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コンビニ堅調、コロナ影響下の「意外すぎるヒット商品」とは何か

プレジデントオンライン / 2020年3月23日 9時15分

新型コロナの猛威を受けつつも、セブン-イレブンの既存店売上高は2月の前年同月比で0.8%増。 - 写真=AFP/時事通信フォト

■営業時間短縮なく、普通に営業しているありがたさ

東京都内の筆者の実家に近い大手コンビニエンスストアでは一時、ドラッグストアやスーパーマーケットの棚から消滅したティッシュペーパーを「おひとり様ひと箱限定」で買うことができた。品物が配送される時間帯を狙えば、入手できるらしかった。私はしばらく、配送される時間帯を狙い、1箱ずつティッシュを買いに出かけた。自粛モードで営業時間が短縮されたスーパーなどと違い、コンビニは普通に深夜まであいている。なぜかほっとして、ほかのものまで買い込んでしまうこともしばしばだった。

「パンデミック」と位置付けられた新型コロナウイルスの感染拡大で、外国人観光客が激減し、京都などの観光地は通りから人が消え、新幹線も空席が目立つ状況が続く。感染防止のため自宅待機の職場が増え、外出を控える人が急増。人の流れが滞れば物販も減る。感染防止の観点から、店舗は営業時間の短縮を迫られるなど流通業界は大きな打撃を受けている。特に大手百貨店では2月、前年同月比の既存店売上高が三越伊勢丹ホールディングスで14.3 %減、免税品売上高に限れば高島屋が2月時点で約7割減、3月に入って9割以上の減と大幅に減少した。大手スーパーやショッピングモールでも自粛モードが加速、出歩くのがはばかられる風潮すらある。ニューヨークなど海外でも外出禁止やレストランの閉鎖、スーパーの棚が空っぽな様子が報道されて品薄への危機感は募る。

世界的な景気の低迷が避けられそうにない中、日本のコンビニはなぜか堅調だ。

2月の各社の月次データでは、既存店売上高の前年同月比はミニストップで2.7%増、セブン-イレブンで0.8%増、ローソン0.4%減、ファミリーマート0.9%減、とほぼ前年並みを維持している。テレワーク導入によるオフィスの閉鎖、レジャー施設の休業で、都市部のオフィス街や観光地の施設の周辺にある店舗は閑古鳥が鳴いている。それにもかかわらず、どうして堅調なのか。

■おもちゃにサプリメント~「巣ごもり」初期段階と健康留意

これは「日用品需要の伸びが大きく、オフィスなどの閉鎖の影響を受けた店舗のマイナス分を補って余りあるから」と大手チェーンの幹部は解説する。

「日用品需要」は2月、まずはマスクやトイレットペーパーなどの駆け込み需要に表れた。ミニストップの売上増をけん引しており、同社では紙類など衛生用品に限れば前年同月比7割増だった。またローソンでは、生鮮品も扱うミニスーパー「ローソン100」に限れば既存店売上高が前年同月比0.2%増。内訳をみると、客数は2.3%減なのに客単価が2.5%増で、1人当たりの購買量が増えたことがうかがえる。

ローソン100
写真=iStock.com/tupungato
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tupungato

続いて需要は在宅勤務や外出を控える「巣ごもり」に備えた、子供でも電子レンジなどで簡単に調理できる冷凍食品やカップめんなどが主流となっていく。ファミリーマートでは冷凍食品やチルド総菜のオリジナルブランド「お母さん食堂」シリーズやスープなどが前年実績を上回った。ローソンでは買い置き用の米や乾麺、パックご飯が増加した。

意外な売れ筋商品も生まれた。ローソンではトランプやUNO、折り紙、シャボン玉などの玩具系が35%の増加。大して売れていなかったグッズ類が、学校が休校になって自宅にこもる子供たちの遊び道具用に需要が急伸したとみられる。ビタミンサプリメントも1割増と、コロナ被害で健康に留意する人が増えたもようだ。

■文庫・書籍、ぬりえ無料印刷~中長期的「巣ごもり」視野

3月に入ると「巣ごもり」消費のトレンドがやや変わる。ローソンでは米の売上高が急伸し、レトルト食品や冷凍食品を上回る伸びを見せた。コロナの対策が長期化の様相を帯びてきたため、先々の消費を考えた「買いだめ」が加速したようだ。続いて文庫・書籍が伸びている。玩具に飽きた後は読書と勉強ということか。中でも目立つのがハンドソープで、2月時点で前年比3.4倍だった実績が3月は6倍にも伸びた。新型コロナウイルスの感染防止には、外出先から戻ったら、手洗いをしっかり行うことが早道という知識の普及が背景にありそうだ。トイレットペーパーやティッシュは商品が出回りはじめ、伸びが鈍化してきた。

