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「葬儀一式30万円」が計100万円超になるカラクリ

プレジデントオンライン / 2020年5月5日 11時15分

■プロが伝授「葬儀会社」絶対に損しない選び方とは

お葬式には、人生を終えた人を見送るといった大切な意味があります。しかし残念なことに、いまも葬儀のトラブルは後を絶ちません。圧倒的に多いのは金銭問題です。ひと言でいうと「最初にいわれた金額と、最終的に請求される金額が大きく違っている」というものです。

たとえば「葬儀一式で30万円といわれたのに、請求額は100万円を超えていた」ということがあります。これは必ずしも悪質な葬儀社に引っかかったわけではなく、多くの場合、依頼する側が葬儀費用の仕組みをきちんと理解していなかったことに起因します。

葬儀の費用は大きく2つで構成されています。図1の見積書の実例を見てください。まず「葬儀一式」。これが誤解を招きやすいのですが、葬儀一式といっても葬儀全体ではなく、葬儀の一部を意味します。葬儀一式に含まれるのは「祭壇一式」や「棺」「安置費用」「人件費および諸経費」などです。

葬儀の費用には、別に必ず「実費」というのがあります。葬儀をひと通り執り行うために必要な「通夜飲食」「香典返し」「式場利用料」「火葬料」などです。飲食費や返礼品などは参列者の人数によって金額が変わるため、葬儀一式には含まないのが通例です。

そして、この葬儀一式と実費を合計したものが、葬儀社に最終的に支払う「葬儀の総額」になります。この仕組みを理解していないと、「300万円の予算でお願いします」と依頼したところ、300万円の豪華な葬儀一式を用意され、そこに実費が加わって総額500万円を請求されるといったトラブルが実際に起きたりします。

通夜飲食の料金がきちんと計算されているか要チェック。
通夜飲食の料金がきちんと計算されているか要チェック。(PIXTA=写真)

金銭トラブルを避けるうえでもう1つ大事なのは、「見積書」を最低でも2つの葬儀社から取ることです。見積書はお願いすればどの業者でも出してくれます。特に決まった形式はなく、各社がそれぞれのフォーマットでつくっていますが、項目の種類はほぼ共通しています。その見方は後述します。

葬儀のトラブルの背景として、病院に出入りする葬儀社に漫然と依頼するケースが多いことがあります。病院に出入りする葬儀社が悪いということではありません。前述のように見積書を出してもらい、納得して依頼するのであればOKです。ただし、遺族の方は身近な人の死に接して悲しみの中にあり、また気も動転しながら早く手配をしなければと焦ってしまい、よく考えないまま葬儀社に依頼しがちです。

そして、きちんと要望を伝えられず、つい「お任せします」「普通でお願いします」などといってしまう。これらは“NGワード”で、葬儀社の考える普通でことが進んでしまい、その結果、想像していた金額や内容と異なる葬儀になってしまう可能性が大きくなります。支払いの際にもめても、すでに契約書にサインしてハンコを押していれば、どうしようもありません。

そうしたトラブルを避けるには、複数の業者を比較検討して、安心して任せられる葬儀社を選ぶことが何よりも大切です。焦ったり慌てたりする気持ちはわかりますが、ご遺体がすぐに傷むわけではありませんので、いったん気持ちを落ち着かせましょう。病院紹介の葬儀社に見積書をもらったとしても、別にネットなどで調べた近隣の数社から見積もりを出してもらい、比較検討する余裕は十分あります。

■総額だけでなく葬儀一式と実費をチェック

葬儀社から提示された見積書を見る際にはポイントがあります(図1参照)。まず注意すべき点は、葬儀の総額だけを見て納得しないことです。葬儀一式と実費の内容がそれぞれきちんと明記されているかを確認します。

典型的なダメな見積書では、飲食費や香典返しなどの欄が人数分の総額になっておらず、1人当たりの単価だけが記されています。1個3000円の香典返しが100人分必要であれば30万円です。通夜飲食も同様で、これらが見積書に反映されていないと、最終金額が数十万円単位で違ってきます。図のように、通夜飲食39万円(130人前)、香典返し36万円(3000円×120人)など具体的に計算してあるかを確認しましょう。

また、式場についても人数によって規模が違ってくるため、見積書では想定の式場利用料が記入されていない場合があります。100人規模の式場代(2日間)は民間だと20万~30万円が相場なので、最終的な総額もそれだけ増えることになります。忘れずに要チェックです。

仏式で葬儀を行う場合、気になるのがお布施でしょう。お布施は葬儀社とは別枠になります。お布施には読経と戒名の一式が含まれ、戒名の位で価格が変わります。ただし、お布施には定価がなく、いくら包めばよいのかが難しいのも事実です。菩提寺のご住職に尋ねても「お気持ちでけっこうです」といわれることが多いかと思います。

そこで図2のお布施の相場の目安を参考にしてみてください。なお、家計が厳しいなどの事情がある場合、普段から親しいお付き合いをしている菩提寺ならば相談しましょう。お布施はお金を包むだけではなく、「気持ちの表れ」です。まずは「お伺いを立てる」ことが大切です。

