1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

近親者の「死後の手続き」をサボると罪に問われる

プレジデントオンライン / 2020年3月14日 11時15分

■サボると罪に問われるので要注意!

遺族にどんな手続きが待ち受けているのかを、図を参考にしながら見ていこう。まず1つ目の面倒な手続きが、近親者が亡くなったら、すぐに医師にその事実を証明する「死亡診断書」を書いてもらい、「死亡届」と一緒に、亡くなってから7日以内に市区町村役所に提出することだ。「その際、死亡診断書のコピーを5~10枚とっておくことです」と、相続実務士の曽根恵子さんはいう。死亡診断書は1通しかもらえないのだが、年金受給停止や葬祭費支給申請などの手続きにも、死亡診断書が必要になるからだ。

また、役所には死亡届と同時に故人の「埋火葬許可申請書」も提出し、葬儀までに「埋火葬許可証」も取得しておく。それがないと、火葬場は遺体を受け入れてくれない。さらに、遺体を荼毘に付した後、火葬場には埋火葬許可証に火葬済みの印を押してもらい、納骨の準備を進める。こうした2番目の面倒な手続きに関しては、「葬儀を請け負う葬儀社に委任すれば、それら一連の手続きを代行してもらえます」と曽根さんはアドバイスする。

さて、初七日が終わっても、まだ気は抜けない。故人が世帯主だった場合、取り急ぎ提出しなければならないのが3つ目の「世帯主変更届」の手続き。相続問題に詳しい司法書士の鈴木敏弘さんは、「亡くなってから14日以内に、市区町村役所に提出することになっています。届け出を怠ると住民基本台帳法違反となり、5万円以下の過料が課せられることもあります」と警告する。

世帯主変更届を役所に提出するのなら、4つ目の故人の健康保険の資格喪失手続きも同時に行おう。そうすれば、窓口は違うにしても、役所に足を運ぶ手間が省ける。故人が国民健康保険に加入していた場合、死亡してからやはり14日以内の届け出が必要で、「国民健康保険資格喪失届」を提出するとともに、健康保険証を返納する。故人が75歳以上で後期高齢者医療制度に加入していた場合も、返納手続きは同様だ。

そして故人が年金を受け取っていた場合は、5つ目の公的年金の受給停止手続きも急いで行わなければならない。「死亡してから、国民年金なら14日以内、厚生年金なら10日以内の届け出が原則です。そのまま受給を続けていると、遺族による不正受給と見なされ、詐欺罪に問われることもあります」と鈴木さんは注意を促す。

具体的には、年金事務所や年金事務所から委託を受けた「街角の年金相談センター」に、故人の年金手帳や死亡届などの必要書類を持っていき、「年金受給権者死亡届」を提出する。「ただし、混雑していることが多いので、訪問前に予約を取ったほうがいいでしょう。自宅から遠い場合、日本年金機構が運営する『ねんきんダイヤル』に電話で相談すれば、郵送でも手続きができます」と曽根さんはいう。

年金事務所か相談センターに出向くのなら、他の手続きもまとめて済ませる。そこで6つ目に必ずチェックしたいのが未支給年金の有無。年金は年6回、偶数月の15日に、その前々月・前月の2カ月分が支給される。「支給されるのは受給者が死亡した月の分までで、3月に死亡した場合、4月にもらえる予定だった2・3月分の年金を、受給者の配偶者や子どもなどが代わりに受け取れます」と曽根さんは話す。

■相続税の申告は死亡後10カ月以内

故人が一人暮らしだった場合、利用していた電気やガス、水道、電話などの公共料金を止める7つ目の一連の手続きも忘れずに。NHKの受信契約をしていたり、クレジットカードの会費を支払っていたりしていたケースも同様だ。「故人の自宅に送られてくる請求書などを確認し、会社の窓口に問い合わせたうえで手続きをするといいでしょう。解約するのなら四十九日も過ぎ、家の整理が一段落した頃が目安です」と曽根さんはいう。故人が世帯主で同居する家族がいる場合は、契約者の名義変更の手続きを行う。

故人がインターネットやスマートフォンを利用していた場合、プロバイダーやアプリの解約手続きも必要になる。しかし、ネット関係の料金は電子決済で、書類での手がかりがないケースも多い。「エンディングノートなどを活用して近親者がわかるように、使っているプロバイダーやパスワードを手帳などに書きとめるよう、生前に頼んでおきましょう」と曽根さんはいう。

■マイナスの遺産が隠されていることだってある

故人の遺言書や遺産を調査し、「限定承認」や「相続放棄」を決めるのは、相続を知ってから3カ月以内と定められている。相続する遺産には、預貯金や株、不動産といったプラスの遺産だけでなく、借金や滞納している税金といったマイナスの遺産が隠されていることだってある。

もしも、プラスの遺産よりもマイナスの遺産のほうが大幅に上回っていたら、想定外の「負の遺産」を背負い込むことになる。それだけに故人の負債の状況を念入りに調べる必要があり、この点については、限定承認の仕組みを含めて後で解説する。そして調査に時間がかかるようなら、「相続の承認または放棄の期間の伸長」を家庭裁判所に申請しておく。これら8つ目の手続きを甘く見ないほうがよい。

故人が年金や不動産の地代、株の配当といった収入を得ていた場合、相続人などが代わりに所得税の申告をする「準確定申告」という9つ目の面倒な手続きが必要になる。計算期間は1月1日から故人の死亡日までで、相続を知った日の翌日から4カ月以内に申告しなければならないので要注意だ。

次に、被相続人(故人)の遺産を相続して相続税がかかるのであれば、被相続人の死亡後10カ月以内に相続税の申告を行い、納付しなければならない。その際に相続権のある人が複数いて、遺言書がない場合は、遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を事前に行い、分け方を決めた「遺産分割協議書」を作成する。万が一、協議が紛糾して決まらないときは、民法上の法定相続分に従って遺産を相続したものと仮定して、各相続人の負担税額を計算する。

