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わずか2週間前に「総額440万円の結婚式」の中止を決めた新郎の主張

プレジデントオンライン / 2020年4月30日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pdiamondp

いま結婚式を開いてもいいのか。それとも中止するべきなのか。4月11日に挙式と披露宴を予定していた東京都の会社員、松尾英樹さん(29歳)は、ギリギリまで迷った結果、3月27日に「中止して、秋に延期」を決めたという。なぜすぐに決断できなかったのか。本人に事情を聞いた――。

■式場から届いた延期をうながすメール

「日程の変更をおすすめさせていただくことになりました」

東京都内のIT企業に務める松尾英樹さん(29歳)に結婚式場からのメールが届いたのは、3月27日。小池百合子東京都知事による、「週末の不要不急の外出自粛要請」が出された2日後だった。

松尾さんは、4月11日に都内の式場で結婚式と披露宴を行う予定だった。2018年10月から式場探しを始め、2019年3月に予約。今年1月上旬には招待状を発送し、順調に準備を進めてきた。式は神前式で、披露宴の招待客は90名程度、総額で約440万円の支払いを予定していた。

もともと松尾夫妻は、結婚式を挙げるつもりはなかった。その分、新婚旅行でお金を使おうと思っていたのだという。だが、新婦の父親から「どうしても結婚式を挙げてほしい」と言われ、式を挙げることを決意した。

日本国内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されたのは1月14日。東京都内では2月13日に最初の感染者が確認された。松尾さんの勤務先では、2月19日から在宅勤務を開始している。だがこの時点では、「4月の結婚式を延期にすることになるとは思ってもみなかった」という。

■「今、式を挙げなければいけない」と決断

2月に入り、徐々に感染者数は増えていった。2月25日、政府は新型コロナウイルス感染症対策の基本方針を表明し、風邪症状がある場合の休暇取得、テレワークや時差出勤の推進、イベントの開催の必要性の検討を要請。2月27日には、全国の小中高・特別支援学校に3月2日から春休みまでの休校を要請した。この時、安倍晋三首相は、「ここ1~2週間が極めて重要な時期だ」と発言していた。

松尾さんは「不安な気持ちはあったけれど、安倍首相は『ここ1~2週間が重要な時期』と言っていたので、収束に向かうと思っていました。アルコール消毒液の設置やマスクの配布など、当日の感染防止対策が必要だと思っていた程度です」と振り返る。

状況は流動的だったが、3月中旬、夫妻に開催を決意させる出来事が起きた。新婦の父親にガンが見つかったのだ。松尾さんは「絶対に、今開催しなければならない」と決意を固めたという。

■都知事の「外出自粛要請」でパニックに

だが、それから状況はどんどん深刻化していった。3月25日、小池都知事が記者会見を開き、週末の「不要不急の外出自粛」を要請。このニュースを聞いて、松尾さんは大きく決意が揺らいだという。

「ちょっとしたパニックになりました。90人規模の式を開催してもいいのか、それとも延期するべきなのか。お義父さんのことがあったので、何を基準に判断すればいいかわからなくなりました」

松尾さんを戸惑わせたのは「自粛要請」という言葉だった。結婚式が「禁止」されているわけではないが、開催は感染者を出すリスクがある。出席を自粛する招待客も出てくるだろうし、当日、東京がどんな状況になっているか予想もつかない。だが、新婦の父親の病状がこれからどうなるかもわからない。もしものことがあれば、式の延期を後悔するかもしれない。夫婦で悩み続けた。

■「参加者全員の安全」を優先する

延期を決断できないまま、3月27日に在宅勤務に関するミーティングで出社した。そのとき主賓として招待していた勤務先の社長に、結婚式の開催について尋ねられた。

「とにかく情に厚い人なんです。その人から『松尾くんが開催するならもちろん参加するけど、どうするの?』と聞かれたことで、参加者全員の安全を優先すべきだと思いました。聞きにくいことをさらっと聞いてくれたことで、延期を後押しされたと感じました」

同じ日の午後、式場から「日程の変更をおすすめさせていただくことになりました」というメールが届いた。松尾さんが式場に延期の意思を伝えたのはその2時間後のことだ。

延期の決断を迷っていたのは、キャンセル料のこともあった。結婚式の予算総額は約440万円。式場へ払う約400万円と、式場に持ち込む引き出物代などの約40万円だ。契約した式場では、「挙式日の30日前~11日前」は「期日変更料」がかかる。松尾さんの場合、約400万円の支払いのうち、約52万円のキャンセル料がかかると見込まれた。

ただ、幸いなことに今回は延期による式場への支払いは生じなかった。一斉休校の要請が出た翌日の2月28日時点で、「式の2週間前までの変更では移動料金はかからない」という旨の連絡をもらっていた。さらに延期を決めた3月27日時点では、「1週間前まで」と条件が緩められていた。ただし、式場以外で手配していた引き出物代などの実費は戻ってこない。

■あえてネガティブなことを考えなくなっていた

結婚式では「ご祝儀」を加味して予算を立てるのが一般的だ。だから不測の事態でキャンセルとなれば、開催時に比べて格段に多い出費を迫られる恐れがある。そうしたリスクを考えているカップルは多くはないだろう。

「結婚式を予約した当初は、当日の天気や自分たち、参加者の健康程度しか考えていませんでした。でもいま振り返ると、2月後半からは、あえてネガティブなことを考えないようにしていた気がします。思考にフィルターがかかっていた感じです」

結婚式を挙げることを強く勧めていた新婦の父親は、新型コロナウイルスの感染拡大が進むにつれ、「延期を考えてもいいのではないか」と言うようになり、延期を決断した時には、「よく決断したね。つらかったでしょう」と2人の判断を受け入れてくれたそうだ。

松尾さんは同じ式場で今年の秋に結婚式を行うつもりだという。秋までに収束しているかはわからない。その場合、来年4月まで延期ができ、日程を移動したことに追加料金はかからないという。

「自粛」は強制ではない。たとえ多額の出費が生じたとしても、それは自己責任となる。いま結婚式に限らず、あらゆる場面で自粛による想定外の出費が生じているだろう。これはいつまで続くのか。先行きの見通せない状況が続いている。

(プレジデントオンライン編集部)

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