どうしても気になるお布施の相場

■密葬なのに式場大看板はムダ

私は葬儀相談員という職業柄、葬儀の節約テクニックを聞かれることがあります。葬儀費用をケチるなんてと思うかもしれませんが、ケチるのではなく「節約」することは大切です。私の考える葬儀の節約術とは、「ムダなお金は使わない」というシンプルなものです(図3参照)。遺族が納得して支払えばムダではありませんが、後で不要だったと感じたらムダになります。

葬儀料金を節約するための着眼点

ムダか否かは、明細書の全項目について葬儀社から説明を受けて判断します。家族だけの密葬を希望しているのに、見積書に「指さし案内看板」「式場大看板」が記載されているケースがたまにあります。そのまま依頼すると、ご近所に知らせたくないにもかかわらず、式場の前に大看板が掲げられて知れ渡ってしまいます。希望しないものにまでお金を払うのはムダです。

また、式場に火葬場が併設されている場合、ご遺体はストレッチャーで移送すれば済むのに、見積書に霊柩車が記載されていることがあります。そのまま依頼すると、ご遺体を霊柩車に乗せていったん式場を出て、外をぐるっと一周回って同じ式場内の火葬場に運ぶだけなのです。それで5万~6万円というのは非常にムダです。

エンバーミング(遺体衛生保全)も、「いまはみなさんされていますよ」といわれると、お願いしがちです。しかし、一般的なものではありません。これも10万~20万円かかります。節約術としては、ほかに花祭壇を供花組み込みにする方法があります。葬儀社によっては、外部からいただく供花を花祭壇に利用でき、たとえば1基1万5000円の供花であれば、20基で30万円分の祭壇費用が節約できます。

通夜飲食も、参列者数に対してどれだけ用意するのかで大きな差が出ます。料理が足りなくなるのを心配して人数分より多めに用意することも多いですが、たいてい余ります。一般的に参列者の想定人数の5~6割が適正だとされ、100人の一般参列者であれば50~60人前。1人前3000円として、半額の約15万円の節約になります。

「予算」を組むのもおすすめです。葬儀費用は「あれも、これも」と足し算で考えやすいのですが、事前に予算を決めておくと、その範囲内でできることを検討しようとする意識が芽生えます。まずは「総額100万円以内で見積もってください」と相談しましょう。

■悪い葬儀ほど法事のたびに思い出す

最終的に葬儀社を選ぶに当たっては、費用以外にも大事なポイントがあります。特に次の3点に留意してください(図4参照)。

葬儀社を選ぶ際の3つのポイント

第1は、総額の見積書とともに、その内容を丁寧に説明してくれることです。説明が業界用語ばかりだと理解できません。たとえば、棺の項目に「あすか8万円」と書かれていたりします。「あすか」というのは白い布張りの棺の商品名で、業界の人間でないとわかりません。要はお客さまではなく、担当者自身が処理しやすい見積もりになっているわけです。

第2は、対応の仕方です。立て板に水のごとく一方的にセールストークをする葬儀社もあります。事務的でどこか冷たい印象で、遺族の要望や思いなどを汲み取ろうとする姿勢が感じられません。これは大事な点です。私の経験からすると、遺族の思いに耳を傾け、遺族に寄り添おうという姿勢の葬儀社ほど、満足する葬儀を行ってくれる確率が高いのです。

第3は、要望に応じた施行事例の写真を見せてくれるかどうか。故人の人柄や趣味などをうまく演出したいとき、施行事例を見せてもらうと参考になります。自信のある葬儀社は実績の写真ファイルを用意しています。経験のない葬儀社は一般的な見本カタログを見せるだけです。

もう1つ付け加えるならば、担当者に好感が持てるかも大切です。2番目とも通じますが、相手の感じがいいと、ちょっとしたお願いや質問がしやすい。印象が悪い、苦手だなと感じるといいたいことも我慢してしまいます。2社を比較検討して、予算内で10万円程度の差であれば、担当者の好感度のよいほうを選んだほうが絶対にうまくいきます。葬儀の満足度は費用よりもソフト面が大きく、担当者がよくやってくれたとか、気が付く人だったということが大きな影響を与えるからなのです。

お葬式の後悔というのは、法事のたびに思い出すもの。四十九日、一周忌、三回忌のたびに、「あのときの葬儀社は最悪だったね」と親戚同士で話題にのぼってくるのです。できることなら「いい葬式だったね」と思い出したいですよね。これまで述べてきたアドバイスを参考に、最善の葬儀社を選んでいただければ幸いです。

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市川 愛(いちかわ・あい)
市川愛事務所代表
一般社団法人「終活普及協会」理事。2004年、日本初の葬儀相談員として独立。相談件数は5000件を超える。著書に『後悔しないお葬式』がある。

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(市川愛事務所代表 市川 愛 構成=田之上 信 撮影=石橋素幸 写真=PIXTA)

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