金メダル最有力の女性空手家「夜カレーとオルゴール」が勝利の方程式
プレジデントオンライン / 2020年2月24日 11時15分
■空手が新競技に。人生を懸ける1年
2020年は、自分の空手人生、そして自分自身の人生にとって、これ以上ないくらい特別な年。今あるすべてを懸けています。
2020年東京オリンピックから、空手が新競技として採用されます。自分にとって、この1年は覚悟の1年です。
新競技として加わったものの、空手界にとっては、最後のオリンピックとなる可能性もあります。だからこそ、私たち出場する選手たちは責任を持って臨みます。空手の普及にも貢献したいという思いもあります。
金メダル候補として私の名前が挙がっていることは、とてもうれしいし、ありがたく感じます。
自分の中で、優勝することは常に心の中にあることだし、いつでも揺らぐことのない目標です。
日本中の期待に応えるだけの努力は、人並み以上にしなければいけないと思っています。
勝ち続ける秘訣や集中力についてですが、私はその都度全力でぶつかっていくタイプです。先を考えれば考えるほど、ミスをしやすく、手も抜きやすくなる。
だからこそ、今どれだけ自分の全力を出せるかにこだわります。それが勝利を生む秘訣であり、集中力、強運を生み出す私のエネルギー源です。
全日本選手権では19年7連覇を成し遂げましたが、優勝しよう、勝とうという思いよりも、自分が「こういうことをしたい」という目標や課題を課して試合に臨んでいました。
目標を持つことはとても大切です。最終的な目標を持ちながらも、今目の前にあることに、どれだけ全力を出せるか。これが一番大事なことです。
私の場合、結果として、何年かたって振り返ると連覇していた、気づいたら連覇、という感じですね。
■試合中に停電でも動じず続行
試合前の習慣についてですが、私の場合は、これといった習慣は存在しません。型にハメてばかりだと、何か起きたときにテンパってしまい、対応できなくなります。
試合中は何が起きるかわかりません。試合の状況や、万が一トラブルが発生したときなど、臨機応変に対応する必要があるからです。
特に、海外の大会だとハプニングは当たり前です。試合中に電気が落ちることもありました。それも自分の演武中にです。でも、テンパったらダメ。何事もなかったかのように演武を続けました。
適応能力がないと試合はうまく運べません。予期せぬことが起きても、しっかり向き合っていきます。
メンタルを鍛えるには、「その環境を受け入れること」が大切です。周りの状況がこうなって困っているから、どうにかしてほしい、と他力本願になるのではなく、困った状況になっても、ある程度自分から溶け込んでいくこと。
そのとき、自分の主軸は絶対変えません。自分を打ち消して環境に溶け込むのではなく、環境と打ち解けながらも自分の軸はしっかり守るようにしています。
状況に合わせなければいけないので、しっかり自分と向き合うこと。イメージトレーニングも絶対に欠かせません。大会によって、足場が全然違います。滑るときもあれば、沈むときもある。会場の下見など、準備をしっかりして、現場でどう適応するのかが大事なのです。
■絶対に聞く曲はファンモン「あとひとつ」
試合前日の過ごし方ですが、午前中に練習(最終調整)をして、お昼から試合会場へ出向きます。雰囲気を見たり、マットの感じなど、どんな感じかチェックします。
そういった下準備は必ずします。環境をしっかり受け入れる準備をする感じですね。
夕食は必ずカレーを食べます。試合の当日は、しっかりした量は食べられないので、前日に炭水化物をしっかり食べて、エネルギーを補給します。ちなみにお酒は普段から全く飲みません。
寝る前には、ビデオを見返したり、練習でコーチに言われたことを振り返ります。いただいた手紙を読むこともありますね。
最後は音楽を聞きながら、ストレッチです。
ファンキーモンキーベイビーズの「あとひとつ」は絶対に聞きます。あとはオルゴールを聞いて、心身ともにリラックス。そして眠りに就きます。
試合前日は、夜8時に寝ることを心がけています。睡眠時間は8時間くらいです。しっかり寝るようにします。
起床時間は大会の6時間前。私の試合が朝10時から始まることが多いので、だいたい4時起きです。
起きてから支度をします。メイク、ヘアセットの時間をだいたい1時間くらい見ています。
そのあと朝ごはんを食べます。運動量が多いので、胃に負担がかからず、消化のいいものを食べるようにしています。
海外遠征でも基本的にお米を食べます。栄養面は母が見てくれています。ちなみに好きな食べ物はお肉です。
朝食後、ウオーミングアップをします。会場では動けないこともあるので、必ず会場に入る前にアップをします。
基本的なベースの練習をしておきます。体を起こす運動と、突き蹴りなど、普段から行っている基礎練習を凝縮したものを。終わったら試合会場へ出発します。
■金メダルへ一直線!
試合には緊張感を持って臨みますが、あまり緊張はしないタイプです。緊張しすぎて自分の演武ができない、ということもないですね。
強くいられるのは、母の支えがあってのことだと思います。周囲の人の中で、母が一番厳しいんです。学生時代には「やめたいんだったら、やめなさい!」と活を入れられることもありました。
母は私の性格をよく知っているので、いつも適切なタイミングで正しい言葉をかけてくれます。
家に帰ったら、母が必ず今日あった出来事を聞いてくれる。これが自分にとって大きな心の支えになっています。
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1993年、大阪府生まれ。兄の影響で小学校3年から空手を始める。世界選手権は2014、16年で連覇。アジア競技大会は14、18年で連覇。全日本選手権は13年から7連覇。20年東京オリンピック出場内定見込み。ミキハウス所属。
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(清水 希容 構成=プレジデント編集部 撮影=小西健三)
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