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新型コロナ禍で資金流出「崩壊した韓国経済」の最悪シナリオ

プレジデントオンライン / 2020年3月10日 15時15分

写真=Avalon/時事通信フォト

感染拡大で生産活動が難航、韓国経済は一段と厳しい状況に

新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大によって、韓国から投資資金を引き上げる海外投資家が増えている。今後の展開によっては、海外脱出を目指す韓国企業が増える可能性もある。

これから新型肺炎の感染拡大がどのような展開になるかは見通しづらいが、最近の経済指標を見る限り、すでに中国経済にはかなりの下押し圧力がかかりはじめた。中国では、ITや自動車の重要拠点の一つである湖北省武漢市を中心に、生産、物流、消費など、経済活動が大きく落ち込んでいる。

それにともない、中国をはじめ世界の主要国の景況感が大きく下落している。一方、株式や為替などの金融市場にも不安が波及しはじめており、世界の主要市場はいずれも不安定な展開になっている。

韓国国内でも新型肺炎の感染が急速に広がっており、自動車やエレクトロニクス分野で生産活動が一時停止に追い込まれた。それにより中国を中心とする世界のサプライチェーンの混乱に加え、韓国で人の移動が制限される。韓国企業の生産活動などがさらに難航し、韓国経済が一段と厳しい状況を迎える可能性は日々高まっている。

景気指数は製造業・非製造業ともに過去最低

今回の新型肺炎の発生は、世界経済を減速させる大きな要因であることはまちがいない。その背景には、経済成長の限界を迎えた中国が、新型肺炎の感染拡大によってこれまで以上のスピードで減速するリスクが高まっていることがある。

最近の経済指標をみると、PMI(購買担当者景気指数)が急速に悪化している。2月、中国の国家統計局が発表する製造業PMIは過去最低の35.7だった。1月の製造業PMIが50だったことを考えると、中国の製造業の業況悪化はかなり深刻だ。また、2月の非製造業PMIも前月より24.5ポイント低い29.6と過去最低だった。

これまで、製造業に比べて非製造業の景況感が幾分か良好な状態を維持してきたこと踏まえると、中国経済はかなりの勢いで落ち込みはじめている。これは、世界の多くの国に共通するリスクといえる。

国家統計局が発表するPMIに比べて、中小企業の割合が高いといわれる財新(中国のメディア企業)の発表したPMIを見ると、中小企業はさらに厳しい状況を迎えていることがわかる。財政のサービス業PMIは1月の51.8から2月は26.5とあまりに落ち込み方が大きい。

■中小企業の約85%が「維持できるのは3カ月以内」と回答

北京大学などが中国内995社の中小企業に行ったアンケートでは、“保有現金でどのくらい会社を維持できるか”という質問に、回答企業の約85%が「3カ月以内」と回答した。肺炎による経済の混乱が長引けば中国で企業の連鎖倒産が起きる可能性は高い。

それは今後、中国の失業問題を深刻化させるだろう。中国人民銀行(中央銀行)は金融緩和を実施し、中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)が条件を満たした中小企業に対して、6月30日まで元利金支払いの延期を申請できる措置を設けるなど、中国は異例の措置をとおして中小企業の経営支援に注力している。

ただ、中国本土の銀行勢は規制金利のもとで国有企業など大手企業への融資を優先する傾向にあるので、もともと中小企業を取り巻く金融環境は厳しい。そう考えると、中国経済がさらに減速する展開は軽視できない。それは、米国をはじめ、世界各国の経済にかなりの下押し圧力となる。

深刻さ増す韓国経済の体力低下

この状況下、韓国経済にはかなりのマイナスの影響が予想される。輸出、生産活動、個人消費の点から、新型肺炎が韓国経済に与える影響を考えると、いかに事態が深刻か確認することができる。

まず、韓国の経済成長を支えてきた輸出には、再度ブレーキがかかりはじめている。2月、1日当たりの韓国の輸出額は約11%減少した。1日当たりの対中輸出額は、約21%減と落ち込み方が著しい。

