世帯年収1500万"頑張る自分にご褒美"で大崩壊

プレジデントオンライン / 2020年1月23日 9時15分

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ともに正社員として働く50代夫婦の年収は合わせて約1500万円。夫は起業を計画しているが、貯蓄が乏しい。原因は、給料・ボーナスのすべてを使い果たす浪費家計にある。ファイナンシャルプランナーの横山光昭氏は、「別財布の夫婦は“働いて頑張る自分にご褒美”と称して浪費しやすい」という――。

■7年後の起業をもくろむ50代夫婦がお金を貯められないワケ

「定年前には起業をして老後の生活を安定したものにしたいのですが、なかなかお金が貯められず、起業のための準備金ができません」

こう言って相談に来たのは、中小企業の役員の辻井俊介さん(52・仮名)です。子供2人は同居していますが大学1年生と4年生で手がかからず、妻の夕子さん(50・仮名)は別の会社で正社員として働いています。

夫婦が互いに50歳をすぎたところで、定年後の暮らし方を考えようと話をしたところ、「今の生活レベルは変えたくないよね」ということで意見が一致しました。

俊介さんの会社には再雇用の制度がありますが、この形で働くと収入が半減するのは必至。妻が定年した後も夫側に収入がないと現状を維持できません。そのため、今の仕事を生かして起業すれば、顧客も少しはついてきてくれて、収入が再雇用よりいいのではないか。また、夕子さんも定年後はその仕事を手伝うようにすれば、より収入増につながるのではないかと考えたのだそうです。

実際に、起業するまでにはあと7年くらいの時間的猶予がありますが、蓄えや将来的に入ってくる予定のお金が多くはなく、元手としてはやや心もとありません。

現在、手元にある現金は230万円。俊介さんは役員ですが、これから収入減少のリスクがあります。残る資産は約600万円分の会社の持ち株。退職金は企業年金だけで構成されている方式で約1000万円。夕子さんの会社も退職金はありますが、それほど期待できないようです。

■なぜ手取り1000万円を全部使い果たしてしまうのか

そうなると、起業までにコツコツ貯めるしかありません。

手取り収入は夫婦合算で約85万円(夫:58万2000円、妻:26万5000円)あり、支出は住宅ローン(13万8000円)や食費(12万2000円)を含む約55万円とのこと。つまり、毎月30万円もの余剰金があったのです。また、夏と冬には夫婦それぞれにボーナスが出ています。その総額は年200万円ほどということでした。

どう考えても黒字家計なのですが、「あまり貯蓄が増えていないんです……」と俊介さん。早い話、余剰金やボーナスを使い果たしてしまっていたのです。整理すると、世帯年収はおよそ1500万円、手取りが1000万円。そして家計で把握している生活費が月55万円×12カ月で年660万円となっているほか、残りの340万円(余剰金)とボーナス年200万円の計560万円もどこかへ消えてしまっているのです。

収入が多いので、生活費がある程度膨らんでいても、仕方がない部分があります。でも、家族4人で手取り年収1000万円がほとんどなくなってしまう現状は大問題です。

■「年間で赤字でなければ、ま、いいか」と考える「どんぶり勘定」

そこで支出の状況を確認しました。

家計管理は完全な夫婦別財布でした。支出をうかがいながら出来上がった家計表は、夫婦それぞれの支出内容を聞いて合算したものです。費目によっては支払い担当がひとりに確定しているものもありますが、多くの費目は夫婦それぞれが負担しており、家計管理が全くできていません。

写真=iStock.com/hoozone
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これまで何の縛りもなく、自由にお金を使ってきました。月ごとに収支を管理するのではなく、「年間で赤字でなければ、まあ、いいか」と考えている「どんぶり勘定」でした。

当然、貯蓄は金額を決めておらず、気が向いた時に共通の口座に入金する仕組み。これでは貯金するのは難しいでしょう。

では、年400万円近くの「余剰金+ボーナス」は何に使っているのでしょうか。

それは主に大学生の子供の学費でした。2人分で年約250万円。長男は俊介さん分、次男は夕子さん分というように担当を決めていたそうです。この学費のほか、帰省費や旅行費なども「余剰金+ボーナス」から出費していました。

