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コロナショックでも「首都圏タワマンは安全資産」と言い切れる理由

プレジデントオンライン / 2020年5月1日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokoroyuki

新型コロナウイルスは不動産価格にも影響を与えている。それはこれまで資産性が高いと言われていた首都圏タワーマンションの場合はどうか。スタイルアクト代表の沖有人氏が解説する——。

■たしかに「値下がり幅」は大きいが…

コロナショックは不動産に直撃を食らわせた。特に影響を受けているのが都心のタワーマンションだ。

都内のマンション価格は「アベノミクス」の結果、2013年から2019年にかけて3割以上値上がりした。特に上昇幅が大きかったのが都心のタワーマンションだ。一方、戸建ては1割も上がらなかったため、マンションは値上がりしやすい「資産性のある」不動産という認知が進んだ。

ただ、コロナショックで不動産価格も影響を受けている。都心のタワマンも、大きく値上がりした分、値下がり幅は大きい。ただし、資産性の高さは揺るがない。重要なことはどこまで下がるかという「振れ幅」だ。私の予測をお伝えしたい。

先日、IMF(国際通貨基金)がコロナショックで日本のGDPが5.2%のマイナス成長になると予測し、2009年(マイナス5.4%)以来の大幅な落ち込みを想定している。ひとまずはリーマンショックの時と同等と考えると、下落幅は見込みを立てやすい。

リーマンショック後に首都圏の中古価格は1割ほど下落した。だが、それも一時的で1年後には反転を始めて、その1年後には価格が以前の水準に回復している。これは新築デベロッパーが多く倒産したために新築供給が一時的に3分の1ほどに急減したことと連動している。供給が減ると需要が安定している住宅の価格は上昇する方向に向くのだ。

■新築価格がドカンと下がらない構造的な理由

今回のコロナショックでは、人と人との接触を減らす必要がある。新築の販売センターは密閉空間に近いので、販売はある程度自粛せざるを得ない。こうなると、新築を供給しているデベロッパーの上場企業シェアは半数以上であることから、自粛は遵守され、新築の供給戸数は大きく落ち込む。

ただし、売れ行きが悪いから価格を下げるという因果関係にはならない。供給戸数が減ると、需要は一定量あるので、リーマンショック後と同じで価格をあまり下げる必要がなくなる。販売活動がやりにくいがゆえに価格は下げにくくなる可能性が高い。売れ行きが悪化したら、価格が下がるならもうとっくに下がっている。

なぜ「需給バランスが悪化すると価格が下がる」という教科書通りの市場メカニズムが働かないかというと、供給戸数も価格も供給側が決めることができるからである。それも新築のマンションデベロッパーは大手7社で半数程度を供給している。上場企業に限定しても7割程度のシェアがある。こうした少数の会社が市場を占めている状態では市場メカニズムは働かない。これも経済学の教科書に出てくる程度の常識的な話だ。

とはいえ需要が減退する分、販売期間が長引くことになるが、それは財務力と低金利の借入のおかげで大企業は我慢することができる。こうして新築マンション価格が下がらないと中古価格が下がる理由がなくなる。

■新築も中古も供給戸数が減るので、価格下落は限定的

新築の2019年の供給戸数は3万1000戸ほどだった。2020年の供給戸数は2万戸を割り込むかもしれない。過去の最低戸数は2万6000戸弱だったので、これを割り込んで史上最低になることを私は確実視している。

新築供給が少ないと、中古物件を購入する人が増える。しかし、その中古成約件数も首都圏の3月は前年同月比で12%低下した。3月に入って株価が落ち込み、不動産価格への先行き不安はJ-REIT(日本版不動産投資信託)が平均25%下げたことから取引を控える層は確実に増えたと想像される。しかし、取引件数は4月以降本格的に下がる。取引は引き渡しの約1カ月前には契約しているからだ。3月はまだコロナの余波は小さかったと見たほうがいい。

こうして、中古の取引量も減ると、中古価格が下がりにくくなる。投げ売りなどの売り物が増えると言う人がいるが、投げ売りができるのは一部に限られる。なぜなら、通常マンションを買う時には価格の9割程度の住宅ローンを借りているからだ。1割超下げたところでは、住宅ローンの返済ができなくなってしまうので、売るに売れないのだ。

