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一向に給付されない「一律10万円」…いつまで国民は我慢を強いられるのか

プレジデントオンライン / 2020年5月13日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BrianAJackson

緊急事態宣言が5月末まで延長とされ、手持ちの現金がショートしかねない多くの人々が悲鳴を上げている。すぐさま救いの手が差し伸べられるべきなのは当然なのだが、スピード感がまるで感じられず……。

■こんなにも手厚い米国の経済支援

コロナ禍で世界的に経済支援策が次々と打ち出されています。(図表1)

各国の経済支援

米国の経済支援当初、日本では低所得者へ「30万円」給付する支援策が検討されました。しかし、対象者となる条件が非常に複雑かつ、「ウソの申告が増えるのでは?」「極めて選別主義的だ」との批判の声も出たことで撤回され、最終的に全国民に一律10万円給付が決まりました。

しかし、一律支給に決まったはいいものの、気になるのはいつ配布されるのか? というタイミングの問題です。

米国では「新型コロナウイルス経済対策法(The Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security (CARES) Act)」が署名されました。これにより、個人には一律支給として13万円相当が出ることが決まりました。しかもその給付も極めてスピーディーです。トランプ大統領が法案にサインをしたのが3月27日、4月中旬には給付が始まっています。国土も人口も日本を圧倒する大国である米国のスピード感からは「本気度」が伺えます。給付を受けたアメリカ人がSNSに喜びの声を上げている様子も伺えます。

同国では予算として230兆円も盛り込んでおり、単純計算でこの13万円を3億2800万人の人口でかけても42兆6,400億円に留まります。米国の現金給付は所得ごとの支給額の違いのあるので、実際にはこのようなシンプルな試算にはなりません。が、ざっくり規模感をお伝えするなら、米国の経済支援は187兆円規模もの「一律支給以外の経済的支援」も用意されているということになります。(図表2)

一律支給以外の経済的支援

個人への現金給付は大人1人に最大1,200ドル(約13万円)、17歳未満には500ドル(約5万3000円)が支給されます。年収が7万5000ドルまでは満額が支給されますが、それ以上の規模の所得者には段階的に金額が減っていく「累進型」を採用しています。

さらに、米国では国としての経済支援に留まらず、各州でも独自の支援策を打ち出しています。州ごとに支援内容が異なりますが、失業者への支給や政府補償を得られない移民に対しても現金給付を行うなど「手厚さ」を感じます。

■歴史は繰り返すのか…日本の給付が遅れそうなワケ

日本においてはリーマンショック時には、国民1人当たり1万2000円の「定額給付金」がありました。当時、給付金は自治体を通じて配布されましたが、その際配布のタイミングに非常に長い時間がかかりました。総務省の資料によると当時も給付が決まっても、その支給には半年もの時間がかかったことが明らかになっています。

リーマンショックと今回のコロナ禍の一律支給は「申告制」という点で共通しています。リーマンショック時は自治体から住民へ申込書類を発送し、振込先の銀行口座などを記入した上で返送するというものです。送られてきた書類を1つ1つチェックし、時には記述の誤りの修正などの対応を迫られつつ、人海戦術で対応したと推測されます。

しかし、今回の給付は当時の状況以上の混乱が予想されています。すでに出ている兆候としては次のような話があります。「マイナンバーの取得をしていれば給付の受け取りがスムーズ」という話が広がり、一律支給申請に先立ってマイナンバー取得のために窓口に人が殺到しました。その結果、コロナ禍の被害救済の名目で支給を受けるために、混雑する役所に手続きにいくという皮肉な状況になっています。

自治体でもコロナ禍の対応に追われているところに「一律支給の対応」という仕事が追加された格好となります。日本国民から大量に提出される書類のチェックを余儀なくされ、5月中の速やかな支給は難しいと見られます。

今回の給付は「当座のお金がなく、経済的に困窮する者を救う」という名目ですから、給付が遅くなってしまうと緊急で経済支援を要する人が救われないことになり、給付の意味合いがなくなります。

■またも格差か?…支給日格差が生じている事情

一体、いつになったら支給されるのか不透明な一律支給ですが、なんと国内でもすでに給付された人も出ている「給付格差」が生じている状況です。給付は自治体を通じて行われますから、この支給タイミングの差は住んでいる市区町村によって生じていることになります。

同じ都道府県内でも支給タイミングに差があるのです。たとえば沖縄県では、同県内の41市町村のうち、33市町村が5月中の支給を予定しています。逆にいえば沖縄の中でも8つの市町村は5月以降になる可能性があるということであり、現場対応の混乱と給付の仕組みの不透明感が漂う格好となっています。

北海道・東川町では「先払い」の対応をしたことで、すでに給付を受け取った人も出ています。

緊急性を要する一律支給も、場所によって給付格差が生じているという状況です。マイナンバー申請で先行して起きている窓口への問い合わせに人が殺到、という憂き目に遭うことのないようにしていただきたいものです。

■戦時中の愚策・戦力の逐次投入を回避せよ

現金給付に限らず、日本政府の対応は後手に回る部分も見られ、非常時の愚策の典型である「戦力の逐次投入」、つまり腰が引けたまま、本質的な解決には直結しない施策を小出しにしている感があります。布マスク配布の話が持ち上がったかと思えば、和牛券の配布などの案が次々に持ち上がってはなくなっていきました。布マスクについて言えば実現はしたものの、不良品問題で未配布マスクの回収というお粗末な対応につながっています。

この「逐次投入」がどれだけひどい悪手であるかは、歴史を紐解けば明らかです。太平洋戦争時のガダルカナル島における米国との戦いにおいて、日本軍は米軍の圧倒的な火力・戦力の規模を何度も見誤り、そのつど相手に劣る戦力をもって相まみえたことで、決定的な敗北を喫する結果となりました。

もともと日米の火力に大きな差があったので、最初から一挙に兵力投入していたとしても、ポジティブな結果が出たとは限りません。が、様子を見つつ、限られたリソースをその都度小出しにしていく「逐次投入」が必ず失敗を招くことは、ガダルカナルにおける夥(おびただ)しい数の犠牲者と相まって、我々の痛切な教訓となっているはずです。そう考えると、現行のコロナ禍の下でその教訓が生かされているとは言い難いのではないでしょうか。

■「逐次投入」への反省と教訓としてあげられること

今日のコロナ禍を未知のウイルスとの戦争と捉えるなら、「逐次投入」への反省と教訓としては次があげられるでしょう。

1.敵を侮らない。
2.中途半端ではなく、やるなら全力全開で挑む。
3.作戦の遅れは敗北につながる。有効と思われる対策は可及的速やかに。

そう考えると、春節時期における中国人観光客のせき止め、緊急事態宣言の遅れ、一律支給の遅れといった後手の施策は今も、そして今後も尾を引く可能性は高いでしょう。一律支給は「細かいことは抜きにして、まずは現金支給を」という緊急性を要するものです。しかしながら、コロナ禍に端を発する経済的困窮が理由で、企業の倒産や海外では個人の自殺者などすでに痛ましい事件となって方々で起きているのです。

給付金を葬式代の足しにする悲喜劇は、何としても避けねばなりません。必要な人に必要なタイミング、つまり今すぐに支給されるためにも、政府の手腕が問われます。

(ビジネスジャーナリスト 黒坂 岳央)

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