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嵐の東京五輪ソングで紐解く「大ヒットの法則」

プレジデントオンライン / 2020年2月16日 11時15分

「NHK紅白歌合戦」で人気グループ嵐が『カイト』を披露した国立競技場。(Natsuki Sakai/AFLO=写真)

■嵐の五輪ソングで紐解く「大ヒットの法則」

2019年年末の「紅白歌合戦」で、米津玄師さん作詞作曲の『カイト』が披露された。歌ったのは、嵐の皆さん。

『カイト』は、「NHK2020ソング」であり、東京オリンピック、パラリンピックが行われる20年に、NHKの関連番組を通して何度も耳にするであろう楽曲である。

『カイト』を初めて耳にして、皆さんはどのような印象を持ったかと思って、ツイッターのアンケート機能を使って質問してみた。回答から、それぞれの人が、初めて聴いた印象をいろいろと探っていることが伝わってきた。

ある楽曲を初めて耳にするときに脳の中で起こっていることは極めて興味深い。何しろ今まで聴いたことがない作品だから、脳はなんとかしてそれを理解し、印象を定着させようとする。

その際に、脳の側頭連合野に蓄積された過去の音楽体験、楽曲の記憶が総動員される。似たようなメロディーが想起される一方で、楽曲の「新奇性」もまた、脳の中で注意の回路を活性化する。好ましい新奇性であると知覚されると、ドーパミンを中心とする脳の報酬系が活動することになる。

初めて接する刺激が脳にどのような影響を与えるかということは、つまりは「初速」の問題である。その立ち上がりが、ヒットするかどうかを左右する重要な因子となる。

メッセージアプリとして日本で圧倒的なシェアを持つLINEのリリース時に社長をされていた森川亮さんに以前お話を伺ったことがある。森川さんの会社では、それまでも様々なアプリを公開してきたけれども、LINEは立ち上がりの初速が劇的に好評だったという。それを見て、大ヒットを確信したと森川さんは言っていた。

■脳の印象の初速が大切である

ある商品やサービスがヒットするかどうかを考えるうえでは、脳の印象の初速が大切である。そのためには第一印象についての感度、自分自身を見つめるメタ認知を高めていかなければならない。

紅白歌合戦で『カイト』が披露された瞬間は、まさに第一印象の初速を測る絶好のチャンスだった。日々の生活の中で、初めて出合うものの印象をきっちりと把握したい。

初速の領域が終わると、次に問題になるのは「単純接触効果」である。

NHKのオリンピック、パラリンピック番組のテーマ曲ともなると、20年、『カイト』を耳にする機会はたくさんあるだろう。刺激の内容に関係なく、接触する回数が増えると好感度が増していくというのが「単純接触効果」である。

NHKの朝ドラのテーマ曲など、初めて聴いたときにはそれほどでもないのに、毎日耳にしているとだんだんそれなりに好きになっていく。これが単純接触効果であって、だからこそ、何かを仕掛ける側は、人々が接触する回数をなんとか増やそうとする。

街を歩いていて目立つ政治家のポスターも、単純接触効果をねらったものである。とにかくポスターを張って顔を覚えてもらえれば、政策や人物に関係なく好感度は増してしまう。

もっとも、単純接触効果による好感度の増加、ヒットにも限界がある。本当に人々にあまねく愛され、大ヒットする存在は、やはり第一印象の初速が大きい。

大当たりする作品は、第一印象の初速と、単純接触効果のかけ算で生まれる。

20年は、どんな流行が生まれるのか。第一印象の初速に注目したい。

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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。『幸せとは、気づくことである』(プレジデント社)など著書多数。

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(脳科学者 茂木 健一郎 写真=Natsuki Sakai/AFLO)

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