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知らないと痛い目を見る…絶対にやってはいけない「損する生前贈与」

プレジデントオンライン / 2020年4月5日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Eduard Skorov

相続税を節税したい。そう思ってむやみに生前贈与する、のちのちトラブルの火種になってしまう。贈与のしくみはややこしい。賢い生前贈与の方法を税理士の島田亮子氏に聞いた―。

■まずは2つの制度をしっかり理解しよう

生前贈与の制度は大きく分けて「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の2つがあります。まず暦年贈与のほうから解説していきましょう。これは年間の贈与額が110万円以下なら基礎控除により非課税になるという制度です。例えば、親から子に毎年110万円の贈与を10年間続けると、結果として贈与税0円で1110万円の財産を移転することができます。

ただし、注意するべき点があります。相続発生からさかのぼって3年以内に相続人に贈与した分は相続税の対象となってしまいます。いわゆる「かけこみ贈与」になるのを避けるため、暦年贈与は早めに開始することが大切といえます。

次に、相続時精算課税制度について説明していきます。こちらは、累計で2500万円までの贈与が非課税で、それを超えた分に20%の贈与税がかかるという制度です。ただし、贈与された財産は相続発生時に相続財産と合わせて相続税の課税対象になります。暦年贈与と違って対象となるには条件があり、贈与する側は60歳以上の父母・祖父母、贈与を受ける側は20歳以上の子(養子を含む)・孫です。

メリットとしては、贈与した時点の評価額で相続税が計算されるので、将来値上がりしそうな株や不動産を移転したいときに活用するべき制度といえます。よくあるのが、オーナー社長が自社株を後継者である子に贈与する場合です。また、暦年贈与よりも非課税枠が大きいため、1度に大きな財産を贈与したいときにも便利です。デメリットになるケースとしては、贈与した資産が将来値下がりしたときです。また、1度相続時精算課税制度を選ぶと当事者間での暦年贈与は適用できなくなるので、よく考えてから行ったほうがよいでしょう。

暦年贈与と相続時精算課税制度でどちらが得かというのは、移転したい財産や相続税の税率などによってケース・バイ・ケースです。そもそも相続税がかからない場合は、相続時精算課税制度を使うという手もあります。それから贈与する側の年齢も判断材料の1つです。寿命は人それぞれなので一概には言えませんが、まだ60歳くらいの方であれば、110万円以下で長期間かけて暦年贈与することができるといえます。

■お得な特例も知っておこう

生前贈与には、暦年贈与や相続時精算課税制度と併用できる特例措置がいくつかあるので、それらもお得に活用しましょう。まずは、「教育資金の一括贈与時の非課税」と「結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税」です。前者は、30歳未満の子や孫への教育資金の贈与が対象で、子や孫1人あたり1500万円までが非課税となります。後者は、20歳以上50歳未満の子や孫への結婚と子育て資金の贈与が対象で、1000万円までが非課税です(ただし結婚費用は300万円まで)。

どちらも2021年3月末までの特例で、贈与を受ける子や孫の前年所得が1000万円以下でなくてはならないという条件があります。また、教育資金の一括贈与については子や孫が23歳以上の場合用途が限定されており、学校以外の習い事に充てる費用は非課税枠の対象ではありません(ただし留学費用は対象)。注意点としては、相続発生前3年以内に贈与された金額のうちの未使用分については、一定の場合を除き相続税や贈与税が課されるため、余裕を持った贈与を心がけましょう。

また、住宅の購入資金を贈与する際の「住宅取得等資金の非課税」や、夫婦間で自宅の不動産を贈与する場合の「おしどり夫婦の特例」という制度もあります。住宅について考えるときに思い出したい特例です。

■相続時トラブルになりやすい「特別受益」

ここまで様々な贈与税の非課税制度をご紹介してきましたが、相続時トラブルになりやすい「特別受益」についても知っておきましょう。被相続人(亡くなった人)から相続人に生前特別な利益が贈与されたとされた際に、その分の財産を相続時の遺産に含めて分割するという決まりです。どういうことか、父親から2人の子に相続するケースで解説していきましょう。

4600万円の財産を持つ父親が、長男に600万円を生前贈与していたとします。父が亡くなり残りの4000万円を分割して相続する際、特別受益にあたる場合は贈与分600万円を含めた4600万円が遺産総額になります。法定相続では長男と次男がそれぞれ2300万円を相続することになりますが、長男は贈与分を差し引いた1700万円を受け取ります。一方で、特別受益にあたらない場合は、相続発生時の父の財産4000万円が遺産総額になるため、兄弟でそれぞれ2000万円を受け取ることになります。

特別受益にあたるケースには、例えば大学や留学など高等教育の費用を贈与した場合があります。ただし、贈与する側の収入や社会的地位から考えて、その支援が特別なことではないとされる場合には該当しないこともあります。判断はケース・バイ・ケースで、トラブルを防ぐためにも遺言で分割について明記しておくことが大切です。

知らないと子どもが損する! 迷惑かける! 贈与の基本制度は2つ
特例をフル活用して賢く相続!

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島田 亮子(しまだ・りょうこ)
税理士
辻・本郷税理士法人 品川相続センター長。辻・本郷税理士法人湘南事務所所長を経て現職。全国女性相続センターにも所属している。

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(税理士 島田 亮子 構成=万亀すぱえ)

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