いっぽうで買いだめの利かない、袋入りの菓子パンも堅調だ。大手ベーカリーチェーンでは、感染防止の観点から、棚に並んだパンを自分で取るのではなく、あらかじめ袋詰めしたパンを買う形式に変えているところが少なくない。そうした流れの余波が菓子パン人気にもつながっているようだ。加えて3月14日から開始した、マルチコピー機からキャラクターぬりえを無料印刷できるサービスが5日間で23万枚を発行する人気となった。親子で楽しめる点がヒットの理由らしく、あの手この手で店頭に誘致するサービス合戦の様相を帯びてきた。

■主婦層のパート少なく、スタッフは確保

こうした商品はコンビニでなくてもスーパーやドラッグストアでも買える。それでもコンビニが堅調なのは、遠出をせずとも近所でいつでも買えるメリットが大きい。営業時間を短縮している大型小売店が多い中、普通に24時間営業をしているコンビニはありがたい。

ファミリーマート
写真=iStock.com/SeanPavonePhoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SeanPavonePhoto

「いつでもあいている」のは、店頭スタッフが確保できているからでもある。裏を返せば、学校の休講で自宅待機となった子供たちの面倒を見なければならないお母さんたちのアルバイトが少ない、ということだ。

コンビニ業界は長く従業員確保が課題となっていた。商品の陳列や調理など、店内の仕事は重労働でも知られる。学生のアルバイトや主婦層のパートは次第に集まらなくなり、現在の中心層は都市部では留学生だ。接客は日本語を学ぶのによい機会でもある。「一部に主婦層のパートが来られなくなった店舗があるが、スタッフは総じて確保できている」(大手コンビニチェーン)という。いつも営業しており、一定数の商品が並ぶコンビニを改めて「社会インフラ」として見直す機運が高まりそうだ。

■「東日本大震災に匹敵する災害」でも当面は堅調

新型コロナウイルスにまつわる混乱を、各チェーンでは「東日本大震災と同じ大災害」ととらえる向きがある。震災が発生した2011年3月以降は、道路が寸断され物流が滞る中、いかに商品を調達し輸送するかの試行錯誤がなされた。今回は目に見える災害ではないものの、いつ終わるとも分からない警戒に人々は疲弊している。そうした中、ローソンは社会的責任の一翼を担うため「学童保育施設へのおにぎり無償配布」を始めた。全国の小中高校が休校となり、学童保育に集まる子供たち昼食をサポートし、保護者の負担を軽減する狙いがあり、3月末までに47都道府県、延べ5199施設、38万6288個のおにぎりを配布する。申し込み先着順での受付だが、応募が殺到しているという。セブン-イレブンなど他のチェーンでも今後、追随する可能性がある。

コロナウイルスの被害が長期化すれば、遠出をせず「ご近所消費」ができるコンビニエンスストアの売上高は当面、堅調に推移していくとみられている。だが現在の売れ筋は決して単価は高くなく、利幅もそう大きくない商品ばかりで、中長期的には不安材料の方が大きい。

コンビニ業界はターニングポイントに来ていた。人口減少で国内消費が頭打ちの中で、24時間営業は「働き方改革」の風潮の中で逆風となり、本部とフランチャイズ店舗の関係は根本から見なおす時期に来ている。個別に見れば、海外に活路を見いだそうとしたセブン&アイ・ホールディングスは、米国のガソリンスタンド併設型コンビニチェーンの買収を検討したものの、220億ドル(約2兆4500億円)に膨らんだ買収提示額から、乗り出した場合の本体の財務状況悪化を懸念して断念。ファミリーマートは旧am/pm、サークルKサンクスなど合併を繰り返して、店舗数ではセブン-イレブンに次ぐ業界2位の店舗数に浮上したが、本部機能に余剰人員が生じ、全従業員8000人中、約1000人の早期退職を決めた。「社会インフラ」としての存在感が改めて見直されつつある中で今後どのようなサービスを模索していくのか正念場を迎えている。

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藤澤 志穂子(ふじさわ・しほこ)
ジャーナリスト
元全国紙経済記者。早稲田大学大学院文学研究科演劇専攻中退。米コロンビア大学大学院客員研究員、放送大学非常勤講師(メディア論)、秋田テレビ(フジテレビ系)コメンテーターなどを歴任。著書に『出世と肩書』(新潮新書)

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(ジャーナリスト 藤澤 志穂子)

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