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驚愕の結果…アベノマスク、中華マスク、お洒落マスクの効果を測定してみた

プレジデントオンライン / 2020年5月26日 11時15分

マスクの種類によって機能は大きく異なる

東京や大阪の緊急事態宣言が解除され、新型コロナウイルスによる自粛生活から解き放たれた人々が、一気に街へ繰り出すだろう。「3密」の日常が戻ると、懸念されるのは、新型コロナウイルスの感染拡大が再び起こる可能性だ。

そこで、改めて見直してほしいのが「マスク」である。なぜなら、大半の人が本来の機能を考えずにマスクを選び、そして装着方法も間違っているからだ。実はマスク次第で、新型コロナから命を守れるか、大きく違ってくる。

可視化映像で分かるマスクの現実、マスクの種類によって大きく違う機能について、専門家とともに検証してみた。

■アベノマスクにどれほど効果があるのか

新型コロナウイルス対策として、今や外出時のマスク装着は、常識となっているが、注意してみると、おのおのが多種多様のマスクを使用している。

最近、若い世代に人気なのが「ウレタンマスク」。スポンジ状の生地で、顔にフィットする。それでいて、呼吸は苦しくない。ファッション性も高いし、繰り返し洗って使える点も経済的だ。ただし、肝心のマスクとしての機能については、疑問符がつく。

掲載した画像は、「カトウ光研」が開発した、人間の目には見えない流体現象を可視化する技術で撮影されたものだ。

ウレタン素材のマスク(カトウ光研株式会社に特別許可を得て掲載しています)
画像提供=カトウ光研
ウレタン素材のマスク - 画像提供=カトウ光研
ガーゼ素材のマスク(カトウ光研株式会社に特別許可を得て掲載しています)
画像提供=カトウ光研
ガーゼ素材のマスク - 画像提供=カトウ光研
不織布素材のマスク(カトウ光研株式会社に特別許可を得て掲載しています)
画像提供=カトウ光研
不織布素材のマスク - 画像提供=カトウ光研

人工的に「くしゃみ」を再現して、マスクの種類別の効果を比較すると、ウレタンマスクの場合、大量の飛沫が前方に飛び出していることが分かる。

全世帯に2枚配ると安倍首相が宣言しながら、大量の不良品が見つかり、配布が遅れている「アベノマスク」。その大半が、昔懐かしい「ガーゼ製」だ。可視化画像で見ると、ウレタンマスクより飛沫の漏れは少ないが、ブロックしているとは言い難い量が確認できる。

医療現場でも使用されている、使い捨てのサージカルマスク。「不織布(ふしょくふ)」と呼ばれる、ポリプロピレンなどのプラスチック系素材で、幾層にも重なったフィルターになっている。そのため、マスク前方に飛沫はほとんど出ていない。ただし、マスク上下左右の隙間からは、呼気の漏れが出ていた。

■マスクは2つの条件がそろわないと、本来の機能を果たせず

『マスクの品格』(幻冬舎)の著者である、聖路加国際大学・大西一成准教授。マスクに関する知識に誤解が多いことから、啓発活動をしている。

「マスクは2つの条件がそろわないと、本来の機能を果たすことができません。それは『ウイルスを通さないフィルターの性能』と『顔のフィット』です」

パッケージに「細菌・ウイルス99%カット」と表示されているマスクがあるが、これはフィルターの性能に限定したものだ。実際に装着した状態の効果は、マスクの外側と内側の粒子数を測定した「漏れ率」として評価する。

大西准教授によると、一般の人がどんなにフィルターの性能が高いマスクを付けても「漏れ率:100%」になることが多い。原因は顔にフィットさせていないからだ。

■マスク種類別の性能差とは

大西准教授に、マスクの種類別「漏れ率」を測定してもらうことにした。

大西准教授による「マスク漏れ率」測定の様子。
大西准教授による「マスク漏れ率」測定の様子。(画像提供=大西准教授)

まず、アベノマスク(ガーゼ)を、一般的な装着法で測定してみると、「100%」という値がでた。そこで、マスクの周囲を押さえて測定すると「89.58%」。少しだけ改善した。

ベトナム製の特殊な形状をした、アベノマスクでは、一般的な装着法でもマスク周囲を押さえても「100%」だった。フィルター効果はゼロに等しい。

ファッショナブルなウレタンマスクは、元々顔にぴったりフィットするデザインだが、漏れ率「100%」。これも、フィルター効果はほぼ期待できない(※製品によって、漏れ率は異なる可能性がある)。

使い捨ての不織布マスクは、PFEという遮断率試験を通った日本メーカーの製品で測定したところ、一般的な装着で「100%」、隙間がないようにつけ方を工夫すると  「51.58%」の値が出た。

ただし同じ不織布マスクでも、中国ブランドで50枚入り約2000円の製品は、隙間に注意して装着しても「81.40%」にとどまる結果となった。

外見は同じように見えても、不織布の性能差が大きいことが分かる。

飛沫感染や空気感染のリスクが高い医療現場などで使用されるのは、高規格の防じんマスクだ。大西准教授の顔にフィットした製品で測定すると——。漏れ率は「0.89%」だった。大西准教授によると、漏れ率の数値はマスクを装着する人の骨格の違いによって異なる。ただし、多くの人で今回と同じ傾向を示すという。

■マスクをめぐる大きな誤解

今、あなたがマスクを装着する理由はなんだろう?

