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無審査・無担保で1000万円を借りられる「奨学金」の落とし穴

プレジデントオンライン / 2020年3月25日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

いま、大学生の約2人に1人が奨学金を借りている。無審査・無担保で、誰でも比較的簡単に1000万円近くを借りられるが、後になって返済で苦しむ人は少なくない。実業家のオロゴン氏は「いくら金利が低いとはいえ、不要なお金は借りないに越したことはない。ほかに利用できそうな制度がないか、調べる必要がある」と説く――。

■混同される「給付型」と「貸与型」2つの奨学金

奨学金とは、学生を援助するために貸与または給付されるお金と制度自体のことを指します。現在、学生への奨学金事業や留学支援を行う独立行政法人・日本学生支援機構から奨学金を借りている大学生の数は、学生全体の約半数にものぼり、学生にとって大変身近な制度と言えるでしょう。

しかし、この奨学金によって、社会人としてスタートを切った直後から生活に困ってしまう若者も後を絶ちません。平成29年度末の時点では、奨学金の返済を3カ月以上延滞している人の数は約16万人にも上り、「返したくても返せない」という悲痛な声が上がっています。

生活をラクにするために借りたはずの奨学金で、なぜこんなにも苦しむ人が出てくるのでしょうか?

まず、筆者は、この“奨学金”という名前に問題があると感じています。

奨学金には、「貸与または給付される」とある通り、「返さなくていい給付型」と「返す義務のある貸与型」の2種類があります。前者はもらえるお金、後者はただの借金ですから、この2つはまったく別物なのですが、これが一緒くたに“奨学金”と呼ばれることで、借金であるほうの奨学金に危機感を感じにくくなっているのです。

■延滞者の約半数は借金だと知らなかった

「貸与型奨学金が借金である」ということを、一部の学生やその保護者たちがそもそも認識できていないということは、日本学生支援機構の調査でも明らかになっています。「平成29年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」によれば、奨学金返済を延滞している学生のうち、「返還義務があることを申し込み手続きを行う前に知っていた人の割合」はわずか50.9%。すなわち、延滞者の約半数は、この奨学金が借金であることを知らずに、貸与型奨学金の申し込みをしてしまっているのです。また、延滞の督促を受けて初めて返済義務を知る人も、延滞者の10%以上に上っています。

このような誤解による不幸な借金を増やさないためには、貸与型の奨学金は「奨学ローン」などに呼称を代え、給付型の奨学金と明確に区別できる形にするのが良いとは思いますが、個人のレベルでは、きちんと「貸与型奨学金は借金」という認識を持っておくことが必要だと思います。

■善意の融資条件が裏目に出る

また、貸与型奨学金のもう1つの落とし穴は、ほとんど無審査・無担保で、誰でも比較的簡単に1000万円近くのお金を借りることができてしまうという点です。

社会人が借金をしようとする場合、「借りたお金をキチンと返せるだけの経済力のある人かどうか」を、金融機関によって審査されます。当然、支払い能力を超えるお金は貸してくれませんし、それでもさらにお金を借りようとする場合には、不動産などの担保が必要になります。

しかし、学生は仕事についておらず、収入もない場合がほとんどなので、奨学金ではこうした審査や担保がなくてもお金が借りられるようになっています。結果、自分の支払い能力以上のお金を借りてしまうと、卒業後の返済が大変重くなってしまうのです。

日本学生支援機構の貸与型奨学金には、無利子(第1種)のタイプと有利子(第2種)のタイプがありますが、有利子でも金利は0.5~3%と、一般的な融資に比べれば条件は優良です(奨学金以外で、無利子でお金を貸してくれるまともな金融機関はほとんどないでしょう)。

また、返済が難しい場合には一定期間返済を猶予してくれるなど、セーフティネットも用意してくれています。

しかしながら、いくら金利が低くても(無金利でも)、元金だけで1000万円近い借金をしてしまうと、卒業後の家計は確実に大きく圧迫されてしまいます。

■貸与型奨学金の借り入れは、きちんと検討してから

いくら金利が低いとはいえ、不要なお金は借りないに越したことはありません。本当に必要な資金なのか、卒業後の返済計画をよく考えてから申し込みましょう。

オロゴン『サイフの穴をふさぐには? 学校も会社も教えてくれない税とお金と社会の真実』(KADOKAWA)
オロゴン『サイフの穴をふさぐには? 学校も会社も教えてくれない税とお金と社会の真実』(KADOKAWA)

また、授業料免除の制度や給付型奨学金など、ほかに利用できそうな制度がないかも調べた上で、貸与型の奨学金を検討するようにしましょう。

利用者が多いので「みんな借りてるなら、私も借りとこうかな」と、気軽に借りてしまいがちな奨学金ですが、卒業後に返すことができないと、信用情報機関に登録、つまりいわゆるブラックリストに載ってしまって、クレジットカードをつくれなくなったり、住宅ローンが借りられなくなったりする可能性があります。さらに、返済の目処が立たなければ、自己破産まで追い込まれる可能性もあります。

「貸与型奨学金は借金であり、自分自身で返済しなければならない」という認識をきちんと持ったうえで、必要以上に借りすぎてしまわないよう注意して活用してみてください。

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オロゴン(おろごん)
都市銀行で10年勤めた後、ベンチャー企業経営者を経て個人独立。経営者として事業を軌道に乗せる過程で、サラリーマン時代には知らなかったお金や社会のルールが多く存在することに衝撃を受け、独立した2018年より、ブログ・Twitter・ネットラジオVoicyにて情報発信を開始。現在は、不動産賃貸業をはじめとする複数事業を手がけている。Twitter:@orogongon/ブログ:http://banker-escape.com/

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(オロゴン)

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