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「得意を伸ばす」と「苦手を克服」、休校中に優先すべきなのはどっち?

プレジデントオンライン / 2020年5月19日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

新型コロナウイルスの影響で学校が休校になり、子どもたちは自宅待機を余儀なくされている。アメリカで塾を経営する船津徹氏は、「まとまった時間を生かして、子どもの得意分野を伸ばしてみてはどうだろうか。得意なことを見つけた子どもは自信もつき、コロナ後の社会で活躍できる」という——。

■アフター・コロナを生き抜くカギは「環境適応能力」

先が読めない、変化の激しい時代を生き抜くには、環境の変化に柔軟に適応できる「環境適応力」を備えていることが必要です。新型コロナのパンデミックは子どもの学びの環境を一変させました。学校に通って先生の授業を受けるという「受動的な学び」から、家庭で自学自習するという「能動的な学び」への転換が子どもたちに求められています。

この変化にいち早く適応できる子と、できない子の間には、アフター・コロナにおいて大きな「差」が生じます。どうせ学校に行けないからと学びをストップさせてしまう子どもと、家庭でコツコツと自学自習に励んでいる子どもの間では、コロナの収束後に大きな学力差が生じることは明白です。

子どもの「環境適応能力」を育てるには、まず親が率先して行動を変えていかなければなりません。子どもは親の行動から自分の行動規範を作ります。親の方から「勉強は学校で教えてもらうもの」というこれまでの価値観に縛られず、「勉強は家庭で自学自習するもの」と思考を転換してみましょう。

■世界で増加するホームスクーリングとは何か

ホームスクーリングという教育スタイルがあります。読んで字のごとく、子どもが学校に通わずに家庭で学習する様式であり、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなどで合法化されています。中でも多様性を尊重するアメリカで一般化しており、学齢期の子どもの3.5〜4.5%に相当する200万〜250万人がホームスクーリングを受けています。

ホームスクーリングの一番のメリットは、子どもの興味や関心に合った教育が実現できることです。学校では一人の先生が20〜30人の生徒を指導しますから、それぞれの子どもに合った教育を与えることは不可能です。しかし、ホームスクーリングであれば、子どもの興味に合った学びを実践できます。

「自宅で子どもに勉強を教えるなんて無理!」と思うかもしれません。しかしホームスクーリングを実践しているたくさんの親たちからすれば、子どもを家庭で教育することが「当たり前」なのです。まずは学校から提供されている課題や宿題を「子どもと一緒にこなすこと」からスタートしてみましょう。

■親の覚悟で自宅待機が有意義な時間に変わる

親子で勉強する時間が増えるにつれ、子どもの興味、関心、得意分野が見えてきます。ホームスクーリングを成功させるポイントは、不得意の克服ではなく、得意分野に目を向けることです。子どもが主体的・能動的に学習に取り組むには、興味あること、好きなこと、得意なことを見つけて、それを探求する機会を作ってあげることが近道です。

新型コロナウイルスの収束を指折り数えて待っている間にも、子どもは成長していきます。学校に通えない今こそ、ホームスクーリングに取り組む絶好のチャンスと思考を転換しましょう。ホームスクーリングを実践することで、今まで気づかなかった子どもの能力や才能を発見できるはずです。

現代社会は、学校に行かなくても、インターネットを活用すればいくらでも学びを深めていくことができます。親が家庭の中で「学びの環境」を作り、自学自習できるようにうまく導けば、子どもは主体的・能動的な学びに適応していきます。自宅待機がしばらく続くという前提で、親が覚悟を決めて「ホームスクーリング」に本気で取り組んでみることをおすすめします。

■ホームスクーリングで社会性は育つのか?

