「遺産は愛人に全額贈与じゃ!」ダメ親父のアホ遺言書はどうしたらいいのか

プレジデントオンライン / 2020年3月28日 11時15分

AFLO=写真

■日本一わかりやすい「相続のキホン」教えます

人はいつか死ぬ。人が死ねば、残された家族は相続に直面することになる。しかし、多くの読者は相続について難解なイメージを持っているだろう。実際とても複雑であり、親族が亡くなってから安易に相続問題に取り組もうとすると、痛い目に遭うかもしれない。

実際、テレビや雑誌などでは、相続をきっかけとした家族間のトラブルを繰り返し紹介している。これまで良好だった兄弟姉妹関係も、お金が関わってくると話は別になってくる。絶縁に至るケースもかなりある。

では、あなたはどうしたらいいのか。あなたに高齢の親がいるなら、来る日に備え相続の基本知識を今のうちに身に付けておくべきだ。「親が生きているうちにやっておけばよかった……」と後悔しても後の祭りだ。一方で、あなた自身が高齢で配偶者や子どもがいるのであれば、「争続」にならないよう、家族が末永く仲良くすることを願うのは自然な感情である。一体どうすればいいのだろうか。

相続において大切なことは、いかに早く準備しておくかである。それでは今できる準備とはなんなのだろうか。この記事では、相続のことを今まであまり考えてこなかった人でも、その概要を理解できるよう、基本中の基本を、人気弁護士、城南中央法律事務所の野澤隆氏が解説していく――。

■急ぐのだ! とにかく時間が限られている

「相続」では、亡くなった人のプラスの財産のみならずマイナスの財産、つまり債務(借金、連帯保証など)も引き継がれます。亡くなった人を「被相続人」、引き継ぐ人を「相続人」といい、誰が原則的な相続人になるかは民法などで規定されており、その規定された人のことを「法定相続人」といいます。

それでは、相続はどのような手順で進んでいくのでしょうか。仮にあなたが長男で、実父が亡くなったとしましょう。まずやることは、死亡診断書を医師から受け取り、市区町村の役場に死亡届を提出することです。そのときに埋火葬許可申請書も提出し許可証の交付を受けます。ここまでが最初の7日以内にやるべきことで、葬儀会社が代行するケースも多々あります。

次に、14日以内にやることです。年金事務所などで年金の受給停止の届け出などを提出し、並行して役所で健康保険・介護保険の資格喪失の届けなどを行い、世帯主の変更手続きなども済ませておきましょう。こういった手続きでは戸籍がわかる資料や運転免許証などの提示などが必要な場合が多いので、各所に出向く前に電話で提示物の確認などをしておいたほうがいいでしょう。

このような事務処理対応とは別に最初に訪れる重要チェックポイントは「遺言書」の有無であり、被相続人が遺言書を残していなかった場合は相続人全員による話し合い(遺産分割協議)で遺産を分け合うことになります。なお、遺言書探しと並行して行うべきことは戸籍謄本・除籍謄本・登記簿・通帳・保険証券などを利用した相続人・財産の調査であり、この段階で隠し子や把握していなかった借金などが見つかることはよくあります。

遺言書は絶大な効力を有しており、主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2種類があります。前者は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言で、検索システムが整備されているので全国の公証役場のどこでもほとんどのものが検索できます。後者の場合、保管場所の届け出は義務付けられていないので、もし見つからなければ、生前付き合いのあった弁護士や税理士に連絡をしたり、実家のタンス・倉庫や貸し金庫などを調べる必要があります。

ちなみに、公正証書遺言と違って自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所での検認が必要ですが、最近の民法改正などで制定された法務局での保管制度を利用した自筆証書遺言の場合には検認が不要ですので、今後はこの制度の利点と、費用などはかかるがより確実な公正証書遺言の利点を比較したうえで、制度を選択する人が増えるでしょう。

相続フローチャート

さて、法定相続人は、民法で範囲と順位が決められています。配偶者(上記長男の場合で実父が死亡したときは、その実父の死亡時点での妻です。)は常に相続人の1人であり、“第ゼロ順位”といった感じです。第1順位は亡くなった人(被相続人)の子(前述の実父の長男とそのきょうだいがこれにあたります。)などです。

なお、代襲相続人も含め第1順位の者が誰一人いなければ被相続人の父母などの直系尊属が第2順位の相続人となり、第2順位の者も誰もいなければ被相続人の兄弟姉妹およびその兄弟姉妹を代襲相続した子が第3順位の相続人となります。まとめると、「常に配偶者+最も順位が高い人たち」が相続人です。

父親が亡くなったときの法定相続人の範囲・優先順位

図版では、法定相続人は「母①」と「私②」と「妹・弟②」です。「私」と妹・弟が子③より先に亡くなっていた場合、優先順位は子に移ります。第1順位がいない場合は、第2順位(祖父母⑤曽祖父母⑥)に、第2順位もいない場合は第3順位(おじ・おば⑧、いとこ⑨)に移ります。

■ダメ親父が愛人に「すべて相続します!」そんな場合でも……

遺言書がなく、かつ任意の話し合いでまとまらない場合、家庭裁判所に対する調停申し立てが必要となり、法定相続分を基本に特別受益(生前に発生した財産贈与)・寄与分(介護など特別な貢献分)などの修正要素を加えた手続きが進められます。そして、調停でも話がまとまらない場合「最後の審判」として家庭裁判所の審判が下されます。

さて、故人が「愛人にすべての財産を相続させる」といった遺言を残したとしても、第3順位の相続人以外の法定相続人は最低限の取り分である「遺留分」を確保できます。法定相続人が自分(子)と母(故人の配偶者)の2人だけなのであれば、遺留分は全財産の半分となりますので、各人が全財産の4分の1ずつを権利主張することになります。

民法上は「いつまでに遺産分割を終えなければならないか」につき、これといった規定はされていないのですが、実務では「故人の死後10カ月以内」が重要な期間制限となっています。というのも、相続税の申告は原則この時点までに行わなければならず、この時点までに話がまとまらないと税務上の手続きが煩雑化するだけでなく、当初「話を何とかまとめましょう」と元気のよかった相続人たちのエネルギーも失われ結局、ズルズルと次の世代まで何も決まらないことが多々あるからです。

そう考えると実際は「相続の制限時間は意外と短い」といえます。最近は相続人も高齢であることが多く、人の寿命は長くても100年超で尽き、秘密はともかく「お金は墓場に持って行けない」以上、何十年も相続問題を先送りするような行動に経済面での合理性はほとんどないといえるのではないでしょうか。

法定相続分と最低限の取り分

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野澤 隆(のざわ・たかし)
弁護士
1975年、東京都大田区生まれ。東京都立日比谷高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。弁護士秘書などを経て、2003年、司法試験第2次試験合格。08年、城南中央法律事務所を開設。

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(弁護士 野澤 隆 構成=プレジデント編集部 写真=AFLO)

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