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「飲酒・やけ食い・買い物」でのストレス解消は逆効果だ

プレジデントオンライン / 2020年5月25日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tommaso79

ストレス解消になるからといって、何をやってもいいわけではない。アンガーマネジメントに詳しい戸田久実氏は、「スポーツなど健康的な方法で発散するのがいい。飲酒、やけ食い、買い物は怒りを自分に向けている行為。自傷行為と同じで、やめたほうがいい」という――。

※本稿は、戸田久実『アンガーマネジメント』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。

■真面目な人はメンタルヘルス不調になりやすい

イライラを感じると、自分に対して怒りをぶつける人もいます。どういった場合にそれが起こるのでしょうか。

たとえば、結果を出せなかった自分が情けなくなったときに、

「なんでわたしはいつもこうなんだろう」
「なんでこんなことができなかったんだろう」
「なんでこれをやろうと決めたのに、いつもちゃんと続けられないのだろう」

というように、自分に対してイライラするタイプです。

これを続けて、自分を責め続け、メンタルヘルス不調になってしまう人もいます。

じつは、これは真面目な人に多いのです。いつも自分に非があると思い、

「なんでこういうときにちゃんと言えないんだろう」
「なんでできないんだろう」

と考えすぎてしまうのです。

あるいは、上司の期待や親の期待に沿えなかったときに、

「なぜわたしはいつも、結果を出せないんだろう。本当に情けない。どうしてなんだろう……」

と、自分に対してのイライラを溜め込んでしまう人もいます。

■イライラして前髪を抜いてしまう女性もいる

このようなケースでは、ひどくなると自傷行為をしてしまうこともあります。

わたしが相談を受けたなかに、30代前半の女性で、イライラし始めると無意識に前髪を抜いてしまうという人がいました。これも自傷行為のひとつなのですが、本人は無意識に行っているので自分ではとめられず、毛根が禿げてしまっていたのです。

症状が悪化すると、自傷行為を自分でやめられない人もいます。その女性は、職場の上司の理解があったので、専門医に通院して、数カ月後に癖がなくなりました。

髪が長かったので、髪型でごまかしていましたが、毛根がなくなると生えてこないので、一生残ってしまいます。症状が悪化していく前に、怒りをうまく扱えるようにしたいものです。

■やけ酒も自傷行為である

身体に悪いと思っていても、やけ酒を繰り返す人もいます。

「こんなにお酒を飲んだら身体を壊す」とどこかでわかっているのに、自暴自棄になって過度に飲酒をしてしまうのです。このように自暴自棄になることも、怒りを自分に向けている行為のひとつ。つまり、自傷行為に該当します。

こうして自分の心や身体を傷つけてしまう人もいるのです。

よく「気分転換やストレス解消に何をしていますか?」と聞くと、飲酒やタバコが出てきます。でもじつは、イライラするからタバコを吸うという行為は、依存性が高まりますし、本数も増えてしまうので要注意です。

これは、ほかのことにも当てはまります。飲酒・やけ食い・買い物依存症なども同じです。イライラするたびに何かをしてしまうのなら、依存性が高い証拠です。

やけ食いの場合、イライラしたら食べるということを繰り返していると、無意識に習慣になってしまいます。そして刺激が足りなくなり、どんどん量が増えていくのです。このような場合、味わうわけではなく、ただ食べることが目的になっています。

結局、ストレス発散にもならないばかりか、どんどん症状が重くなるだけです。

ほかにも、ストレス発散のためにギャンブルをする、ネットサーフィンをする、TVゲームをする、といったことも依存性を高める行為です。これらに頼り続けていると、どんどん不健康になってしまうので気をつけましょう。

■自覚がない自分への攻撃にも注意

怒りを自分に向けて、自ら心と身体を痛めるような行為をすることについて、なかなかピンとこないという人もいます。

以前、ある企業のアンガーマネジメント研修にて、40代の管理職の女性から質問を受けました。

「他人に暴言を吐いたり、暴力的な行為をしたり、物に八つ当たりをするというのはイメージがわくのですが、怒りが自分に向かうというのがよくわかりません」

と言うのです。ところが、この彼女こそが、自分の身体を痛めている人でした。

昼食を一緒にとったとき、職場の体制が古くて上司も理不尽なことばかり言ってくる。自分の部下たちは一生懸命仕事をしているのに、部下たちに申し訳ないと憤りを覚える日々。ここ数カ月は頭痛がするので、毎日頭痛薬を飲んでいる。強い頭痛薬を毎日服用するのはよくないとわかっていても、やめられない。

