金なし・無名校でも…なんで私が東大に? 合格勉強法を大公開

プレジデントオンライン / 2020年6月21日 11時15分

PIXTA=写真

東大生の家庭の世帯年収は6割超が950万円以上だ。しかし、同300万円ほどで無名校から進学した学生がいる。彼らのお金をかけない超効率的な勉強法を探る。

■参考書代の合計は、わずか2000円

「親が高額所得者じゃないと東京大学には入れない」という説は、果たして本当なのか。東京大学学生委員会の「学生生活実態調査報告書」を見ると、日本全体の平均世帯年収は約550万円なのに対し、東大生の家庭は6割超が950万円以上。しかし、満足な教育投資を受けられなくても、自力で合格という栄冠を手にした東大生もいる。

文学部4年生の布施川天馬さんは、大学に入るまで1度も家族旅行をしたことがなく、「父親の仕事が不安定で年収は300万円程度、一家3人が日々食べていくだけで精一杯でした」という。それでも中高一貫の私立共栄学園中学高等学校に進めたのは、成績優秀者は学費免除という特待生制度があったから。ただし、評定平均が基準を下回ると特待生の資格を喪失し、学費を納めなければならなくなる。それは布施川さんにとって退学宣告にほかならない。それゆえ両親からはいつも、「勉強はどうでもいいから特待生だけは死守してくれ」といわれていた。

そんな布施川さんが東大を意識したのは、高校3年の春だった。「進路相談で担任から『学業優秀で中高と生徒会長、吹奏楽部でも大活躍、これで東大に受かったらカッコいいじゃないか』と、わりと軽いノリで勧められ、それもそうだなとその気になりました」

しかし、そこから茨の道が始まる。なにせ実力が全然足りなかった。学年トップとはいえ、毎年何人も東大に送り込んでいる学校とはそもそもレベルが違うのだ。かといって予備校に通えるほどの経済的余裕はない。どうすればお金をかけず、短期間で東大に合格できる学力を身につけられるか、考えた末に布施川さんは、徹底した節約と効率化で受験を乗り切ることにした。

「出費を最小限に抑えるために、参考書は各教科一冊と決めました。それに、東大の入試は教科書の範囲からしか出ません。参考書は教科書の内容を頭に定着させるためのもので、そういう意味でも一冊をとことん使い倒すというのは、理にかなっていたのです」

では参考書はどうやって選んだのか。

「信頼できて、なおかつ自分に合っているというのが基準です。数学ならいわゆる『青チャート』と呼ばれるもの。何版も重ねて毎年一定数売れていて、信頼できました。網羅している量が多すぎるといって敬遠する人もいますが、僕の場合は東大合格に必要な数学の力が穴だらけだったので、それをふさぐためにもこの参考書を選びました」

おまけに布施川さんは参考書を中古で揃え、全科目合わせても2000円かからなかった。そして、勉強の効率化に関しても布施川さんの取り組みはユニークだった。

「効率を上げるには無駄を省くにかぎります。わからない問題を前に悩んでいる時間もその1つ。数学なら3分間考えて答えが出せなければ、すぐに解答と解説を見て頭に入れました。入試問題には絶対に答えがあり、そこにいかに早く正確にたどりつけるかを計るのが受験の本質だからです」

この勉強法で布施川さんは、1年の浪人を経て見事に東大に合格した。なお、浪人時代には予備校にも通ったが、その費用は週3日のアルバイトでまかない、足りない分は親が借金して工面してくれたというから泣ける。

■予備校通いよりも効率的な宅浪

もう1人取材に応じてくれたのが経済学部4年生の永見琉輝さんで、非進学校出身の東大生が同様の環境下で東大を目指す受験生を支援する「東京大学フロンティアランナーズ(UTFR)」というサークルに所属している。前出の布施川さんもメンバーの1人だ。

「小学2年生のときに両親が離婚してから、ずっと母親との二人暮らしです。家計に余裕はなく、習い事をした記憶もありません。高校は近所にある私立高校の特進コースに、学費免除の特待生で入りました」

このあたりの状況も布施川さんと似ている。入学早々卓球部に所属するも、運動はあまり得意ではなかったため熱が入らない。2年生の6月で退部し、そこから勉強に力を入れ始める。

「母親は私の自主性を重んじてくれていましたが、『大学に行くなら国立』といわれていたこともあり、最初は横浜国立大学を目標にしていました。ただし、他の生徒はみなAO(アドミッション・オフィス)や推薦で楽に大学に入ることを目指しており、休み時間にも教科書を開いて勉強していた自分は、クラスではかなり浮いた存在でした」

努力の成果はやがて成績に表れる。8月に受けた大手予備校の模試で平均偏差値60を突破。翌年1月のセンター試験同日模試では、東大合格者の同時期の点数とわずか90点差だった。この結果に自信をもった永見さんは、志望校を横国から東大に変更することを担任に報告する。ところが、担任からは予想外の言葉が返ってきた。

「『考え直しなさい』といわれました。東大に合格できるのは小さいころから勉強だけに集中できる恵まれた家庭の子女だけと、そのときの僕は思いました。でも、想定外のルートから東大に入るやり方だって絶対あるはず。だったら僕がそれを証明してやると、逆にヤル気が湧いてきました」

しかし、現役で合格とはいかず、「宅浪」で捲土重来を期すことになった。予備校に行かなかったのは経済的な理由だけではなく、「教室でライバル30人と足並みを揃えるよりも、自分のペースとやり方で勉強したほうが効率がいい、と思ったからです」という。

■お金をかけずに非進学校から東大に合格する秘訣

では、永見さんは宅浪時代、いったいどんな勉強をしていたのだろう。

「量もそうですが、それ以上に重視したのが勉強の質です。たとえば数学は、すぐに解法が浮かばないときは先に解答を見て、なぜこの定理が使われているか、解説の行間を読むことに時間をかけました。そこさえ理解できれば後の計算は省いていいし、解法は他の問題にも転用できるので、数をこなすより短期間で力が伸びるのです」

1人だと1年間モチベーションを維持するのが大変な気もするが、この点も永見さんは対策を立てていた。

「浪人中は一日を有意義に過ごそうと、勉強以外の食事、運動、睡眠などにも気を配り、体と精神の状態を常に安定させました。模擬試験の点数が悪くて落ち込むようなこともない。予備校の先生が作った問題が東大の過去問より質が高いはずがなく、過去問さえ解ければいいと割り切ったのです」

しかし、毎日家にいて光熱費を使うことだけは心苦しく感じていた。それで夏場はなるべく図書館で勉強するなど、節電節水を心がけていたそうだ。

こうして翌春見事に東大合格を果たした永見さんに、お金をかけずに非進学校から東大に合格する秘訣を尋ねると、「自分には何が足りないか、なぜ間違ったのかを突き詰めて問い、その対策を自分で考えられる人なら、可能性は大いにあると思います」との答えが返ってきた。この言葉に勇気づけられる受験生は少なくないはずだ。

わが家の教育方針と独自の勉強法

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山口 雅之(やまぐち・まさゆき)
フリーライター
ビジネス誌、経済誌を中心に活動。単行本の執筆、映像台本も手掛ける。テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞優秀賞。著書に『一流の人の考え方』(日本実業出版社)、『塀の中から見た人生』(カナリア書房)。

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(フリーライター 山口 雅之 撮影=石橋素幸 写真=PIXTA)

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