ホームスクーリングのデメリットとしてよく挙げられるのが「社会性」の発達です。家庭という限られた環境で、家族という限られた人と過ごすだけでは、子どもの「社会性」が十分に育たないのではないかという不安です。

社会性というのは、周りの人と良好な人間関係を構築できる力であり、社会生活を楽しく、快適にするために欠かせない資質です。この資質は集団社会の中でもまれることで育つと思っている方が多いのですが、実は、社会性の土台は「親子関係」によって構築されます。

子どもにとって初めて出会う他人である「親」との関係が良好になると、親以外の人ともいい関係が作れるようになります。反対に親子の信頼関係が希薄だと、他人や社会に対する不信感が払拭できず、子どもが警戒的、内向的、攻撃的な性格に育つことがあるので注意してください。

■「父親の関与が子どもの社会性を伸ばす」という研究結果

また、子どもの社会性の発達にとって重要なのが父親の関与です。子どもは父親との荒っぽい「遊び」を通して、どこまでの乱暴な行動が許されるのかを、父親の表情や言動から読み取る力を発達させると考えられています。

一人っ子が増えた今は、兄弟姉妹のぶつかり合いで社会性を身につけていくことが少なくなりましたから、子どもの遊び相手として父親の重要性が増しています。外出自粛で父親が家庭で過ごす時間が増えています。父親は「子どもと思い切り遊ぶチャンス」と思考を転換してみてください。

イギリスのニューキャッスル大学が行った研究によって、成長期に父親と多くの時間を過ごした子どもほど、知能指数が高く、社交性があり、地位の高いキャリアを達成することがわかっています。

カナダの心理学者ダニエル・パケット博士は、父親と活発な遊びを多く経験した子どもは、不慣れな環境においても果敢にチャレンジしていく傾向が強いという報告しています。父親が子どもと遊ぶことは、子どもの知能、社会性、環境適応力の発達にとっていいことばかりなのです。

■急にできたまとまった時間を生かす

私は20年間、アメリカで学習塾を経営しています。父親の海外転勤や海外移住に伴って、本人の意思とは無関係に異国に移り住んできた子どもの多くが、アメリカの学校にスムーズに適応できずに苦労します。居心地がよかった日本の生活から、ある日突然、言葉が通じず、文字が読めず、習慣や文化が異なるアメリカの学校に放り込まれるのですから、不安や恐怖で身がすくんでしまうのは当然です。

船津徹『世界標準の自己肯定感の育て方』(KADOKAWA)
船津徹『世界標準の自己肯定感の育て方』(KADOKAWA)

しかし一方で、環境の変化を物ともせず、アメリカの学校にスムーズに適応していく子どももいるのです。そのような子どもたちに共通するのが「自信」が大きいことです。

環境適応が早い子は、例外なく、スポーツ、音楽、ダンス、アートなどの「強み」を持っています。何か一つ人に負けない「強み」があると、子どもの自信は倍増するのです。その自信が原動力となって、困難、逆境、ストレスに立ち向かえる強い心が育つわけです。

自宅待機を利用して、子どもの得意分野を伸ばすこと、「強み」を育てることにフォーカスしてみてはいかがでしょうか。これほどまとまった時間が取れるチャンスは、子どもの人生の中でもなかなかありません。コロナ騒動が収まれば、学校の勉強、習い事、受験、就職と休む暇なく、やるべきことに追われる日々が待っているのです。

子どもの得意を見つけ、引き出し、伸ばすことをぜひ実践してみください。「強み」を身につけ、自信を大きくすることができれば、どんな環境の変化にも柔軟に適応できる子どもに育つことはもちろん、アフター・コロナの社会で頭一つ突き抜けることができるはずです。

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船津 徹(ふなつ・とおる)
TLC for Kids 代表
明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て、幼児教育の権威である七田眞氏に師事し英語教材の制作などを行う。その後独立し、米ハワイ州に移住。2001 年、ホノルルにTLC for Kids を設立。英語力、コミュニケーション力、論理的思考力など、世界で活躍できる人材を育てるための独自の教育プログラムを開発する。著書に、『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)、『世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方』(大和書房)ほか。

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(TLC for Kids 代表 船津 徹)

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