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がんリスクを半減させる「科学的根拠」のある5つの方法

プレジデントオンライン / 2020年3月18日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/joka2000

がんを防ぐには何に気を付ければいいのか。医師の一石英一郎氏は、「日本人のがん予防について重要なのは禁煙、節酒、食生活、身体活動、適切体重の維持、感染の6要因。このうち感染以外の5項目について努力すればがんリスクは半減する」という――。

※本稿は、一石英一郎『親子で考える「がん」予習ノート』(角川新書)の一部を再編集したものです。

■国立がん研が教える「日本人のためのがん予防法」

がんにならない方法についてお話します。「そんなの本当にあるのか?」とお思いの方も多いと思います。「それがわかればがんで死ぬ人なんていなくなるじゃないか」。ごもっともです。

ただ、これまでお話したように、絶対にがんにならない方法などどこにもありませんが、科学的根拠がハッキリしたがんリスクを減らす方法は世界各国で研究されており、がんを遠ざける確かな方法は少ないながらもわかってきています。

日本では、国立がん研究センターをはじめとする研究グループが日本人を対象としたこれまでの研究から日本人のがん予防について重要なのは「禁煙」、「節酒」、「食生活」、「身体活動」、「適切体重の維持」、「感染」の6要因だと報告し、「日本人のためのがん予防法」を定めています。

それによると、こうした生活習慣と感染が原因の日本人のがんは男性53.3%、女性27.8%とされています。「感染」以外は自分の努力でコントロールできるため、5項目について努力すればがんリスクは半減するとしています。

■どうしても禁煙できない人はどうすればいいか

最も大切なことは喫煙習慣がある人はただちにやめることです。タバコががんのリスクを高めることは科学的に立証されています。私もこれまでに胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵がんなどたくさんのがん患者と接してきましたが、その多くはタバコ好きの方々でした。国内外のがん研究では肺がん、食道がん、口腔がん、大腸がん、乳がんなどのリスクを高めると警告しています。

喫煙は最初に改めるべき生活習慣です。よく「やめることはできないので本数を減らすよう努力する」という人がいますが、当てになりません。本人は節煙しているつもりでも、実はよくよく考えてみれば節煙ストレスで逆に本数が増えていたり、節煙したものの喫煙ルームで長く過ごしていたりして副流煙の悪影響を受けている可能性もあります。

とはいえ禁煙してくださいと言われてもそれができない人もいます。ならば、これからお話しする生活改善をほかの人以上に頑張るといいでしょう。

■ピロリ菌の除菌をすれば胃がんはかなり防げる

「ウイルスや細菌の感染」からの発がんも科学的に示されています。主なウイルスは肝臓がんと関連するB型、C型肝炎ウイルス、子宮頸がんのヒトパピローマウイルス、白血病の成人T細胞白血病ウイルスです。細菌では胃がんの一因になるヘリコバクター・ピロリ菌が挙がります。

これらの対策には感染を避ける・防ぐ、あるいはワクチンの接種、治療薬の投与があります。その中でとくに重要なのはピロリ菌の除菌です。日本人の胃がんの98%はピロリ菌の感染が原因だといわれています。ピロリ菌は、日本最大の感染症で5000万人以上が感染しているとされています。感染率は60歳以上で70~80%で、20歳以下は10~20%とされています。若い人ほど感染率は低くなります。

ピロリ菌に感染すると、慢性の胃炎や胃潰瘍を発症します。こうした持続的な炎症により、慢性の胃炎や胃潰瘍がある人の胃がんリスクはそうでない人に比べて最大10倍に上るのです。除菌は当然積極的に行うべきです。

ただし、除菌をしたからといって「これで安心、胃がんの検査はもうしなくていい」なんて思ってはいけません。確かにピロリ菌を除菌すると胃がんのリスクは下がりますが、除菌後もピロリ菌の感染でダメージを受けた胃の粘膜には発がんリスクが残っています。ピロリ菌に感染していない人と同じではありませんし、海外ではピロリ菌以外の原因での胃がんも増加傾向にあると言われています。注意が必要です。

■子宮頸がんワクチンは打ったほうがいい

感染症によるがんを予防するという意味では、性交渉は信頼できる決まった相手とだけに限ることも必要です。昔ある有名人と深い関係が噂された女性が相次いで婦人科系の病気やがんになり、「男性は気付かなかっただろうが、その男性は婦人科がんを招くヒトパピローマウイルスの保菌者だったのではないか」などと医療関係者の間で話題になったことがありました。