「自分が新型コロナに感染している可能性があるので、他者に移さないため」と、多くの人が答えるのではないだろうか。メディアや医療者が、このようなメッセージを発信しているから当然かもしれない。

しかし、ご覧いただいた通り、人気のウレタンマスクや、アベノマスクこと布マスクでは、他者にウイルスを移さないという目的は、実現できていない可能性が高い。それは、おしゃれな手作り布マスクも同様なのだ。

「安倍首相や閣僚、そして小池知事のマスクの素材や大きさ、着け方とかを見て、マスクのことを知らなくて残念だなと思っていました。お手本になるべき方々が、そういうマスクの扱い方をしてテレビに出ると、国民をミスリードしてしまいますから」(大西准教授)

新型コロナの感染拡大が起きてから、一部の閣僚や知事たちは、まるでファッションを競うように「布マスク」を装着して会見に登場していた。これが、布マスク・ブームを引き起こした一因になっている。

だが、どんなマスクでも、装着すれば身が守られるわけではないし、他者への感染を防ぐことができるとは言えない。

■マスクには4つの重要機能がある

もう一つ、誤解が蔓延しているのが、「新型コロナウイルスの感染は、マスクで予防できない」という考えだ。

その原因を生み出したのは、一部の医師が論文を無批判に紹介したためだと、大西准教授は考えている。

「エビデンスレベルの高いとされる論文に、高規格のマスクを装着してもインフルエンザに感染したという結果を受けてマスクに効果はないという結論が述べられていました。しかしこれらの論文では、被験者が自宅でマスクを外した時の感染リスクを考慮していない点や正しくマスクを付けられているかを検証していないものもあります。高規格マスクでも正しく着用ができていないと、隙間から粒子が相当量入り込んでしまうのが常です」

大西准教授は、マスクには、次の4つの重要な機能があるという。

1.外の粒子(ウイルスなど)を取り込まないフィルター効果
2.感染している人のウイルスを拡散しない
3.喉の保湿と粘膜の保護(※ウイルスに感染しづらくなる)
4.ウイルスで汚染された手で顔を触らない

「マスクに意味がない、意味がある、という二元論で考えてしまう傾向があります。例えば、漏れ率のデータを見て、それならマスクに意味はないと結論づける人がいますが、4つの機能のうち、2つでも効果があるなら、それだけリスクを減らすことができる。性能が高いマスクの装着がベストですが、もし無いなら布マスクでも付けない選択肢はないと思います」(大西准教授)

■ベトナム製アベノマスク、つけたら耳が変色…

新型コロナウイルスの感染を予防するという目的は、機能の「1」になる。それを確実にするには防じんマスクになるが、一般には入手困難な製品だ。それなら、不織布の「PFE」「BFE」などの遮断率試験をクリアした、サージカルマスクを選び、顔にフィットさせて装着する。

今年3月中旬から4月までの、どのようなマスクも入手が困難な時期であれば、アベノマスクや手作り布マスクも意味があった。上記の4つのマスク機能のうち「3」と「4」としては、一定の効果があるからだ。しかし、不織布のマスクが流通している現在、あえて布マスクを選択する意義はないだろう。

アベノマスクの中には、耳掛け部分が全く伸縮しないベトナム製マスクも存在している。この事実を教えてくれた介護事業者は、ベトナムマスクを装着してみせてくれた。すると、無理に耳にかけたせいで、先端がじんわりと赤黒く変色していく。私は急いで写真を撮って、ベトナムマスクを外してもらった。

誤解を避けるために付け加えると、ベトナムでは排気ガス対策として布マスクが普及している。現地の事情に詳しい人に聞くと、耳掛け部分がゴム製のマスクもあると言う。だから、ベトナム製だから問題なのではなくて、新型コロナ対策としてのマスクには、ミスチョイスだったということなのだ。

■マスクは命を奪うアイテムにもなりえる

厚生労働省は、当初このマスクを輸入した会社名を明かさなかった。さらに今月中旬になって、同じ会社に約30億円の追加契約までしていた。不織布マスクが簡単に入手できるのに、フィルター効果がほとんどない布マスクの輸入を続けるのは、国民の命を守るということが理由ではないようだ。

大西准教授はこう警鐘を鳴らす。

「マスクは命を守るアイテムにもなるし、奪うアイテムにもなり得ます。例えば、使用済みのマスクの表面を安易に触ったり、マスクの性能を過信してリスクの高い場所に行ったりするべきではありません。これからの季節は、マスクの装着が熱中症のリスクを高めます。こまめな水分・塩分の補給や、クーラーで温度の管理などに注意して下さい」

まだ、新型コロナの終息が見通せない現段階では、マスクを正しく選び、装着して、可能な限り、感染リスクを減らすことを心がけたい。

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岩澤 倫彦(いわさわ・みちひこ)
ジャーナリスト、ドキュメンタリー作家
フジテレビの報道番組で「血液製剤のC型肝炎ウイルス混入」スクープで新聞協会賞、米・ピーボディ賞。著書に『薬害C型肝炎 女たちの闘い』『バリウム検査は危ない』『やってはいけない歯科治療』など。

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(ジャーナリスト、ドキュメンタリー作家 岩澤 倫彦)

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