民法改正で相続が激変!義母の介護は特別寄与料がもらえるようになりました

プレジデントオンライン / 2020年4月6日 11時15分

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■読者の悩みを解決!

1980年以来、ほとんど見直しがなかった相続に関する法律が、2019年夏に大改正されたのはご存じだろうか。知らなかったでは済まされない、読者の悩みを大人気弁護士の野澤隆氏が解決していく!

1.私は後妻。夫が亡くなっても今の自宅に住める?

Q 私は後妻で85歳です。私以外の法定相続人は、夫の前の妻との間に生まれた子どもが1人いるだけ。夫の主な財産は夫単独所有の築40年近い木造の自宅(土地と合わせて評価額1500万円)と、預貯金500万円であり、病弱な夫が死亡した後に自宅が処分され住む家がなくなる可能性があると聞きましたが、実際どうなるのでしょうか。

A 妻が自宅に居住する権利が創設されました。

これまでの相続制度では、総財産2000万円を形式的に金1000万円ずつ分ける原則を重視した結果、本件のように相続財産の大きな部分が不動産の場合、相続人同士が他人に近い関係だと不動産を現金化する調整方法しか事実上選択できないことが多く、高齢女性のその後の住居確保という難題が残される事態が頻発していました。

■基本的に死ぬまで自宅を無償で使用できます

2020年4月以降の相続では、自宅を「居住権」と「所有権」に分けることができるようになりました。居住権は「権利を第三者に譲渡したり、勝手に自宅を第三者に使用させたりしてはいけない」といった制約がつきます。居住権には、配偶者短期居住権(遺産分割等が決まるまで最低半年は自宅を無償で使用できる権利)および配偶者居住権(遺言か遺産分割協議で設定される権利)があります。質問者は夫の自宅に1度居住権が登記されれば基本的に死ぬまで自宅を無償で使用できます。

この法改正は、遺された家族の生活費に関する不安も大きくやわらげることになると考えられています。

質問者の場合は相続する預貯金が500万円でしたが、わかりやすくするために、預貯金が1500万円だった場合で考えましょう(図版参照)。改正前なら、後妻が1500万円の自宅をもらったのであれば、前妻の子どもが1500万円を受け取るので、高齢な後妻が生活に困る可能性がありました。法改正後は、自宅を居住権と所有権に分けて相続できるようになり、後妻が自宅の居住権(750万円)、先妻の子が自宅の所有権(750万円)を授かったとします。この場合だと、預貯金の相続も後妻は受け取る権利があり、後妻は自宅に住みながら生活費も以前より確保できるようになります。

後妻も自宅に居住する権利が創設された!
2.介護でハードワーク。相続の際、認めてもらえないのですか

Q 同居する義母を7年間、ほぼ私だけで介護してきました。その義母が先週亡くなりました。義母の息子である私の夫は数年前に他界しており、私に対する相続を記載した遺言書はありません。私も遺産を分け与えてもらえますか。

A 可能性はありますが、期待した額にはならないでしょう。息子の嫁には相続の権利はなく、介護をしていても、法改正前は例外的なケースを除き、亡くなった義母の遺産をもらうことはとても難しかったのです。

今回の改正は義理の親の介護などで苦労している人が多い現状をふまえたもので、19年7月以降に死亡する形で相続が開始した場合には「特別の寄与」制度に基づき、介護など特別寄与料の支払い請求ができます。亡くなった人に対して無償で療養看護や介護などを提供をした人などが請求可能です。

この制度のチェックポイントは、(A)特別寄与者が被相続人の民法上の親族であること、(B)無償で療養看護やその他の労務を提供したこと、(C)被相続人の財産を維持または増加できたこと、といったところです。特別寄与料の算定は今後の運用次第であり、平成時代に10年以上介護したことに対し200万円程度のみ認めた過去の判例と比べれば受け取れる金額は上がると思われますが、普通に働いた以上の金額が認められることはなかなかないのではと予想されます。

■父の遺言書には実家は姉に、預貯金はすべて私に

3.姉が相続した不動産と私がもらった預貯金の格差が不公平!

