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このままテレワークが進めば、日本から「頑張ったで賞」は確実に消える

プレジデントオンライン / 2020年4月9日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tuaindeed

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「テレワーク」が広がっている。ブロガーのフミコフミオ氏は、「テレワークが普及した社会は、成果や結果の出しやすい環境になる。ただし、それは『頑張ったで賞』が認められないさみしい社会でもある」という——。

■導入の障害が「照れワーク」とは…

新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、テレワークを本格的に導入する企業が増えている。僕が勤めている会社でも、テレワーク(在宅勤務)導入に踏み切った。職場環境改善の視点からではなく、完全に世の中の流れに乗っての決定であった。流行に乗ってのドタバタ導入なので、前途多難である。

たとえば、僕はビデオ会議の導入を提案したのだが、上層部に却下された。

一部上層部の「面と向かっては話しづらい」という驚くべき理由で却下されたのである。テレワーク導入の障害が、「照れワーク」とは……。想定外すぎて驚きを隠せなかった。

テレワークの導入と運用については、各企業によってレベルに違いこそあれ、まだまだ問題は多いと思われる。まさしく産みの苦しみである。だが、テレワークを一時的なブームにしてはならない。

数年後に「テレワーク流行(はや)ったねー」と思い出話のネタにするのではなく、これをきっかけに働き方自体が変わればいい。否、変えていこう。

ムリ・ムダ・ムラを排し、生産性を高めていかないかぎり少子高齢化が進行しているこの国に未来がない、という危機感もある。しかしそれよりも、意味のない会議、愛想笑い、どこにいるかわからない上司待ちにわれわれはうんざりしているのだ。働くうえでのこうした無意味をなくし、仕事に集中して、早く退社して自分の使える時間を増やしたい。同じように考えている人は多いのではないか。

■ノイズがなくなる働き方

おそらくテレワークによって、純粋な仕事の能力が明確になってくるはずだ。肩書、高圧的な態度、大きな声など仕事に直接関係のないファクターで仕事の能力をごまかしていた人たちは、テレワークでそれらを剥がされてしまうので生き残ることは難しくなるだろう。

最悪リストラ対象になるかもしれない。うまくいけば、テレワークが普及した社会は、時間と場所を縛ることで労働者を支配下においているブラック経営者を駆逐しうるのではないかと僕は期待している。

ひとことで言ってしまえば、テレワークとは、働き方を変えるだけではなく、「純粋な仕事の能力=実力」が認められる環境へと変化をもたらすものである。

大半のそこそこマジメな多くの人たちにとっては、ポジティブな喜ぶべき変化だろう。騒々しい要因、人間関係や通勤時間から切り離し、ノイズを排除して仕事に向き合えればより成果を出せるようになるのは明白である。

僕は25年ほど会社員をやっている。振り返ってみると、仕事の苦労のほとんどは、仕事そのものの重要性や難易度ではなく、クソで役に立たない上司との軋轢(あつれき)や「聞いた」「聞いていない」「言った」「言ってない」というくだらない連絡ミスに起因していた。テレワークになれば完全とはいえなくても、こういったノイズやミスを少なくできるはずだ。成果や結果の出しやすい環境になるのは間違いないだろう。

■オンラインの打ち合わせはあっさりとキャンセルされる

一方、テレワークは、ある種の余裕やゆとりを奪いかねないので、ご利用は計画的にしていただきたい。

たとえば、オンラインで仕事をしているということは、相手からはいつでも補足されてしまうということでもある。外回りや公共交通機関の遅延と理由に逃げられないのだ。加えて、コンタクトを取りやすいことは、断りやすいということでもある。

オンラインでの打ち合わせやミーティングが「いつでもできる」ことによって、あっさりとキャンセルされる。「フザけんなよ」と心乱される事態も今後増えていくだろう。「いつでもできない打ち合わせ」だからこそキャンセルされにくいという利点があったのだ。

また、仕事をしている生の姿を見せられないので、頑張りが評価されなくなる。汗だくになって外回りや資料集めをしている姿はテレワークでは伝わらない。仮にそういった努力をテレワークでアッピールしても成果と結果以外はノイズなので「努力乙」のひとことで終わらせられるのが関の山である。

