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裸の王様・安倍晋三の"電撃辞任"で「公明・山口那津男総理」が急浮上だ

プレジデントオンライン / 2020年6月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■毎度国民、記者の失笑を誘う総理会見

新型コロナウイルス対応に国民の厳しい視線が向けられる安倍晋三政権は、内閣支持率が急降下し、もはや政権末期の様相を見せている。政界の関心はすでに「ポスト安倍」に移り、公然と政権批判する声も自民党内から出るようになった。こうした中、存在感を高めているのが公明党だ。政権への従順ぶりから「下駄の雪」と揶揄された同党だが、今や「政権のブレーキ役」だけではなく、コロナ危機で国民目線に立った「アクセル役」も担っている。安倍総理が民の信頼を失う中、自民党を救う「救世主」として公明党の山口那津男代表を暫定総理に推す声も聞こえてくる。

「わずか1カ月半で今回の流行をほぼ収束させることができた。まさに、日本モデルの力を示したと思う」。安倍総理の常識離れした「手前味噌」はかねて知られているが、緊急事態宣言の全面解除を表明した5月25日の記者会見で語った言葉の数々には、国会担当の記者たちからも冷笑が漏れた。だが、そんなことはどこ吹く風よと「我が国では、人口あたりの感染者数や死亡者数をG7の中でも圧倒的に少なく抑え込むことができている。私たちの取り組みは確実に成果をあげており、世界の期待と注目を集めている」と悦に入る姿は、まさに「裸の王様」状態そのものだ。

■一国の宰相に苦言を呈すのは自粛したいが、現実は厳しい

一国の宰相に苦言を呈すのは極力自粛したいところだが、現実は厳しい。朝日新聞が5月23、24日に実施した世論調査で内閣支持率は29%に低下し、不支持率は52%に上った。この傾向は、毎日新聞と社会調査研究センターによる23日の調査でもあらわれている。前回調査(5月6日実施)から13ポイントも急落した内閣支持率は27%で、不支持率は19ポイント増の64%に達している。

安倍総理は「一喜一憂しない」との姿勢を見せるが、自民党内は動揺が隠せない。その理由は、朝日新聞の調査で自民党の政党支持率が前回調査(5月16、17日)から4ポイント低下。毎日新聞などの調査でも前回から5ポイント減の25%に落ち込んだことがある。かつて「参院のドン」と呼ばれた自民党の青木幹雄元参院議員会長は、内閣支持率と政党支持率の合計が50を下回ると政権が倒れるとの「青木の法則」を残している。それに基づけば朝日で「55」、毎日新聞などで「52」となり、すでに危険水域に入っているのは間違いない。

■「安倍おろし」をするだけの余裕が自民党にないのが実情

現在の衆議院議員の任期は来年10月までで、安倍総理は自身の自民党総裁任期満了が約1年4カ月後に迫る中、レームダック化を避けるための解散総選挙を模索する。だが、ここまで政権や自民党の支持率が低下した今、「竹槍で戦はできない」(自民党中堅議員)と安倍総理・総裁の下での総選挙に難色を示す声は徐々に高まりつつある。コロナ危機到来で、さすがに目立った動きは見られないものの、石破茂元幹事長が「けじめがついたら職を辞すのも1つのあり方だ」と辞任を求めたのは、そうした議員心理を反映したものだろう。

とはいえ、現下の状況では「安倍おろし」を画策し、自民党総裁選を実施するだけの余裕がないのが実情でもある。そこで与党内の一部から囁かれ始めたのが、公明党の山口代表を「暫定総理」に据えるウルトラCだ。コロナ収束が見えた段階で安倍総理に辞任を促し、自民党の支持率が回復するまでの間は「暫定内閣」として山口氏に総理の座を委ねるというプランである。

■公明党の存在感は高まりを見せる

実際、コロナ危機下に公明党の存在感は高まりを見せている。「ポスト安倍」候補の1人とされる自民党の岸田文雄政調会長がまとめた「減収世帯への30万円給付」案は、山口代表が連立離脱もちらつかせて安倍総理に修正を迫り、土壇場で「1人あたり10万円給付」に変更。朝日新聞社員や産経新聞記者との賭けマージャンで辞職した黒川弘務前東京高検検事長の処遇についても、公明党の石田祝稔政調会長が「事実であれば職務を続けられる話ではない」といち早く辞任を要求し、その通りの流れになった。困窮する国民の感覚や厳しい世論に敏感な公明党は連立政権に欠かせないと見る自民党議員は多い。

