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「現在は500年前の大航海時代と同じ」慶應大の白熱教室がすごい

プレジデントオンライン / 2020年4月5日 11時15分

吉田篤生『慶應義塾大学 大学院 SDM伝説の講義 企業経営と生命のシステムに学ぶデザインとマネジメント』(日経BP)

■慶大生に人気沸騰「伝説の講義」を再現した一冊

本書は、著者が慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)で、2011年から17年まで特別招聘教授として担当した「経営・財務戦略論」の講義を紙上に再現した書籍である。著者の講義は学生の間で人気が沸騰し、今も「伝説の講義」として語り草になっているという。

「経営・財務戦略論」といっても、本書は財務諸表の読み方などを教える一般的な講義・書籍とは、明確に一線を画している。

世界の経済、政治、社会システムが500年に1度の大変革期を迎えている今、企業の経営はどうあるべきか、ビジネスリーダーはどこに向けて舵を切るべきなのか。そんな切実で本質的な問題について、主に創業100年超、あるいは100年近い日本の長寿企業の経営やリーダーシップのあり方を紹介しながら指針を示しているのだ。

しかもその内容は、著者の税理士としての豊富な経験と専門知識だけでなく、物理学や生物学、歴史、哲学などの知識もちりばめられ、具体的かつ刺激的だ。

著者は、現在を500年前の大航海時代になぞらえ、新たな時代への幕が開く直前の混沌の状態だととらえる。例えば経済システムについては、高度な金融技術がマネーゲームの隆盛を招き、深刻な格差を生じさせてしまっている。企業の野放図な成長志向は、環境破壊や地球温暖化の一因ともなっている。

■新たな秩序が生まれる

しかしバランスが崩れたときに調和を図ろうとする力が自然界に働くように、人や企業の経済活動も生態系の中にある以上、必ず揺り戻しが来て、新たな秩序が生まれると著者は明言する。

「そこで生まれるのは、人間重視の世界ではないでしょうか」「企業の間で、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)を取り入れた経営を志向する動きが活発になっているのは、その1つの表れでしょう」

そして、その過程で日本の長寿企業の経営やリーダーシップの価値がますます高まると指摘し、創業1596年、424年もの歴史を持つ日本酒の製造・販売の老舗、豊島屋本店や、創業1924年の工作機械メーカー、西島を紹介する。

では、これら長寿企業の価値とは何か? 著者は重要なキーワードとして「不易流行」すなわち伝統の継承と革新、「共生的共同体組織」すなわち環境に優しく、地域・社会に貢献し、人を大切にする組織と経営を挙げている。その中身は本書の読ませどころの1つなので、ぜひ紐解いてほしい。

本書には「人生哲学を教えてもらった」との受講生の感想が寄せられている。その言葉通り、いかに働くべきかの指針にもなる一冊だ。

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渋谷 和宏(しぶや・かずひろ)
作家・経済ジャーナリスト
1959年、横浜市生まれ。神奈川県立希望ケ丘高校、法政大学卒業。日経BP社で「日経ビジネスアソシエ」初代編集長、「日経ビジネス」発行人などを務めたのち2014年独立。最近の著作に小説『東京ランナーズ』がある。テレビ、ラジオでも活躍。

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(作家・経済ジャーナリスト 渋谷 和宏)

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