■新築マンションを購入するなら3年は待つべき

都心の高い建物が建つ用地は、ホテル>オフィス>マンションの順に検討が加えられていた。コロナショックの前まで、マンションが最も不利だったのだ。ゆえに、リーマンショック前の2005~09年やアベノミクス後期の2015年以降は景気がいいので立地が悪く、不景気だった2001~2004年、2010~2014年は立地がいいし、価格も安かった。

今回のコロナショックは、新築マンションの用地購入価格を下げる。しかし、用地は購入してから、販売が始まるまでに2~3年掛かる。このため、リーマンショック後に購入した安くなった土地価格がマンション価格に反映されたのは2~3年後だった。新築マンション価格は急には変われないのである。

しかし、3年後には好立地の大型マンションの供給がリーズナブルな価格で期待できるようになるかもしれない。価格の目安はリーマンショック後と同じで、現在の1~2割下がったところだ。

マンション価格は新築価格が相場をリードする。新築相場に準じて中古相場が作られるからだ。新築が下がれば、中古も連れて下げることになる。こうなると、中古マンション価格は3年後のリーズナブルな新築が出てくるまで相場は緩やかながら軟調になることが予想される。

■「下げ局面」に価格が維持されやすい物件の特徴

下げ局面になった時に、価格が維持されやすい物件には特徴がある。それは上げ局面とほぼ同じ、都心・駅近・タワー・大規模(総戸数が多い)だ。

逆にリスクが高いのは、30平方メートル未満の投資用ワンルーム、90平方メートルを超える広い面積帯になる。元々需要が少ないセグメントだと思ってもらって間違いない。取引量が減ると、最もニーズが多い70平方メートル台の3LDKは底堅いが、それ以外は購入希望者の絶対数が少ない分だけ取引が成立しにくく軟調になるのだ。

■マンションを売るなら、今すぐ売ったほうがいい

マンション価格の今後の動き方のシナリオを描いておこう。まず、マンション価格は暴落しない。価格は上がる時も下がる時も3カ月前、半年前と比較して「高い」「安い」を語るものだ。価格推移はいつでも徐々に上がり、徐々に下がるのだ。だから慌てることはない。当面、価格は弱含みで下げ基調になる可能性が高いが、それは緩やかである。そして、その当面のゴールは3年後のリーズナブルな新築価格になる。

このシナリオから、売り時が決まる。売り時は早く売ったほうが半年・1年後よりもお得になる。購入した時期によっては含み益が数千万になっている人もいるだろう。利益確定をやるなら、今だ。その際には、相場よりも高く売りたい。そのためにはどの仲介会社が相場よりも割高で売ってくれるか、知りたいところだ。

そこで、成約した価格を査定してみて、仲介会社ごとに相場より何%高く売ったか調べてみた。高く売っている会社には特徴があり、それは両手取引の割合が低いことだ。両手取引とは自社で売り手も買い手も見つけてくることだ。これをするには売り手だけ有利になるように高く売る行為はできず、結果的に相場よりも安くなりやすい。いわゆる高く売りたい売り手と安く買いたい買い手との利益相反が起こるのだ。

こうした情報は私が主宰する住まいサーフィンの会員に限定して売却相談で伝えている。知っているか否かが数百万円の違いになって表れる。資産性を実現益にするには、売って初めて完結するのだ。

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沖 有人(おき・ゆうじん)
スタイルアクト代表
1988年、慶應義塾大学経済学部卒業。監査法人トーマツ系列のコンサルティング会社、不動産コンサルティング会社を経て、1998年にアトラクターズ・ラボ株式会社(現在のスタイルアクト株式会社)を設立、代表取締役に就任。著書に『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『独身こそ自宅マンションを買いなさい』(朝日新聞出版)など多数。分譲マンション情報サイト「住まいサーフィン」(https://www.sumai-surfin.com/)、独身の住まい探し情報サイト「家活」(https://iekatu.com/)を運営している。

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(スタイルアクト代表 沖 有人)

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