令和時代でも、キャリアアップしたいなら付き合いゴルフや飲み会に行くべきか
プレジデントオンライン / 2020年3月30日 6時15分
■「部長を目指すなら行っておけ」に悩む女性も
上司と部下の親睦を深める手立てとして、昭和の時代からよく行われてきたのが付き合いゴルフや飲みニケーション。職場外とはいえ仕事の話が出ることも多く、キャリアアップや人脈づくりに役立つと考えている人も少なくありません。
こうした考え方は、50代以上のおじさんによく見られます。彼らはゴルフや飲みニケーションを、仲間意識を強める手段として重視し、参加しない人は仲間ではないと考える傾向があります。さらに、この世代には管理職や経営層も多いため、中には部下の昇進昇格に対して影響力を持つ人も。
そのため、誘われた部下は「キャリアアップを目指すなら参加しておくべきなのかな」と思いがちです。女性の場合は、男性社会になじまなくてはという思いも加わるかもしれません。
最近では、上司から「部長を目指すなら参加しておけ」と勧められて、本当に行くべきなのかと悩む女性もいると聞きます。悩むということは、本音は行きたくないからでしょう。
しかし、その理由が例えば「ゴルフなんておじさんっぽい」「おじさんと飲んでも楽しくない」という漠然としたものだとしたら、私は少しもったいないかなと思います。
行ってみたら意外と楽しいかもしれないし、新たな趣味や学びの場になる可能性も。それが人脈づくりにもつながったら一石二鳥です。否定する前に、まずは一度体験してみるのも一つの手です。
■おじさん社会になじむ必要はあるのか
問題は、行きたくない理由が「職場での付き合いだけにとどめたい」「子育て中で時間がとりにくい」などだった場合です。この場合、参加するには多少の我慢や無理をしなければなりません。
キャリアアップのために、つまり男性社会になじむために無理をしてまで付き合うべきかどうか──。結論から言えば、私は行かなくていいと考えています。なぜなら、おじさんたちによる今の男性社会は、間もなく終わりを迎えるからです。
彼らはあと10年前後で定年を迎え、会社からいなくなります。それとともに、ゴルフや飲みニケーションで仲間意識を強め、その仲間だけを取り立てるような風潮もなくなっていくでしょう。
皆さんのキャリアはあと数十年もあります。今の上層部と仲間意識を強め、彼らの社会になじんだとしても、その環境は長くは続きません。だったら、今無理をして付き合いに時間を割くよりも、彼らがいなくなった後のことを考えてスキルを磨くことのほうに力を注いでほしいと思います。
■付き合いを重視した働き方は少数派に
また、彼らは「男は仕事、女は家庭」で育ってきた世代です。家事や育児は妻に任せて自分は仕事に集中する。そうした環境ですから、アフター5の飲み会にも休日の付き合いゴルフにも、比較的自由に参加できます。
しかし、共働きも多い今の人たちはそういうわけにはいきません。特に女性は、フルタイムで働いていても家事育児の負担が夫より大きい傾向にあります。業務時間外の付き合いに割ける時間は、50代以上の男性に比べてぐんと少ないはずです。
付き合いに精を出すおじさんたちを見ると、彼らのようにならなければキャリアを築けないと思うかもしれません。しかし、そうした働き方をする人は、間もなく多数派ではなくなります。
今後、男性の収入はさらに低下していくと予想されています。男性の稼ぎだけでは家族を養えないため、共働き世帯はさらに増え、それに伴って職場における男女平等もより当たり前になっていくでしょう。
さらには、独身の人も増え続けています。誰もが結婚して「男は仕事、女は家庭」と役割分担をする時代は、もはや過去のものになりつつあります。仕事やキャリアアップは、男性だけでなく女性にとっても重要なのだという認識も、この先ますます広がっていくと考えられます。
■「参加した人=仲間」という謎ルール
今後、この流れが逆行することはおそらくないと思います。そう遠くない将来、家庭を顧みない働き方も、ゴルフや飲みニケーションも、キャリアアップに必須ではなくなるでしょう。
これらを併せて考えると、楽しむためならともかく、無理をしてまで今目の前にいるおじさんたちの仲間になる必要はないと言えます。そもそも、仲間のつくり方や扱い方は彼らの独自ルールのようなもの。今そこから外れたからといって、先々のキャリアが絶たれるようなことは考えにくいのです。
それにしても、おじさんたちの仲間意識はどこから来るのでしょうか。チームで仕事をするなら団結は大切だと思いますが、一緒にゴルフをしたり酒を飲んだりすることでなぜ一致団結できるのか。
私が思うに、彼らにとっては「何も考えずに済む場」が必要なのかもしれません。立場や個性、性別、家庭環境など、それぞれの違いをあまり深く考えてしまうと、団結できないと思っている可能性があります。ゴルフや飲み会は、それらを忘れていい場だと捉えているのではないでしょうか。
本来は違いを理解した上で、それを超えて団結できるのが理想的だと思います。しかし現状は、深く考えずに集まって、たまたま集まった人だけを「仲間」と認定しているように見えます。
■上よりも同世代や若い世代との関係を大切に
これも、ともに楽しむための仲間ということならいいのですが、昇進昇格にも影響を与えるようであれば、早々に意識を変えてもらう必要があります。
繰り返しになりますが、皆さんのキャリアはあと数十年もあります。キャリアを長いスパンで考えれば、今から上の世代の考え方になじもうとする必要はありません。それよりも、同世代や下の世代との関係づくりに力を入れるほうが有意義です。
そして、自分が上司の立場になった時には、部下が「ゴルフや飲みニケーションに参加すべきか」と悩まないようにしてあげてください。確かに、同じ体験をして共通の話題を持てば人間関係は深まります。
しかし、それとキャリアアップは別の話。互いに無理のない範囲でコミュニケーションを深め、人間関係を築いていく工夫をしていただければと思います。
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大正大学心理社会学部人間科学科准教授
1975年生まれ。博士(社会学)。武蔵大学人文学部社会学科卒業、同大学大学院博士課程単位取得退学。社会学・男性学・キャリア教育論を主な研究分野とする。男性学の視点から男性の生き方の見直しをすすめる論客として、各メディアで活躍中。著書に、『〈40男〉はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)『中年男ルネッサンス』(イースト新書)など。
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(大正大学心理社会学部人間科学科准教授 田中 俊之 写真=iStock.com)
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