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超一流の人事部は知っている「学歴止まりの人、学歴からの人」

プレジデントオンライン / 2020年5月9日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hocus-focus

経済界を代表する有力企業に多数の卒業生を送り込む早稲田と慶應。企業の採用・昇進に、出身大学はどこまで影響するのか。採用に長年携わる大手企業の現役人事4人に集まってもらった。
コンサル
早稲田大学卒。コンサルティング企業の人事部に所属。新卒採用と中途採用を担当。ダイレクトリクルーティングやリファラル採用の強化を行った経験がある。
IT
旧帝大卒。大手IT企業で新卒採用、中途採用、障害者雇用などの採用を担当している。ダイバーシティを推進するトレーニング内容などの設計も担っている。
金融
慶應大学卒。東京に本社がある大手金融企業の人事部に所属。新卒学生の採用や社員のトレーニング、女性活用などを担当。人材配置の設計にも携わっている。
メーカー
地方国立大卒。化学系メーカーの人事部に勤務。新卒採用の取りまとめと社内の人材開発を担当。就活生の見る掲示板やSNSの書き込みを毎日チェックしている。

■新卒採用では慶應がリードする理由

――本日はお集まりいただきありがとうございます。今回は出身大学が企業の採用や昇進にどこまで影響があるのかについて伺います。まずは新卒採用についてですが、みなさんが面接などをしていて、出身大学によって受ける印象はどれくらい差があるでしょうか。

【メーカー】年間300人以上面接をしますが、大学のカラーは結構出ますね。まずは、都市部の大学と地方の大学。持っている情報の量が圧倒的に違います。都市部の学生はインターンやOB・OG訪問、バイト先の他大学の学生などから生の情報を得ているので、面接でも的を射た回答をする学生が多いですね。特に、慶應の学生は学部内やゼミでの情報交換が盛んなようで、より情報を持っているイメージはあります。

――都市部と地方でそんなに違うんですね。近年ツイッターなどで話題にあがるフレーズに「学歴フィルター」があります。みなさんの会社ではありますか。

【金融】うちは総合職で100人程度採用しますが、大学別に採用枠が決まっています。2020年4月の新入社員もほぼ予定通りの割り振りで採ることができました。

――東大をはじめ、早稲田や慶應などの上位大学でどれくらいの枠があるものですか?

金融

【金融】東大、京大、一橋、早稲田、慶應で半数を超えますね。この5つの大学の枠はほぼ同じ配分になっています。

――人数の割り振りは毎年変わる?

【金融】いえ、過去の採用実績と同じ割合なのでほぼ変わりません。ただ、国立上位と早慶などの難関大だけではなく、地方の国立大なども幅広く枠はあります。たとえば北海道も北海道大学だけではなく、小樽商科大学なども毎年採用していますね。

【コンサル】うちの会社は学歴フィルターはまったくなく、すべてオープンに選考をしています。SPIに近い適性検査で最初の選考をして、エントリーシートの段階でも学歴は見ることなく結果だけで見ています。

■本当に大学名を見ずに面接をした結果は?

――全然違いますね。ちなみに大学の枠が決まっているなかで、採用枠のない大学の学生がとてもよかった場合、内定することはあるんですか?

【金融】ほぼないですね。というのも、ずっとリクルーター制度をとっているので、同じ大学で先輩がいない大学はそもそも選考に進めないようになっています。例外的に海外の大学から採るくらいですかね。

メーカー

【メーカー】うちはリクルーター制ではないですが、ターゲット校は決まっています。第一段階は関東と関西の大学。関東でいえば東大・一橋・東工大と早慶上智、関西は京大と阪大・神戸大と同志社・立命館ですね。大学に出向くのもこの大学だけです。ただ、うちは通年採用をしているので、冬採用と春採用はほぼターゲット校で埋まりますが、夏以降は内定辞退なども出てくるので、ターゲットの設定をやめて採用をしていきます。

――エンジニアの多いIT企業はどんな絞り込みをするんですか?

