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東京五輪の「1年延期」が最有力になった本当の理由

プレジデントオンライン / 2020年3月23日 18時15分

聖火が格納されたランタンをもつ柔道男子の野村忠宏さんとレスリング女子の吉田沙保里さん、2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長=3月20日、宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地 - 写真=AFP/時事通信フォト

新型コロナウイルスの感染拡大で、夏の東京五輪開催が風前の灯となってきた。今や焦点は「1年延期か、2年延期か」。小池百合子都知事、安倍晋三首相、トランプ米大統領、そしてバッハIOC会長という4人の胸の内をにらむと、見えてくるのは「1年延期」だ――。

■4氏は来年までに「自分の選挙」を抱えている

小池百合子都知事、安倍晋三首相、トランプ米大統領、そしてバッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長。この4人の今後の日程をにらむと、興味深いことに気づく。

小池氏は7月24日に開幕する予定の東京五輪の直前、7月5日に、東京都知事選が待ち構えている。

トランプ氏は11月3日に行われる大統領選で再選を目指す。

安倍氏は来年の9月末に自らの総裁任期を迎える。そして同年10月までに衆院選を行っていない場合は衆院の任期満了を迎える。

バッハ氏は来年、8年の任期が満了し、秋にも行われるIOC総会で再選を目指す。

つまり、東京五輪のカギを握る4人は、今年から来年に向けて、自身にとって重大な選挙を抱えている。全く偶然ではある。しかし、五輪のような世界的な大イベントを自分の選挙に最大限利用しようと考えるのは当然だ。今となっては「予定通りか、中止か、延期か」の判断を自分の選挙に有利な方向に持ち込もうと考えていることだろう。

■小池氏は「知事選」→「五輪」としたいのだが…

一人一人の思惑を探ってみよう。小池氏は、都知事選と五輪が接近していた従来の日程をにらみながら「五輪の顔は私しかいない」「これまでの経緯を知らない人間が五輪を仕切るわけにはいかない」ということで再選を目指してきた。それは、今も変わらない。

それだけに小池氏は、従来の予定通り今夏に五輪を迎えるのがベストシナリオ。五輪の直前に都民の審判を受けたい。

小池氏は4年前は自民党らが推した候補を破って勝っている。自民党都連との間では、その時のしこりが残る。昨年末ごろから、二階俊博党幹事長が間に入り、小池と都連の仲直りをさせて、再選を目指すというシナリオもあった。しかしその時の説得材料の1つには「五輪の前で足を引っ張りあうのは好ましくない」が大義名分だった。五輪が延期となってしまえば、この理屈は通用しない。

つまり小池氏は、五輪が延期、中止になった場合、都知事選では五輪の前景気を利用することができず、しかも自民党とのガチンコ対決を強いられる可能性が出てくる。

■1年延期なら五輪は安倍氏の「花道」に

安倍氏はどうか。安倍氏は4選を目指さないと明言している。その一方で、首相在任中に五輪を開催したいと強く思っている。2013年、自らIOC総会が開かれたブエノスアイレスまで自ら出向き、招致演説をした。まさに首相のトップセールスで招致したという自負は人一倍ある。

五輪が今年行われなかったとしても、1年延期ならばまだ「安倍首相」で開催できる。9月の総裁任期ギリギリとなるが、五輪は長期政権を締めくくる「花道」ともなるだろう。

安倍氏は自民党則を変えて4選を目指そうとしているという声も根強い。新型コロナを封じ込めることで危機管理に強い首相であることのアピールに成功すれば、その道も開けてくる。むしろ、不完全な形で今夏の五輪解散するよりも、来年、平穏裏に開催する方がポイントを稼ぐことができるかもしれない。

安倍氏は23日、参院予算委員会で「完全な形での実施が、仮に困難な場合には、延期の判断も行わざるを得ない」と、延期容認に大きくかじを切った。

■一貫して「1年延期」説をリードしてきたトランプ氏

トランプ大統領。彼の頭の中は大統領再選1色であるということは、よく指摘される。「新型コロナ」を何とか乗りきって11月を迎えたい。その途中に東京五輪が予定されているわけだが、米国選手団の1部を派遣できないようなことになれば、トランプ政権にとって好ましい話ではない。トランプ氏は、当面は新型コロナ対応に専念し、五輪はその後にしてもらった方がいいと考えているのではないか。

トランプ氏は12日、記者団に「あくまで私の意見だが、五輪は1年間延期したほうがよいかもしれない」と発言。延期論の流れをつくった。この発言の裏には「まずは新型コロナ対応、そして大統領選に専念したい」という思いがにじむ。

■「コロナ克服」五輪の成功で再選うかがうバッハ氏

バッハ会長も自身の再選が頭の中にあるのだろう。もちろん今年7月に予定通り開催するのがベストだが、欧州の感染拡大をみるとそれは困難になってきている。

バッハ氏は19日、米ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューに応じ、現段階で結論を出すのは時期尚早だとした上で「もちろん(今夏開催とは)別のシナリオも検討している」と語っている。1年延長して2021年に東京五輪を行う。そして「新型コロナによる世界の危機を克服して五輪を成功させた」という実績を掲げて同年、IOC会長の再選を図るというのがセカンド・ベストのシナリオなのではないか。

このように4人は「新型コロナ」とは別に自身の政治日程を頭に入れて対応を考えている。「予定通り」に期待するのは小池氏のみ。他の3人は1年延期でも問題ない。もしくは、1年延期の方が好ましいと考えている。「1対3」の構図なのだ。

今、五輪は「1年延期」が最有力となりつつあるのは、そういった構図と無関係ではないだろう。

しかしそういう発想で日程が定まっていくとしたら、五輪の理念である「アスリート・ファースト」はどこにも見えない。世界中に蔓延する「ミー・ファースト」を象徴するような決断と受け取られるようなことになれば、「平和の祭典」は色あせてしまう。

(永田町コンフィデンシャル)

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