ある全国紙政治部デスクが解説する。「自民党の多くは選挙で今や公明党の支援なくして勝てない。自分たちの任期満了が近づく中で、もし公明党に連立を離脱されたらバッジを失うと青ざめた人たちは少なくない。しばらくは公明ペースで政治は進むだろう」。

連立政権とはいえ、国土交通大臣など一部のポストしか譲ってこなかった自民党だが、政権与党の座を獲得するためならば何でもするのが同党のすごさでもある。自民党は1994年6月からイデオロギーで対立関係にあった社会党とも連立政権を組んだが、それは前年の衆院選で過半数割れを招き、その座を確保するための策だったことは記憶に新しい。

■黒川氏を巡り燃え上がった火は消えそうにない

悲壮感が漂う自民党内の雰囲気は安倍総理も把握してはいるものの、悩ましいのはコロナ危機下では得意の外交力を生かすことはできない上、「すべての矢が総理官邸に向かってくる」(政府関係者)ということだ。中でも、1月に閣議決定までして定年延長を認めた黒川氏をめぐる政府対応への批判は強く、検察庁法改正案の今国会成立見送り後も「なぜ懲戒処分にならないのか」「立件されないのはおかしい」といった厳しい声は続く。

内閣支持率について、フジテレビ上席解説委員の平井文夫氏は5月25日のフジテレビ系「バイキング」で、「数字はかなりヒステリックに出ているが、いずれ戻ってくる」と解説している。だが、訓告処分となった黒川氏の処分をめぐり総理官邸が「懲戒」にはしないと、法務省の判断を覆していた疑惑を共同通信が報道。菅義偉官房長官は記者会見で「法務省から任命権者である内閣に報告があり、法務省の決定に異論がないと回答した」と否定したものの、燃え上がった火はなかなか消えそうにない。

■トランプに比べて余裕のない安倍晋三

「本日、ここから国民とともに力強い一歩を踏み出す。目指すは新たな日常をつくり上げることだ。ここから先は発想を変えていきましょう」。安倍総理は5月25日の記者会見で、自らが置かれている状況を一変させたいと願うかのように力を込めた。新型コロナウイルス対応で人気急上昇中の大阪府の吉村洋文知事が、休業要請する際の独自基準「大阪モデル」を突然変更したことを受けて、ノーベル賞受賞者の山中伸弥氏が「科学でこれをすると信頼性が揺らぎます。大阪府の対策が、科学から政治に移ったことを意味します」と批判したタイミングとの重なりをいぶかる声もある。

新型コロナウイルス感染者が164万人を超え、死者が10万人近い米国のトランプ大統領が就任以来最高水準の支持率を得て、ゴルフを楽しむ姿を見せるのとは対照的に、今の安倍総理に余裕はない。

■信頼を失った政権がこの国難を克服していくのは容易ではない

安倍総理は野党時代の12年11月14日の党首討論で、「近いうちに国民の信を問う」と約束していた当時の野田佳彦総理にこう迫ったことがある。「あの約束の日は夏の暑い日だった。夏が去り、そして秋が来て、秋も去った。もうクリスマスセールが始まろうとしている。約束の期限は大幅に過ぎている」。新型コロナウイルスへの対応が後手に回る安倍総理に対しては、東日本大震災への対応を自民党が酷評してきた民主党政権の菅直人総理と「同じレベルだ」との声も飛ぶ。失礼ながら、安倍総理に1つ言わせていただきたい。コロナ危機が到来したのは寒い冬の日だった。冬が去り、そして春が来て、春も去った。

もうサマーセールが始まろうとしている。信頼を失った政権がこの国難を克服していくのは容易ではないように映る。

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麹町 文子(こうじまち・あやこ)
政経ジャーナリスト
1987年岩手県生まれ。早稲田大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーランスとして独立。プレジデントオンライン(プレジデント社)、現代ビジネス(講談社)などに寄稿。婚活中。

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(政経ジャーナリスト 麹町 文子)

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