【IT】うちは外資系なこともあって、まったくフィルターはないです。大学名はもちろん、高卒でも同じ採用枠で選考しています。選考はもちろんですが、入社した後も学歴を聞かないので、何年かしてたまたま同じ大学だと聞いて驚くこともよくある。採用時に確認しているのは国籍ぐらいです。

――ある有名電機メーカーでは数年前に多様性を高めるために学歴不問にしようとエントリーシートから大学名を書く欄をなくして選考をした結果、結局偏差値の高い国立難関大と早慶が多くなって、翌年に大学名の記入が復活したと聞きました。みなさんの会社では出身大学を見ないで選考していっても、結局は難関大の学生の比率が高くなることはないですか?

【コンサル】たしかに選考をしていくと偏差値の高い旧帝大や早慶が残るのが実態です。

――コンサル業界だと特に東大や京大がほとんどで、早慶でも人数が少ない印象がありますが実際はいかがですか?

【コンサル】うちもそうですが、競合のコンサル会社も筆記試験の後でケース面接などを5~6回繰り返すことで、ペーパー試験ではわからない地頭のよさを見ています。そうするとどうしても東大・京大や早慶の学生が多くなってしまいます。ただ最近はコンサル業界の認知度が上がってきたので、地方の旧帝大などの学生からの応募が増えていて、内定者の大学もばらける傾向にあります。

■SNS時代に編み出された採用新手法

――最近は就活生向けの掲示板サイトやツイッターでの情報交換が盛んになっているので採用する側の手間が増えていそうですが、何か新しい方法を始めたりしているんですか?

IT

【IT】うちは最近、内定した学生からの紹介で選考に進む「リファラル制度」をつくりました。

――社員のリファラル採用はスタートアップ企業などではよく聞きますが、内定者からは珍しいですね。

【IT】活躍している社員のプロファイルデータを分析してみると出身大学やコミュニティ内での友人の数や付き合い方、スキルの習熟度などで類似の傾向が見られたので導入しました。紹介で受けた学生はその後の選考もスムーズに進むケースが多いのでこれからも増えていきそうです。

【メーカー】うちの会社では、3年前からダイレクトリクルーティングを始めました。欲しい人材の要件に合わせて直接アプローチできるので効率は上がっていますね。特にスポーツ分野のビジネスも手掛けているので体育会出身者を選ぶのには適していたなと思っています。

■強大な権力を持つ“リクルーター課長”

【金融】体育会系の話でいくと、うちは出身大学別にリクルーター担当課長がいて、その人が体育会出身だと同じ部の出身者は優遇されることがよくあります。

――リクルーター担当課長って、なんですか?

【金融】学生に会って面談をするリクルーターとして、社員が1000人くらい駆り出されるんですが、その取りまとめ役として部署は関係なく大学ごとにリクルーター担当課長がその大学の出身の先輩から任命されます。その課長をトップに採用の方針が決められ、同じ大学出身のリクルーターたちは動くことになります。

――そんなに権限強いんですか?

【金融】絶大です(笑)。たとえば早稲田から10人採用するとして、まずリクルーターたちが数百人のなかから選んできた20~30人。そこからリクルーター担当課長が会っていって最後の10人を選ぶんです。

――すごい権限ですね。その過程で体育会系の優遇もあるんですか?

【金融】ありますね。私も母校のリクルーターをしていて、以前、面談の評価が高くないのに最後まで残っている2人のラグビー部の学生がいて、なんでかと思ったらリクルーター担当課長が同じ大学のラグビー部出身だった。ほかのリクルーターたちが忖度したのか、リクルーター担当課長が何か言ったのかはわかりませんが、そんなこともしばしば耳にします。

■内定者時代から慶應は一歩リード

――そんなに同じ大学で繋がりがあると、入社後も影響ありそうですね。

【金融】うちは慶應OBで「三田会」を盛大にやっていますよ。毎年200人ぐらいで、都心の大型ホテルで開催されています。会費は8000円ぐらいとか(笑)。内定者も呼んでいるみたいです。先輩たちが配属先の希望の出し方などを話しているとも聞いています。

――そうなんですか。内定者時代から慶應は一歩リードしてるんですね。

【メーカー】うちはオフィシャルな三田会や稲門会はやっていませんが、伝統的に採用者が多い早稲田のあるゼミがあって、そこのOB・OG会は頻繁にやっているそうです。早稲田出身じゃないのに、そのゼミ出身だとわかるくらいなぜか知れ渡っています(笑)。