もちろん真偽は確かめようがありませんが、そうなのかもしれないと思ったことを覚えています。がんには性交渉でうつるがんもあります。性交渉は信頼できる相手とだけ行うように心がけましょう。

お子さんを持つ人は子どもたちに子宮頸がんワクチンを接種させるか否か、迷っておられる方も多いと思います。ワクチン接種時の副作用で苦しんでおられる方もおられるので迷われるのは当然ですが、お子さんたちの将来を考えたら個人的には接種したほうがいいのではないか、とも思います。

と言いますのは、30~40代の子宮頸がんの患者さんの苦しみを見てきたからです。その多くは独身で仕事を持つ方々です。子宮頸がんはヒトパピローマウイルスによる感染が原因とされていて性交渉で感染すると言われています。そのことから、周囲から偏見を含んだ目で見られることも少なくないのです。なかには、職場に病名を知られたくないからと保険を申請せずに自費で手術する人もおられました。

■飲酒はさまざまながんのリスクを高める

また、「子どもが産めなくなるのでは?」と心配する母親に結婚問題と絡めて追及されてカッとなり、母子断絶のような状態になっている人もいました。将来そういうトラブルを起こさないためにも子宮頸がんワクチンは打ったほうがよいのではないでしょうか。

子宮頸がんワクチンについては、副反応や副作用を含めて以前国内で大論争になりましたが、2019年12月に、日本産婦人科学会がWHO(世界保健機構)の国際声明「全世界的な公衆衛生上の問題 子宮頸がんの排除」の支持を発表しており、ワクチン接種の全世界的視野に立っての重要性をあらためて示しています。

■お酒に「健康によい適量」などない

お酒については飲み過ぎると、肝臓、大腸、食道がんなどのリスクを高めることが知られています。

日本人男性を対象とした研究で判明したもので、1日当たりの平均アルコール摂取量が純エタノール量で23グラム未満の人に比べて、46グラム以上の場合では40%程度、69グラム以上では60%程度、がんになるリスクが高くなるとされています。とくに食道がん、大腸がんと強い関連があり、女性は男性ほどハッキリしないものの、乳がんのリスクが高まるようです。

ちなみに国立がん研究センターが飲酒量の目安としている酒量は、日本酒なら1合、ビール大瓶なら1本、焼酎・泡盛では原液で1合の3分の2、ウィスキー・ブランディーではダブル1杯、ワインならボトル3分の1です(お酒の純アルコールでの計算)。

一方、健康日本21(健康意識向上を促そうとする運動)が言う飲みすぎの人とは「1日平均純アルコール約60グラム(日本酒にして3合)を超えて摂取する人」で、生活習慣病のリスクを高める量とは、1日あたりの純アルコール摂取量が男性40グラム(日本酒で2合)以上、女性20グラム(日本酒で1合)以上です」。

■「ワイン1本」は「タバコ5本」と同じくらいの発がんリスク

では、上記に示した適量なら本当に飲んでいいのでしょうか。確かに昔から「お酒は百薬の長。少しくらい飲んだほうがいい」、「ワインはポリフェノールが含まれているので体によい」、「循環器の病気予防には適量のお酒がよい」という意見もあります。

一石英一郎『親子で考える「がん」予習ノート』(角川新書)
一石英一郎『親子で考える「がん」予習ノート』(角川新書)

しかし、最近は「健康によい酒量などない、飲まないのが一番」という報告が相次いでいることに注意しておくべきでしょう。

例えば、2018年には世界的な医学雑誌の『ランセット』に1990年から2016年までの195の国と地域でのアルコール消費量と死亡の関連性を調べた研究結果が報告されています。それによると調査期間中の男性死亡の2.2%、女性死亡の6.8%にお酒が関わっていて、論文の著者は「健康によい適量などない」と結論付けました。

また、2019年3月末には英国サウサンプトン大学の研究者が調査により、ワイン1本(750ミリリットル)を飲むことは男性ならタバコ5本、女性なら10本吸うのと同じくらい発がんリスクをアップするとの推測を発表しています。

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一石 英一郎(いちいし・えいいちろう)
国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授
医学博士。1965年、兵庫県生まれ。京都府立医科大学卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻修了。アメリカがん学会(AACR)の正会員(Active Member)。DNAチップ技術を世界でほぼ初めて臨床医学に応用し、論文を発表した。人工透析患者の血液の遺伝子レベルでの評価法を開発し、国際特許を取得。著書に『日本人の遺伝子』(角川新書)など

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(国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授 一石 英一郎)

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