1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「やっとV字回復」したのにコロナで苦しむラウンドワンの悔しさ

プレジデントオンライン / 2020年5月27日 15時15分

ラウンドワン 池袋店=2019年5月20日 - 写真=アフロ

アミューズメント施設「ラウンドワン」が苦しんでいる。新型コロナウイルス感染拡大の影響で休業を余儀なくされ、4月の既存店売上高は前年比96.1%減となった。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は「ラウンドワンは10年近く業績低迷に苦しみ、ようやくV字回復を果たしたところだった。米国進出も軌道に乗ってきたところだっただけに、痛手は深い」と分析する――。

■3カ月連続国内既存店売上高プラスから一転

ラウンドワンが苦しんでいる。4月の国内既存店の売上高は前年同月比96.1%減と大きく落ち込んだ。3月は24.1%減だった。2月(5.3%増)と1月(0.9%増)はプラスだったが、一転して大幅マイナスが続いている。

ラウンドワンはボウリング、ゲームセンター、カラオケ、スポーツコーナーの4つのサービスを軸としたアミューズメント施設を展開する。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、店舗を臨時休業としたことが響いた。北海道の店舗が3月4日から10日間臨時休業したほか、4月2日から東京と大阪の全店舗、4月4日からは国内全103店舗が臨時休業に。4月は大半の日が全店休業となり、売り上げが大きく落ち込んだ。5月15日からは一部店舗の営業を順次再開し、6月1日から全店の営業再開を目指しているが、5月も厳しい内容となりそうだ。

■臨時休業まで国内の業績は健闘していた

5月11日に発表された2020年3月期連結決算は、売上高が前期比3.4%増の1047億円、営業利益は22.4%減の88億円となっている。純利益は33.0%減の47億円だった。成長市場と位置づける米国での店舗数が41店と前期末から9店増え、米国での売上高は205億円と25.7%増えた。この結果、全社の売上高は伸びたが、新型コロナにより国内と米国の店舗を臨時休業としたことが利益を押し下げた。

新型コロナで臨時休業するまで、国内の業績は健闘していた。昨年10月の消費増税や台風19号などの影響で19年10~12月の既存店売上高は前年を下回ったものの、19年4~9月は前年同月比5.0%増と大きく伸び、今年1月と2月も先述の通りプラスだった。19年4~12月期の業績が出た直後の段階では、20年3月期通期の既存店売上高は2.1%増を計画していた。

しかし、新型コロナの影響で今年3月は大幅マイナスとなり、通期は0.1%減のマイナス成長に陥った。もし新型コロナがなければ計画以上の伸び率で着地しただろう。

■既存店売上高9期中8期マイナスからの回復

ラウンドワンは少し前まで苦戦していた。08年3月期から16年3月期までの9期で既存店売上高が前期を上回ったのはわずか1期だけだった。ところが、17年3月期以降は体験型のコト消費の拡大や、人手不足に伴うアルバイトの時給上昇により、ラウンドワンの主要ターゲットである若者の所得が向上。その結果、既存店売上高は17年3月期が1.9%増、18年3月期が5.3%増、19年3月期が0.9%増と、3期連続で前年を上回っていた。

この間、さまざまな施策も打っていた。ボウリングでは、ボウリング教室を継続的に開催してファン層の拡大に努めてきた。ゲームセンターでは最新のゲーム機や大型メダルゲームの導入や、人気機種のバージョンアップを積極的に実施。カラオケでは人気音楽グループとコラボした部屋を用意し、コラボグッズを提供したほか、大型モニターの導入を進めた。スポーツコーナーの「スポッチャ」ではボード状の電動立ち乗り二輪車「バランススクーター」やトランポリンの一種「エアポリン」を導入している。

20年3月期も、19年1月から順次実施した「値上げ」が奏功した。1月からゲームセンターのメダルの貸し出し価格とスポッチャの入場料を、4月からボウリングとカラオケの料金を順次値上げ。これらの値上げが増収に寄与し、既存店売上高は19年1~3月が3.3%増、4~6月が8.1%増、7~9月が2.2%増とそれぞれ伸びている。

■オンラインで遊べる新サービスを導入

サービスの付加価値を高めたことも大きい。ボウリングとカラオケにおいて、スクリーンとマイクを通じてほかの場所にいる人と一緒に遊べる「ラウンドワンライブ」を19年1月から順次導入した。全国のラウンドワン店舗をつなぎ、離れた場所にいる人とボウリングのスコアを競ったりプロボウラーと対戦したりできるほか、離れた場所にいる人とカラオケで一緒に歌うこともできる。このように付加価値を高めて値上げすることで、売り上げ増に成功した。

こうしてラウンドワンは国内でV字回復を果たしたところだったが、出店余地は限られており、国内だけではいずれ行き詰まる。店舗数は2010年ごろまでは増加傾向にあったが、それ以降は110店程度の横ばいが続き、ここ数年は若干減ってきている。20年3月末時点の店舗数は103店だ。飽和に達していると言っていいだろう。

このため新たな成長機会をとらえるために10年に米国に進出した。店舗数を徐々に増やしていき、20年3月末時点では41店を展開するまでになった。日本では郊外ロードサイドへの出店が多いが、米国ではショッピングモールに的を絞って出店している。撤退した小売店の跡地に出店するケースが多い。ショッピングモールの来店客をターゲットに、買い物のついでに立ち寄ってもらうことを狙っている。ここ2年は出店ペースを速めて年10カ所程度を出店しており、今後もショッピングモールを中心に年10カ所以上を出店し、100店体制を目指す考えを示していた。

■業績好調の米国でも全店舗臨時休業

米国事業の業績は好調に推移していた。売上高は店舗数の増加とともに増えていき、利益は16年3月期から大きく高まっていった。19年3月期には、15億円もの経常利益をたたき出している。利益率も年々高まっており、19年3月期の売上高経常利益率は9.4%にもなる。国内(売上高849億円、経常利益96億円、経常利益率11.4%)にはまだまだ及ばないものの、第2の市場の業績としては申し分ないだろう。

だが、ちょうど波に乗り出したところ、新型コロナが世界中で猛威をふるい、米国市場も直撃した。ラウンドワンは全41店舗の臨時休業を余儀なくされている。これが影響し、20年3月期の米国事業の業績は厳しいものとなった。売上高は先述したとおり前期比25.7%増の205億円と大きく伸びたが、期初計画(234億円)を大きく下回っている。経常利益は24億円を計画していたが、3300万円にとどまった。今後、営業を順次再開させていく考えだが、再び成長軌道に乗せられるかは不透明だ。

日米ともに厳しい状況に置かれたラウンドワン。はたしてV字回復ならぬW字回復をはたすことができるだろうか。

----------

佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。

----------

(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください