、自分を支えてくれる男性など必要ないエルサ。少し違う2人の女性像を描くことで、幅広い層にアピールすることに成功した。

続編の『アナと雪の女王2』でも、アナとエルサのこのような組み合わせの魅力は活かされているようだ。未来の私たちの生き方はどうなるのか。女性だけでなく男性も、ジェンダーに関係なく触れたほうがいい作品である。

映画に限らず、さまざまな商品やサービスを開発するときには、人々の生活の「未来」を思い浮かべるのがいい。

これまでのやり方に変わる新しい感性、ライフスタイルを提示する「提案型イノベーション」が世界を変える。映画の中のエルサの魔法のように鮮やかに、人々の少し先の「未来」を提案することが大ヒットにつながるのだ。

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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。『幸せとは、気づくことである』(プレジデント社)など著書多数。

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(脳科学者 茂木 健一郎 写真=時事)

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