そんな状況だというのです。

それこそ、まさに自分に向けた攻撃的な行為なのだとお伝えしたら、彼女は、ハッとした顔をしていました。

組織や上司が変わらないことへの憤り。管理職として部下たちに何もできない自分自身の情けなさや申し訳なさからくる怒り。それらを、溜め込むことで、頭痛という反応が出て、身体には悪いと思っていても、薬を飲み続ける。

これは、本人は自覚していなくても、無視できない自虐的行為です。

このように無意識に自分を傷つけてしまう人も増えてきています。

あなたや周りの方々にも、心当たりがないか、振り返ってみてください。

■ストレスは発展的に解消しよう

怒りの気持ちに振り回されないためには、健康的なかたちでストレスを発散することです。なかでもおすすめなのが、スポーツです。スポーツのなかでも、とくに有酸素運動がいいですね。

ボクシング、ボクササイズはかなり過激な運動なので、アドレナリンが出て、かえって興奮する可能性があります。ですから、ストレッチやヨガ、ウォーキング、ジョギング、水泳などがいいでしょう。有酸素運動をすると、セロトニンという気分を高揚させるホルモンが出るので、気持ちも落ちつきやすくなります。

ほかには、寝不足が原因でイライラするのであれば、ゆっくりと睡眠をとること。自分の気持ちがラクになること、楽しいと思えることをするといいでしょう。

女性なら、ちょっと疲れてイライラするときには、マッサージに行ったり、エステに行ったりする。ゆっくり温泉に行くことが難しければ、自宅のお風呂で香りのよい入浴剤を使ってゆっくり入る時間をとるのも、リラックスできますよね。

ほかには、好きな音楽を聞いたり、好きな本を読む時間をとってみる。

もし車の運転が好きならば、気分転換も兼ねて車で移動したり、ドライブするのもいいでしょう。

自分なりのお気に入りのメニューを持っておけるといいですよね。

■30分、2時間、1日単位でストレス解消メニューを持っておく

忙しさに追われて、ストレスを気持ちよく解消することを後回しにしてしまう人が多いように感じますが、定期的に発散できたほうが、仕事のパフォーマンスも、幸福度も上がります。

ですから、日頃から、あえていろいろなメニューを持っておいてほしいのです。

たとえば30分でできるメニュー、2時間くらいかけてできるメニュー、1日空いたらできるメニューなど。

わたしならゴルフや温泉に出かけます。忙しくてイライラしがちになってしまいそうな期間があれば、無理にでも休みをフィックス(確定)しておくのもいいでしょう。とっさには思いつかないものなので、あらかじめ健康的なストレス解消法を持っておくといいですね。

■自分にとって安心・安全な場所をつくる

イライラを抑えるには、「心理的安全性」を保つこと、つまり、安心できる居場所を持っておくことが必要です。

戸田久実『アンガーマネジメント』(日本経済新聞出版)
戸田久実『アンガーマネジメント』(日本経済新聞出版)

ありのままの自分でいられて、そんな自分を受け入れてくれる人がいる。そう思える場所があるということは、心の支えにも、原動力にもなり、ゆとりまで生まれます。

ストレスを感じることや、イライラすることが多少あったとしても、居場所があることで救われることもあるでしょう。

職場だけではなく、家族や親友、趣味のサークル、学びの集まり、町内会などの何らかの共同体(コミュニティ)に複数属している人が少なくないはずです。そのなかで、「ここはわたしの居場所だ」と感じられる共同体はあるでしょうか?

振り返ってみてください。

もし安心できるコミュニティを持っていないなら、探してみるのもいいかもしれません。思った以上に心の安定を保てるはずですよ。

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戸田 久実(とだ・くみ)
アドット・コミュニケーション代表
日本アンガーマネジメント協会理事。立教大学文学部卒業後、服部セイコー(現 セイコーホールディングス株式会社)にて営業、その後音楽業界企業にて社長秘書を経て2008年にアドット・コミュニケーションを設立。研修講師として民間企業、官公庁の研修・講演の講師の仕事を歴任する。著書に『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』など。

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(アドット・コミュニケーション代表 戸田 久実)

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