■「頑張ったで賞」は確実になくなる

僕は営業職である。営業という仕事でもっとも重要かつ難しいのは、新規客との面談を取り付けることである。テレアポやDMなど切り込む手段はいろいろあるが、古来より、ある一定の結果を出し続けているテクニックがある。「たまたま近くにいるんですけど」である。

なかなか会えない見込み客の近くまでいって電話をかけて、「車で百キロほど離れたホニャララ商事の者です。たまたま近くまで来ているので、営業トークもいっさいしませんので名刺交換だけでもお願いいたします」と告げるテクニックである。

ポイントは「距離を匂わせるフレーズ」をいれること、「たまたま」といいつつわざわざ会いに来ているようなわざとらしさをニュアンスに込めること。「私はあなたに会うためだけにこれだけ頑張っております」というメッセージを匂わせるのだ。

僕が20世紀から駆使しているテクニックだが、21世紀になってから20年たっても一定の成果を出し続けている。テレワークの世界でこのテクニックは通じない。まず担当者が在宅勤務なので、アポなしで赴くという努力が無効化される。それから名刺交換も「メール送っておいて」の一言で無効。会社案内や提案書もデータで求められるが、読まれずにゴミ箱行きは確実である。

このようにテレワークが普及した社会は、「頑張ったで賞」が認められないさみしい社会であることも心にとどめておいて損はないだろう。

■テレワークが見落としてしまうもの

テレワーク導入でムダを排した結果、見逃してしまう成果も出てくるはずだ。

たとえば在宅勤務者同士がオンラインで打ち合わせをする。要点のまとまった効率的な話し合いになる。データをやりとりしてその場でプロダクトを組み上げていけばその場で結果を出せる。ようやく時間や場所といった制限や、クソ上司のいちゃもんから解放された、われわれが待ち望んだ意味のあるミーティングができるような時代になったのだ。

だがそこに、ミーティングルームで顔を突き合わせて行われていた打ち合わせと同等の遊びやライブ感はあるだろうか。ない。感情がむき出しになるのを中和するその場の雰囲気はあるだろうか。ない。

僕はまだ経験はないけれども、オンライン会議で、ツイッターで見られる醜い応酬のような、感情がストレートに出てしまう事態も起こりうるのではないか。また、遊びやライブ感がないためにアクシデントや意外性のあるアイデアが生まれにくくなるかもしれない。

オンライン会議の画面の向こうでコロンブスが有名な卵のあれを実演しても、つまらない末端ユーチューバーの動画に見えてしまうのではないか。卵のアレは会議室のデスク、目の前で実演してこそ、サプライズとなりうる。

実際、会議室のなかでコップの水がこぼれる、鉛筆を落とす、資料を忘れるといったリアルなトラブルやアクシデントから生まれるアイデアを僕は否定できない。画面の向こうで水がこぼれても自分の問題としてとらえるのは難しいからだ。

■甘い誘いがなくなるのはちょっと…(まとめ)

あれこれとテレワークについて僕なりの考えを述べさせてもらったが、間違いなく言えることは、この流れを止めないかぎり、われわれの働き方は良い方向へとむかっているということである。

フミコフミオ『ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。』(KADOKAWA)
フミコフミオ『ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。』(KADOKAWA)

一方、テレワークを通して従来の働き方のストロングポイントも見えてくるはずだ。極端に走らずに従来型とテレワークの良いところを組み合わせてこそ、働き方は良いものになっていく。

僕自身、テレワークにシフトしていく流れには逆らえないだろう。現在のテレワークが抱えている問題も、近い将来には技術が解決し、われわれが会社へ行くことはなくなるかもしれない。入社から定年退職まで一度も出勤せずに終わる会社員も誕生するはずだ。

私事になるが、自分のデスクに無造作に置かれた書類のなかに「今夜どうですか?」と魅惑的な女性からのメモが挟まっている……そんなすてきな経験をするまでは、これまでの働き方をしばらく続けたいと思っている。では皆さま、良いテレワークで良い職業人生を!

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フミコ フミオ ブロガー
1974年2月、神奈川県生まれ。神奈川の湘南爆走族エリアに生息する中間管理職。「はてなブログ」の前身である「はてなダイアリー」で2003年からブログを始め、今では月間100万PVを誇る会社員ブロガー。独特な文章でサラリーマンの気持ちを代弁。ツイッター:@Delete_All ブログ

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(ブロガー フミコ フミオ)

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