中国では新型肺炎によって、生産活動や企業の店舗運営などに加え、内需も冷え込みはじめている。中国本土で企業や投資会社などの資金繰りがひっ迫し、不動産バブルが崩壊するリスクも排除できない。もし、新型肺炎が景気を減速させる中で不動産バブルへの懸念が高まるなどすれば、中国の経済はかなりの混乱に直面し、韓国からの輸出はさらに減少するだろう。

また、新型肺炎は韓国の生産活動に急ブレーキをかけている。モノが生産できなければ、収益を得ることはできない。2月に入り、韓国では中国からの部品調達が困難になる企業が出はじめた。さらに、韓国でも急速に感染が広がっている。2月上旬、中国からの部品調達が困難になり国内生産を一時停止した現代自動車では従業員の感染が確認された。同社は蔚山(ウルサン)工場にてSUVなど主力車種の生産ラインの稼働を止めざるを得なくなった。

サムスンは新型スマホの工場の稼働を一時停止

サムスン電子では、新型スマホ「ギャラクシー ゼット フリップ」を生産する亀尾(クミ)市の工場にて感染者が出たため、工場の稼働を一時停止せざるを得なくなった。文政権の感染対策への不安から、米国などは韓国への渡航中止を勧告している。韓国における生産活動がさらに混乱する可能性は軽視できない。

その状況が続くと、韓国では企業業績への懸念が高まり、個人消費が一段と冷え込むと想定される。近年、韓国の所得・雇用環境は、文政権の経済運営の失敗によって不安定化している。新型肺炎はその状況に追い打ちをかけているといえる。個人消費を中心に韓国の内需は縮小に向かう可能性が高まっている。

景気減速などへの懸念から、韓国からは資金が流出しはじめている。これは韓国の経済・社会を揺るがす恐れがある。

韓国経済の特徴の一つに、内需は厚みを欠き、輸出依存度が高いことがある。輸出の3割が香港を含む中国向けだ。その分、韓国経済は米中を中心とするグローバルな景況感の変化に大きく影響される。

過去、世界経済が大きく混乱すると、韓国の金融環境は急速に不安定化し、ドル不足に陥った。1997年のアジア通貨危機や2008年のリーマンショックの際、韓国が日米などからの資金支援を受けたことは良い例だ。

世界経済が大きく動揺する最悪シナリオ

新型肺炎の影響を警戒し、世界の大手投資家は中国をはじめとする新興国から資金を引き上げつつある。低金利環境の中で資金が流入してきた米国のジャンク債市場からも資金が流出しはじめた。背景には、中国経済の減速などによって原油価格が下落し、米シェールガス産業の収益、財務内容が悪化するなどの懸念がある。中国発の新型肺炎が世界経済を混乱させるとの懸念は高まりはじめている。

この状況下、韓国では輸出の伸び悩みや内需低迷を受けてデフレリスクが高まりつつあるとみられる。デフレ懸念が一段と高まれば、韓国銀行(中央銀行)は金融緩和に動かなければならない。それは、ドルや円に対するウォン安要因となるだろう。企業業績などへの懸念から韓国株への売り圧力も増しやすくなっている。

それに加え、北朝鮮のリスクもある。3月2日、北朝鮮はミサイルを発射した。北朝鮮は軍事挑発を行い、米国の関心を引き、制裁緩和・解除などにつなげようとしているとみられる。軍事挑発が続くのであれば、世界の投資家、金融機関、企業は経済・地政学への懸念から韓国からの資金回収をより重視するだろう。

新型肺炎は世界経済の不安定性を高めている。状況によっては、中国と米国の景気減速が同時に進むなど世界経済と金融市場が大きく動揺する展開もあり得る。徐々に市場参加者のリスク回避姿勢は強まり、韓国からより急速に資金が流出することもあるだろう。日米との関係を悪化させてしまった文政権がそうしたリスクにどう対応できるか、先行き不透明感は増している。

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

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(法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)

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