なぜバフェット氏は家族も大賛成した「ティファニー株」を買わなかったか
プレジデントオンライン / 2020年5月22日 15時15分
■年利20%の利益を上げる凄腕メアリー
世界的な投資の賢人からの教えをお伝えするシリーズ。最終回の今回は、メアリー・バフェット氏が私達に教えてくれたことだ。
メアリー氏は1981年から1993年までの12年間、あの世界一の株式投資家ウォーレン・バフェット氏の長男ピーター・バフェット氏と結婚をしており、その間、ウォーレン・バフェット氏から株式投資について指南を受けた。彼女自身の株式投資のリターンは、平均して年利20%以上で、メアリー氏が書いた投資本はとても人気がある。
今回の話は、去年9月に私が校長をするオンライン金融スクール「GFS」でメアリー氏が講義をしてくれた内容の一部だ。コロナ相場で皆さんが投資に関心を持っているいまこそ、普遍的な投資の話をお伝えしたい。コロナ相場が収束しても皆さんが投資で利益を出し続けることが私の願いだからだ。
まずメアリー氏が日本の投資家の皆さんへメッセージを書いてくれたので紹介しよう。
とにかく投資においてはトラブルには巻き込まれないようによく勉強をして、トラブルを事前に回避することが大事だ。コロナ相場で安易に投資をスタートしてしまって、トラブルに巻き込まれないようにして欲しい。
■「株式投資では企業を愛してはいけない」
そして、そんなコロナ相場の今だからこそ知ってほしい、こんな言葉を紹介しよう。
これはメアリー氏らが参加するカリフォルニアのラグナビーチでの家族のクリスマス会でのウォーレン・バフェット氏の一言だ。
クリスマス会でウォーレン・バフェット氏は、家族のみんなに「ティファニーの株を買おうかどうか考えているんだけど……」と言ったそうだ。すると女性陣は「ティファニー大好き!」と言ったそうだ。それに対しウォーレン・バフェット氏が言った言葉が上述のものだ(結局ウォーレン・バフェット氏はティファニー株を買わなかった)。
これは皆さんも頭ではなんとなく分かっているかもしれないが、実際はかなり難しい。今、コロナ相場で企業の株式を買う時、そこに感情は混じっていないだろうか? よく確認をして欲しい。
■株高の時には、企業の勉強に充てよう
コロナ相場の今、このような話も参考になるだろう。
これは1960年代後半の株式がとても割高だったタイミングの時の話だ。ウォーレン・バフェット氏は、株式をほぼ全て売却し現金で保有し、4年間、1銘柄も購入せず、銘柄分析に費やしていたという。その後、1972~73年にかけて相場が暴落した時にチェックしておいた企業リストを元に割安になった企業の株を買っていったのだ。
今回のコロナ相場になる前、去年末の段階でウォーレン・バフェット氏は、大量の現金を保有しており、新聞などのメディアのインビューでは「良い投資先が見つからない」と語っていた。割高で良い投資先が見つからない時は銘柄のチェックに専念することがおすすめだ。
ウォーレン・バフェット氏の「人生で投資のチャンスは20回しかないと考えるべきだ」という言葉も有名である。それぐらい投資先は厳選すべきということだ。皆さんはコロナ相場で今、安い企業を見つけることが出来るかもしれない。しかし安易に投資するのではなく、本当にその銘柄は20回の1回にふさわしいのか、よく考えてみると良いだろう。
メアリー氏も去年9月の時点で私達にこのように語っていた。
このあと、コロナ相場になりバーゲンセールとなったわけだ。去年の段階でメアリー氏は携帯電話にお気に入りの株式を記録していた。実際にそのうちいくつかを私達に示してくれた。例えばディズニーなどだ。このような投資スタイルをぜひこれから投資を始める人も、これまで投資をしてきた人も参考にして欲しい。数年に一度、下落相場は訪れるのだ。コロナが収束したとしても、次にまた下落相場は必ず来るだろう。
■割安企業の見つけ方は地道な勉強と肌感覚
メアリー氏が勧める勉強法は、「読む」ことだ。企業の年次報告書、企業を分析しているレポートなどを大量に読む。実際に私達の目の前では彼女は企業のレポートの束を持っていた。バフェット氏は1日に500ページは読むそうで、部下のマネージャーにも1日500ページ、何かを読むように伝えている。愚直な努力が必要なのだ。
そのうえで、肌感覚も大切にしたほうがいいとメアリー氏は言う。2016年にAppleの株を買った時のキッカケを教えてくれた。
この時のApple株は100ドル前後だった。今は300ドル前後となっている。普段の生活の中で多くの人が無くてはならないと考えているモノやサービスは何だろうか。それは新聞を見ていて分かるものではない。銀行や証券会社の営業マンの話を聞いて分かるものでもない。普段の生活の中で気づくものなのだ。
そして、気になる企業があればPERを見てみよう。PERが高すぎないかどうかだ。メアリー氏も最近のIT企業については、PERが高すぎることについては警戒感を示しており、それらの株を買うことはおすすめしていない。AppleはPERが20倍以下の時に取得しており、フェイスブック株については2018年の不祥事を受けてPERが25倍を下回った時に買ったと話している。
■売上に惑わされるな
近年企業は、あえて利益を出さないスタイルで経営をするところもある。売上を伸ばしていくことを最優先にしている企業群だ。
これに対してメアリー氏はこんな格言を紹介してくれた。
保守的な投資をするためには、あくまでも利益ベースで見た方が失敗は少ないだろう、ということだ。
以上、これまで3回にわたって、世界の投資の賢人の話を紹介してきた。ジム・ロジャーズ氏、ジェレミー・シーゲル氏、メアリー・バフェット氏の3人だ。記事で紹介したのはGFSの講義のごく一部だが、皆さんの投資判断の参考になっていれば幸いだ。
コロナ相場では初心者ほど投資に熱をあげているように感じている。このため今回はかなり保守的な内容となった。流行り物への投資はどこかで躓く。ぜひ長期で利益がでる堅実な投資を実現してもらいたい。
コロナで経済がダメージを受けた時こそ、割安な優良企業の株を持ち、経済の循環を良くしていきたい。株式投資というものは、世界の成長=皆さんの資産の成長である。皆さんと私達で共に正しい投資を学んで実行し、投資で世界経済を良くしていきたい。
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Global Financial School校長。日本FP協会会員、日本FP学会会員、サイバー大学客員教員。東京証券取引ニッポン経済応援プロジェクトの専門家集団 「東証+YOU応援団」の1人として全国の投資家育成に尽力。著書に『はじめての資産運用(日経文庫Personal)』[武田米生氏との共著](日本経済新聞社)など。
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(Global Financial School校長 市川 雄一郎)
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