そうした過程で行うのが預貯金の解約や名義変更で、「相続人全員の署名・捺印とともに、全員の戸籍謄本や印鑑証明などが必要になります」と鈴木さんは指摘する。これが意外と厄介で、最後10番目の面倒な手続きとなる。相続した不動産の相続登記の手続きについては、プロの司法書士に任せるのがベターだ。先の相続税の負担税額の計算や申告についても同様である。

■手間が省ける法定相続情報証明制度

いままで見てきた一連の相続手続きで何度も必要となる書類が、図に示したものである。まず、被相続人の死亡診断書のコピーに加え、被相続人の連続した戸籍謄本および除籍謄本、被相続人の住民票の除票である。そして、全相続人の戸籍謄本(または抄本)・住民票・印鑑証明は、被相続人が死亡した事実、被相続人と相続人の関係を証明するために不可欠で、死亡診断書のコピーと同じように複数を用意しておきたい。

何度も必要になるので複数枚用意しておきたい書類

「もしも必要書類を1通しか用意していない場合、1つの金融機関で預貯金の名義変更の手続きを終えてから必要書類を返却してもらい、その後で別の金融機関での手続きをしなければならず、時間がかかります」と鈴木さんはいう。

一方で2017年5月からは、「法定相続情報証明制度」も導入された。これは、被相続人と相続人の戸籍謄本や住民票などのデータをまとめて、被相続人と相続人の関係を家系図のような形にした「法定相続情報一覧図」を作成し、あらかじめ法務局に記録してもらう仕組みだ。一覧図の写しは法務局に無料で交付してもらえ、戸籍謄本などの代わりに使える。

そして相続手続きのなかで、しっかりと確認しておきたいのが、先の限定承認・相続放棄で触れた、被相続人の「隠れ資産」と「隠れ負債」の有無だ。

しかし、親が「どこの銀行の口座に、どのくらいの預金があるのか」「預金通帳が、家のどこにしまってあるのか」といった情報がなければ、いざ親が亡くなったときに四苦八苦する羽目になる。そこで銀行や郵便局の通帳、証券会社や保険会社の証書などがないかどうか、故人の家のなかをよく調べてみる。見つからなかった場合、金融機関からの通知がないかをチェックしよう。

万が一、通知がなかったとしても、不安がらないでほしい。図に示したように預金口座を調べる手立てはある。「ゆうちょ銀行の場合は『現存調査』、銀行の場合はいわゆる『全店照会』という方法で、被相続人の口座を探してもらえます。ただし、銀行によっては、全店照会という用語を使わないこともあります」と鈴木さんは話す。

現存調査も全店照会も、相続人(法定代理人を含む)が、戸籍謄本や運転免許証など相続人であることを証明できる書類を持参し、金融機関の窓口に赴いて依頼するのが基本だ。そして口座の有無、口座があった場合は店名や口座の種類、番号を教えてもらえる。ゆうちょ銀行は、貯金残高まで開示してくれるが、銀行は、原則として口座の中身までは答えてくれない。

近親者が残した預金口座を調べる手続き

■隠れ負債を探せる便利な窓口

一方で、隠れ負債の有無についても、できるだけ早く確認しておきたい。前述したように相続放棄するなら、亡くなってから3カ月しか猶予がないうえに、マイナスの遺産がどのくらいあるのかがわからなければ、相続放棄すべきかどうかも決められないからだ。

そして、金融機関からの借金を調べるのであれば、役立つ方法がある。「銀行なら全国銀行協会の全国銀行個人信用情報センター、クレジット会社ならCIC(割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)、消費者金融ならJICC(日本信用情報機構)といった窓口があって、相続人が請求の手続きをすれば被相続人の負債の情報を入手することができます」と鈴木さんはいう。

ただし、個人からの借金などは調べられない。家の整理のとき、借用書などがないかどうかをよく探してみよう。それでも借金の有無がはっきりしない場合、限定承認という方法がある。簡単にいえば、「プラスの遺産を上限として、マイナスの遺産を承継する」という手続きで、もし後で被相続人の多額の借金が発覚しても、相続人が過大な負債を抱える心配はなくなる。

最後に土地を相続する場合は、今後、相続登記の手続きが義務化されることに要注意。これまでは、登記をしなくても罰則がなかったことから、登記費用や手間を惜しんだりして相続登記を怠るケースが後を絶たなかった。その結果、代が替わるたびに法定相続人の間で所有権が細分化され、所有者がはっきりしない土地が増加してしまった。

「そのため法制審議会の所有者不明土地対策案では、相続登記の手続きを簡素化する半面、一定期間内に登記しない場合の罰則などを盛り込む方向で動いています。土地を相続したら、相続登記の手続きも速やかに済ませておきましょう」と鈴木さんは話す。

とにもかくにも近親者が亡くなった後には、行わなければいけない面倒な手続きがうんざりするほどある。一連の手続きの全体像を把握したうえで、必要となる書類についても手続きが滞りなく行えるように事前に準備し、期限が決められたものについてはその期限までに確実に済ませていこう。

----------

曽根恵子(そね・けいこ)
夢相続代表取締役
相続実務士。1987年、相続コーディネート業を開始。相続実務士の創始者として、1万4500件以上の相続相談に対処。『変わる相続』など著書多数。
 

鈴木敏弘(すずき・としひろ)
東京国際司法書士事務所代表司法書士
大学卒業後、大手メーカーに勤務。司法書士を目指して脱サラ。これまで1000人以上の相続・債務整理問題を解決してきた。
 

----------

(ジャーナリスト 野澤 正毅)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください