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コロナ相場の前でも後でも「月1万円の株式投資」は有効である

プレジデントオンライン / 2020年5月20日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/William_Potter

■感染症の時代でも「資産形成の王道」は変わらない

新型コロナウイルスの影響で世界の株式市場は大幅な下落に見舞われた。コロナ後の社会は既存の秩序や価値観が激変すると予想されていることから、今後、投資についてどう考えればよいのか不安を抱く人は多い。

一方、今回の株価下落をチャンスと捉える人もおり、ネット証券の新規口座開設は3月以降、急増しているという。コロナ後の資産形成はどうあるべきなのか考察する。

結論から先に言ってしまうと、いつの時代においても、資産形成の王道は長期の株式投資というのが基本原則であり、それはコロナ後の社会であっても変わらない。今回のコロナショックはリーマンショック以上のインパクトをもたらすと言われているが、近代以降の資本市場において大規模な感染爆発という出来事はすでに経験済みであり、予測不可能というほどの事態ではない。

今から約100年前の1918年から20年にかけて、今回のウイルス感染に近い「スペイン風邪」が大流行し、世界中で多くの犠牲者を出した。感染の完全終息までには3年を要しており、学校の休校やマスクの着用など、今と同じような対策が各国で実施された。

ではスペイン風邪がもたらした経済への悪影響が人類にとって致命的だったのかというとそうではない。第一次世界大戦と時期が重なっていたこともあり、実は圧倒的に戦争による影響の方が大きかった。

スペイン風邪の流行が大戦を終わらせるひとつのきっかけになったのは間違いない。だが、世界経済は一時的に戦後不況に陥ったものの、その後は復興需要などもあり、しばらくの間、好景気が続いた。感染症の流行というのは、世の中の流れをかえるきっかけにはなるが、それ自体が経済に壊滅的な影響を与えるわけではないのだ。

■コロナで株価下落の今、投資をスタートする意味

歴史を振り返ると、株式市場はバブル相場と崩壊、感染症や地震などの自然災害、戦争といった不測の事態を何度も経験している。それでも、平均して年6%程度の利回りを確保している。

コロナ後、しばらくの間は経済が混乱するだろうが、最終的には再び成長モードに戻っていく可能性が高い。この世の中から企業活動というものが消滅しない限り、今後も株式投資は有力な投資手段のひとつであり続けるだろう。

もし長期的な視点で株式投資を考えているのであれば、投資をスタートするタイミングが、コロナで株価が下落した今であっても、その前であっても大きな違いはない。投資の年月が長くなればなるほど、利回りは歴史的な平均値である6%に近づいていく。

今回のコロナショックをきっかけに株式投資に興味を持ったのであれば、それはそれで意味のあることだし、以前から投資を継続していてコロナによって含み損を抱えたという人も、あまり悲観する必要はない。

長期的な継続を前提にするなら、ここ数年のパフォーマンスの違いはやがて誤差の範囲に収束していくはずだ。

■コロナ後の社会における優良銘柄、危ない銘柄

長期の株式投資では、国際的な優良銘柄に分散投資するのが基本戦略となる。優良銘柄は配当も充実しているので、キャピタルゲイン(株価の上昇によって得られる利益)だけでなく、インカムゲイン(配当などの収益)も相当な金額となる。ただ、時代によって優良企業はある程度、入れ替わるので、必要に応じて投資する銘柄を変えていく工夫は必要である。

特にコロナ後の社会においては、社会のIT化がさらに進むと考えられるので、同じ優良銘柄の中でも、IT化が追い風となる企業(マイクロソフトやインテル、ネットフリックスなど)を重視した方がよい。一方、世界的なサプライチェーンの見直しが進む可能性が高いので、自動車のような業種には注意が必要となる。

もし元手となる投資資金が小さい場合や、ポートフォリオの選定作業が面倒な人は、日経平均やダウ平均といったインデックスに連動するETF(上場投資信託)に毎月一定額積み立てていく手法をお勧めする。

インデックス投資の場合、市場平均値以上のパフォーマンスは得られないが、無用なリスクを取る必要がなく、何より作業が簡便なので、忙しい人にはうってつけである。毎月1万円からであっても、30年投資を続け、従来と同じリターンが確保できると仮定すれば、最終的な資産の予想額は1000万円を超える。

非常に残念なことだが、日本は人口減少が進むことなどから、相対的に高い成長は期待できない。個別企業でポートフォリオを構築する場合でも、インデックスに絞る場合でも、日本市場だけを対象にするのは避けた方がよい。可能な限りリスクは分散し、グローバルな経済成長の恩恵を受けられる銘柄に投資すべきである。

■短期的な利ざや狙いの投資でやってはいけないこと

こうした長期投資ではなく、今回の株価下落を利用して短期的に利益を得ようという人もいるかもしれない。確かに株価が大幅に下落した後は、急上昇するケースが多く、短期間で大きな利益を得られる可能性がある。

投資資金に余裕があり、一定のリスクを許容できる人なら、短期的な利ざやを狙う投資に取り組んでもよいだろう。だが、経験が浅い人の場合、こうした短期投資は思いのほか大きな損失を出すことがあるので要注意だ。

経験が浅い投資家がよく陥りがちなのが、時間を考慮せず、株価だけを見て投資タイミングを決めてしまうことである。今回のコロナショックで日経平均は2万4000円前後から1万6000円まで急落し、その後、2万円前後まで回復している。市場が安定してきたので、さらに値上がりするだろうと判断するのは早計である。

相場というものは、値幅よりも時間に左右される割合の方が高い。つまり下落相場や上昇相場が一段落するまでには、一定以上の時間がかかる。仮に急激な下落で株価が4分の1になっても、時間が経過していない状況では、さらに下落する可能性も否定できないのだ。株価だけを見て投資を決断するのはやめた方がよい。

短期になればなるほど、株価の動きはランダムに近くなり、偶然性に左右される割合が高まってくる。短期の利鞘狙いの投資は、あくまで余裕資金の範囲内でというのが原理原則である。

■歴史的な原油安は「買い」なのか

今回のコロナショックでは株式以上に原油が売り込まれており、今後の急回復を期待する声もある。原油価格は一時、1バレル=10ドル近くまで下落したが、これは歴史的な水準といってよい。

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だが、いくらコロナショックで不景気になるとはいえ、石油の需要が消滅するわけではない。普通に考えれば、短期的に値を戻しそうだが、やはりここにも落とし穴があるので注意が必要だ。

今回、原油が過剰に売られたのは、コロナショックによる市場の動揺だけが原因ではない。米国でシェールガスの開発が進み、全世界的に原油が過剰になっていることに加え、社会の省エネ化や再生可能エネルギーの普及によって、需要面でも従来のような伸びは期待できないと見る関係者が多かった。

つまりコロナショックがなくても、マクロ的な要因で石油は余剰気味になる可能性が高かった。こうしたところにコロナショックが重なったことで、過剰な売りが殺到し、原油価格が暴落する結果となった。

この水準の価格が半永久的に続くとは思えないが、従来と同水準まで価格を戻す可能性も低い。そうなると、暴落からのリバウンドについても限定的となり、取ったリスクに見合うリターンが得られないことも十分にあり得る。

個人的には無理に短期的な利益は追わず、長期投資を続けた方がよいと考える。コロナ後の社会の変化を見据え、投資先企業の選定など長期的な戦略を練るというのが今の時期にふさわしい行動だろう。

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加谷 珪一(かや・けいいち)
経済評論家
1969年宮城県生まれ。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村証券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。その後独立。中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行うほか、億単位の資産を運用する個人投資家でもある。

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(経済評論家 加谷 珪一)

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