■「自分の頑張りにご褒美」という巨大な浪費

収入があるのに貯蓄が少ない辻井家の失敗の最大の原因は「収支管理を年間でする」ことです。赤字が出ていないかという家計管理は毎月するのが原則です。一定の貯蓄をしながら毎月家計を黒字にしないとズルズルと使ってしまいますし、貯金もままなりません。

辻井家は確かに毎月黒字収支でしたが、入ってくるお金すべてを使ってしまった。収入が多いので、子供の学費も、夫婦それぞれで毎月計画的に積み立てていれば、貯蓄もでき、定年後の起業プランも明るいものになったと思われます。

メタボ家計BEFORE→AFTER

毎月の支出については、まず、過剰にかかっている食費を減らす必要がありました。夫婦2人とも勤勉に働いているのですが、“働いて頑張る自分にご褒美”と称して浪費してしまう傾向があるようです。そこで、一般的な収入における4人家族の理想の食費を参考にしてもらい、ぜいたくな食事内容を改めるきっかけにしてもらいました(月12万2000円→9万1000円)。

また、最近普及が進んでいるスマートフォンのQRコード決済の利用で支出が増えていた「生活日用品代」も、購入の仕方をアプリ上から週1回振り返っていただき、無駄を防止することにしました(月2万1000円→1万2000円)。

■8万円以上もムダな浪費がカットできた

そのほか、月4万円以上もコストがかかっていたのが「娯楽費」でしたが、この主な内訳は「気晴らしドライブ」。ちょっと出かけたついでに買い物や飲食をしていたので、費用がかさんだのです。よって、ドライブの頻度を減らしました(月4万1000円→2万4000円)。

すると複数の費目の支出が減り、合計で8万円強の支出削減に成功しました。それによって、毎月の余剰金は40万円近くとなりました。

家計引き締めとともに旅行回数なども少なくしたため、余剰金を使い果たすことはなくなり、着実に貯金できるようになりました。子供が大学を卒業すれば、それも学費分も貯金に回せる可能性が高い。となれば、夫婦の懸案である、将来の起業のための準備金不足も少しは解消されるのではないでしょうか。

■夫婦別財布の世帯は定期的な「お金会議」が必須

辻井さん夫婦のケースを見てわかるように、夫婦別財布で各自が管理することで、世帯全体の収支に関しての共有ができないケースは珍しくありません。夫婦で毎月のお金の使い方や、貯蓄ペース、老後の働き方、暮らし方について考えをすり合わせることが大事です。

写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

収入があると、支出することが「自分の頑張りを認める」ことにつながると感じる人も多いですが、それは巨大な浪費となって、自分の首を絞めてしまうことにもなりかねません。

たくさんの収入があれば、貯蓄できる、資産ができる、ということではありません。やはり貯めるには自分なりの仕組みやルールを作らなければ、うまくいかないのです。逆に言えば、たとえ収入が少なくても仕組みやルールがあれば、貯蓄も資産もできるということなのです。

■【メタボ家計 家計費コストカット額ランキング】

1位 -3万1000円 食費
ぜいたくな食事であったことを自覚し、自炊を増やしながら食費を抑える意識をした
2位 -1万7000円 娯楽費
ドライブついでの買い物や飲食代などが多かったが、ドライブ頻度を減らすことで娯楽費も減った
3位 -1万3000円 水道光熱費
点けっぱなし、流しっぱなし、といっただらしない使い方を家族全体で改めた
4位 -1万1000円 車関係費
ブラブラと目的なくクルマに乗ることを控えたため、燃料費などが減った
5位 -9000円 生活日用品
QRコード決済で買い物しすぎの状態だったが、使いすぎを夫婦ともに自制した
6位 -3000円 通信費
スマホの契約をより割安なプランに見直した

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。各種メディアへの執筆・講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし、著作は110冊、累計330万部となる。個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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