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感染症専門医が警告!新型コロナウイルスから身を守るため、マスクを買うよりはるかに重要なポイント2つ

プレジデントオンライン / 2020年2月18日 17時15分

国立がん研究センター 中央病院 感染症部長 岩田 敏さん

中国湘北省・武漢市に端を発する新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)の流行が続いている。2月13日には国内初の死亡例が報告された。すでに国内でも感染が始まっていると考えて行動する時期がきたようだ。国立がん研究センター中央病院感染症部長の岩田敏先生に、これからの注意点についてお話を聞いた(取材日:2020年2月12日)。

■油断は禁物だが、現時点では過度な心配は不要

中国湘北省・武漢市で新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)の流行が報告されてから、およそ2カ月が過ぎた。2020年2月13日12時現在、中国国内の患者数は6万人にせまる5万9千805人、死亡者は1,367人に達した。日本国内の感染者数は28人(クルーズ船内での感染例を除く)だった。

ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センターは、COVID-19の広がりをリアルタイムで追えるマップを公開している。現時点では中国国外での感染例は最小にとどまっているが、油断は禁物だ。

「現在、日本国内の感染者は全員が中国本土からの帰国者や旅行者と接触した人に限られ、きちんと足跡を追えています。つまり、立ち寄り先や濃厚に接触した人をトレースして、入院、隔離するなどの対応が取れているわけです。ただし、感染ルートをはっきりと追うことができない感染例が広がった場合は、日本国内の警戒フェーズを一段階あげる必要があります」と岩田先生は指摘する。

■感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」

新型コロナウイルスの主な感染経路は①「飛沫感染」と②「接触感染」の二つで、①の「飛沫感染」は感染者のくしゃみや咳のしぶきと一緒に放出したウイルスを、第三者が吸い込んで生じる。

②の「接触感染」は、感染者が咳やくしゃみのしぶきなどで汚染された手でドアノブや手すり、共有パソコンなどの備品を触ると接触表面にウイルスが付着し、その表面に触れた第三者の手や指を介して、口や鼻の粘膜から感染するというもの。汚染された手で目をこすれば結膜からの感染リスクも生じる。今の時点で、備品表面に付着した新型コロナウイルスがいつまで感染力を保っているかはわからないが、金属やプラスチックなどの表面では数日間は生きている可能性があるので、注意をするのに越したことはない。

■予防にはまず手洗い、マスクは「他人にうつさない」ため

ただ、COVID-19が発生してからマスクの品薄状態が続き、SNSで手作りマスクの作り方が紹介されているほどだ。同時に「マスクに感染を防ぐ効果はない」という噂も飛び交っている。その辺はどうなのだろう。

「マスクはくしゃみのしぶきを吸い込まないためというより、感染者がしぶきを介して他人に移さないための手段という側面が強いですね。感染予防にはマスクよりも、咳エチケットや石けんやアルコール消毒液での手洗いが大切です。特に帰宅した時や食事の前には、指先や爪の間も念入りに洗いましょう」。

手や指を洗う時は石けんを塗りつけて、物理的にごしごしと手をこすり合わせた後、流水で洗い流すといい。アルコール消毒液やジェルを利用する際は、指から甲までしっかり擦り込み、手のひらに吹き付けたアルコールをひっかくようにすると指先や爪の間も消毒ができる。

手作りマスクを使う場合は、内側のガーゼをこまめに取り替える、外側は水洗いして乾燥させ再利用するなどで対応しよう。ただし、飛沫に含まれるウイルスはわずかな隙間から入り込む。むしろ咳、鼻水、くしゃみ、発熱など感冒様症状がある人に優先的にマスクを回すことが、結果的に感染拡大を防ぐことにつながりそうだ。

■中国・湘北省など流行地から帰国したら14日間は自宅待機に

今後は企業の対応も迫られるだろう。具体的には中国への出張を延期したり、駐在員を一時帰国させるケースも増えそうだ。このほか時差通勤や在宅ワークへ切り替えるなど、感染の広がりを防ぐ手立てが求められる。

「帰国後は症状の有無にかかわらず、14日間は自宅待機や在宅ワークにするといいでしょう。どうしても出社する必要がある場合は、マスクの装着と手洗いは必須です。中国から来日した方についても同様です。もちろん、症状がある場合は近くのクリニックで良いので病院を受診してください。その際に事前に中国への渡航歴や患者さんと接触した可能性を申告しておくと、混乱が生じません」

■基礎疾患がある人は若くても要注意!子どもは軽症例が多い

「未知の感染症」だったCOVID-19だが、次第に概要がわかってきた。専門家の意見をまとめると、2002年に発生した同じコロナウイルスが原因のSARS(重症急性呼吸症候群)より潜伏期間が長く(4.7日vs.12.5日)、風邪に似た症状がだらだら続いた後に軽快する軽症例から、重症の肺炎をおこす例まで症状は幅広い。全体的な致死率(致命率)はSARSより低いと考えられる(9.6% vs.中国国内2.2%、中国以外1%未満)。

比較でわかるCOVID-19の概要
図表作成=井手ゆきえ

ただし、高齢者や若くても糖尿病や高血圧、慢性の腎臓病など基礎疾患を持っている人、あるいは免疫が低下している妊娠中の女性は重症化のリスクがあるので慎重に経過をみる必要がある。自宅でご高齢の両親を介護している方は、自分が感染ルートにならないように手洗いを徹底しよう。一方、SARSの流行時と同じく子どもは感染しても重症化はしにくいようだ。

■軽症例、無症候例が潜伏? 手洗い、咳エチケットの徹底を

重症化しやすい人が限られているとはいえ、岩田先生はまだまだ油断はできないという。有効なワクチンや特効薬がないうえに、風邪と区別がつかない軽症例や無症候例が「ステルス化」している可能性を否定できないからだ。

実際、武漢市の死亡率が突出したのは軽症の患者が知らずにウイルスを広げ、パニックに陥った患者が病院に殺到したために病院機能がパンクし、院内感染が生じたのではないかと推測されている。実は、SARSや2012年に中東で流行したMERS(中東呼吸器症候群)も病院に勤務する医師や看護師の感染例や院内感染から重症化するケースが多かった。

「今後、感染経路がはっきりしないヒト−ヒト感染例(三次感染)の報告が増えると思いますが、その際はパニックを起こさないことが肝心です。一般の人がとれる対策は手洗いの徹底と咳エチケットです。そこは変わりませんので、自分たちができることをしっかり続けましょう。しばらくは学会や行政からの情報に注意してください」。

感染症はヒトとモノの流れにのってやってくる。日本も世界の流行と無縁ではいられない。私たちも新しい感染症が流行するたびに慌てないよう、意識をかえていく必要がありそうだ。

(医療ジャーナリスト 井手 ゆきえ)

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