Q 2人姉妹の妹です。優秀な姉と比べられながら両親に育てられたので、幼少期のいい思い出はあまりありません。母はこれといった財産を残すことなく数年前に亡くなり、父も3カ月前に他界しました。父の遺言書には「(評価額9000万円の)実家は姉に、預貯金(死亡時の総額1000万円)はすべて私に相続させる」と記載されており、それ以外の財産はなく、他の相続人はいません。私は実家に戻って生活するつもりはありませんが、あまりに不公平ではないでしょうか。ちなみに、姉の夫の弟が数日前にその実家に引っ越したようです。

A 現金で遺留分を請求できます。

妹であるあなたの遺留分は合計2500万円であり、あと1500万円は確実に確保したい状況です。

以前であれば、「遺留分減殺請求権」の制度で、物件9000万円のうち4分の1を所有する権利が妹にありました。しかしこれでは共有状態が生じるため、不動産の場合、姉の夫の弟といった実家にあまり縁がない人物が住み始めると紛争の激化は避けられませんでした。

19年7月以降の相続では、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを求める権利へと改正され、不動産利用に関する紛争は避けられるようになりました。つまり質問者である妹は姉に1500万円を金銭で請求できるのです。

4.最後の妻に自宅を渡したいのですが、先妻の子が……

Q 私は3回結婚して、1回目と2回目の結婚で、それぞれの妻との間に子どもを授かりました。今の妻と結婚して25年経過しましたが、子どもはいません。先妻の子どもたちと妻はとても仲が悪く、そのことで常に頭を抱えています。私の死後、妻は2人の子どもを相手に相続争いする可能性が高いと考えております。私としては、現在所有する自宅は妻に確実に渡したいと思っております。どうしたらよいでしょうか。

A 結婚20年以上なら、自宅贈与も検討できます。

生前贈与は今回の民法改正前から広く行われており、贈与税を気にせず、かつ妻と今後も仲良くしていける自信がある場合には、この手段がすぐに実行できます。しかし贈与税は恐ろしい存在であり、たとえば総額5000万円程度の財産が移動するとき、相続なら無税ないし、高くても200万円程度の相続税で済むものが、何の対策もない贈与では贈与税が2000万円を超える可能性があります。

そこで、こうしたケースでは「婚姻期間20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与」を2000万円まで非課税にする制度を利用するのがおトクでした。

■配偶者保護の姿勢がより一層強まった

さらに、19年7月以降の相続では、この流れを受け「婚姻期間20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与」については原則贈与分は遺産の先払いと見なさず、後の遺産分割で多くもらった分を調整する必要が事実上なくなりました。つまり、配偶者保護の姿勢がより一層強まったのです。

たとえば、改正前であれば、配偶者が生前贈与した場合、先妻の子どもが相続財産に含めるよう請求してしまえば“争族”に発展しかねなかったのです。改正後は贈与した自宅は遺産分割の対象外にすることができるようになりました。

とはいえ、税務上の問題はまだ残っており、よほどの大金持ちならともかく、遺産総額3億円程度までの方については、相続税における「配偶者の(1億6000万円までの)税額軽減」や「(最大8割引きの)小規模宅地等の評価減」といった優遇税制をよく検討したうえで実行する必要がありますので、弁護士だけでなく税理士との事前相談は必須でしょう。

5.15年前にもらった親の不動産これも遺産分割?

Q 私は3人兄弟の長男です。15年前に父親が所有していたアパート(私ども一族で経営している店の従業員の寮として主に活用しているものです)を生前贈与で私名義に変更し、近年は私が店の経営のみならずアパートの管理もほとんど担っていました。父はそのことも踏まえ、私に有利な遺言書を残し、10日前に他界しました。弟たちがこのアパートも遺産に含める、つまり相続財産に持ち戻したうえで遺産分割協議を実施するよう求めていますが、どう対処したらよいでしょうか。

A 10年以上前の特別受益は事実上“時効”扱いに。

相続争いする可能性

現在も含め家庭裁判所の遺産分割手続きで揉める最大の論点は「寄与分(親を自宅で介護して親の財産の減少を防いだ場合など)」と「特別受益(相続財産に相続人のうち1人だけ住宅資金や、開業資金をもらった場合など)」です。

19年7月の改正法施行前は、地方裁判所での遺留分減殺請求訴訟や家庭裁判所での遺産分割審判手続きなどで、特別受益に関して相続人が主張を制限する規定が事実上存在しませんでした。そのため、兄弟間で教育格差(1人だけ親のお金で大学に行かせてもらえた、といった事情)が何十年も昔にあった話などが、それぞれの手続きで延々と主張されていました。しかし、法改正後少なくとも遺留分については相続開始前の原則10年間の特別受益に絞り審理されることが明確になりました。

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野澤 隆(のざわ・たかし)
弁護士
1975年、東京都大田区生まれ。東京都立日比谷高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。弁護士秘書などを経て、2003年、司法試験第2次試験合格。08年、城南中央法律事務所を開設。

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(弁護士 野澤 隆 構成=プレジデント編集部 写真=PIXTA)

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