【IT】うちは聞いたことがないですね。ただ商社の知り合いも「三田会」は派手にやっていると言っていました。その会社は銀座で開催が多いとか。

コンサル

【コンサル】うちは入社後も昇進も、大学によって変わるということはまったくないですね。先ほどIT企業では学歴がわからないとおっしゃっていましたが、うちも出身大学を聞く人もいないし、大学別の飲み会なんかもないので出身大学を知る機会もない。ほんと結果次第です。

【メーカー】うちは早慶よりもマイナーな大学の飲み会の話をよく聞きます。北大出身者で「北の飲み会」的なことをやっていたり、MARCHでも人数の少ない明治出身者だけの“明治会”なんていうのもあります。同期が明治出身なんですが、毎回「早慶のやつも大したことない」という話で盛り上がるらしいです。

――実際、昇進にも出身大学は影響あるんですか?

【金融】うちは会社に入る入り口は大学の影響が大きいですが、入ってしまうとあまり影響はないですね。単純に同期のなかで実力の勝負です。本人には開示していませんが、入社1年目から評価をつけていて、1番から順番にナンバリングしています。ただ、ほぼ同じ評価のときは東大、京大や早慶など役員が多い大学出身者がランキング上位になることはあります。

――その同期バトルの結果はどこでわかるんですか?

【金融】隠してるんですよ。人事しか把握していません。入社10年目を過ぎた頃には、ほぼほぼ決まっています。そこでランク付けが上位の社員は、幹部候補生として昇進していきますね。

【メーカー】うちの会社は、表向きは大学による昇進の差はないことになっています。ただ、どこまでいっても昇進や異動が決まるときは部長同士の話し合いで決まるので、最後は部長たちが評価している親しい部下や後輩が選ばれます。いまの部長たちは慶應と同志社が多いので、全体として見るとその2校の出身者が配属でも優遇されています。早稲田はメインストリームにはいないですね。

■出身大学よりも昇進に影響を与えるモノ

【コンサル】うちは案件獲得が昇進決定のすべて。よりインパクトのある大きなプロジェクトや最先端のプロジェクトを持ってきたり。自分で切り開いて成果を出して、まわりに実力を認めてもらった人が昇進していく。学歴の恩恵なんて感じたことはないですね。

――なるほど。昇進でいえば、学歴に加えて、政府が旗振りをしていた女性活躍で、女性の抜擢も増えてきているかと思います。その影響はいかがですか?

【IT】私は前職で政府系の研究機関の人事部にいたのですが、そこでの最初の仕事が、女子学生に役員がつけた面接の評価をマイナスに書き換えるという仕事をしていました。

――それはなんでなんですか?

【IT】面接の結果を書き換えないと評価上位が全部女性になってしまうからです。男社会の闇を感じましたね。

【メーカー】うちも女性には出世するというキャリアパスがないんです。女性には出張させられないとか、転勤させられないとか、逆配慮ですね。入り口は一緒なのに、役職が上がれば上がるほど、厳しくなっていく。数年前に部長職に女性を中途採用しようとしたら役員たちから「女性に部長が務まるわけがない」と言われたこともあります。

――女性活躍と言いながら、実態はまだ男社会なんですね。

【メーカー】差別という意味では、学歴より男女のほうがきつい。学歴で入った後に差別されることはないと思うんです。でも男女のことは、入るときも入った後も続く問題。

【金融】うちは経団連にも所属しているので、政府が女性の管理職比率を20%にしろと言っていたのに合わせて、評価にゲタを履かせて昇進を早めました。最初のうちはよかったのですが、毎年少ない女性社員のなかから候補を探すので、最近は候補すらいなくなって困っています。

――実際、無理に昇進させて問題はありますか?

【金融】任せられる仕事に対して能力や責任、そもそもやりがいみたいなものがマッチしていないので負荷が多くなってヒーヒー言いながら働いています。しかもうちの場合、転勤のない一般職から管理職のポストに上げていこうとしているので、本人たちが可哀想ですね。

(巴 康子 撮影=市来朋久)

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